見出し画像

濃くっちゃいけないですか?

 ナミ恵は、エチオピア人と日本人のミックスである。眩く輝ける珈琲肌の彼女は、どこに行っても「何人?どこから来たの?」と聞かれる。
 普段は「日本人でーす!」
「えーほんとにー!?」
「国籍は日本しか持ってない、ハーフです。」
「やっぱりハーフじゃーん」
(ハーフだったら日本人じゃないのかな?)
「どことどこのハーフ?」
「日本とエチオピアです」
「お父さんお母さんどっちがどっちなの?」
「父がエチオピアで、母が日本です♪」
までがワンセットだ。
その後に
「あらーエチオピアいいわねぇ。私エチオピアのコーヒーが大好きなの。」
と続くこともあれば
「僕はねー昔エチオピアに行ってたんだよ〜」
と昔の話を語ってくれることもある。
相手に対して自分やエチオピアの事を教える機会になったり、逆に自分の知らない、相手やエチオピアの事を知れたりするので、もはやちょっとした国際(日本人同士なので「国際」でもないが)理解の機会として楽しんでいる。基本的にナミ恵はあまり同級生と友達になれずに寂しい少女期を過ごしてきたので、大人になった今、こうして周りの人が興味をもってくれるのは、非常に嬉しいのだ。

 しかし、ある日突然ナミ恵に変化球が投げられた。いつもどおりのワンセットが終わると、話していた相手のおばあさんは、こう言ったのだ。
「あらーよかったわねぇ。エチオピアってアフリカでしょ?アフリカなんて言ったら、もっともっと肌の色が濃く生まれた混血の子だっているのに、あなたは薄めの色で良かったわねぇ」
ナミ恵は
「あーそうですかねぇ」
としか答えられなかった。
 いろいろな考えがナミ恵の脳内で渦巻いた。
 え、今このおばあさんほんとに混血って言った?
やっぱりこういう時はなんか言った方がいいのかな?でもこんなご高齢の方に失礼のないように注意するってどうしたらいいの!?
私がなんか言って気まずい感じになるのも嫌だな。しかもこの方これからお仕事で絡むから気まずくなるのは更に困る。
注意しないで「肌の色が濃いのはいけない事ですか?」とかそういう質問系にした方がいいのかな?
そもそもこの方別に私を傷つけようとして言ってないしむしろ褒めるつもりで言ってるのにそれを台無しにするのもどうよ?
っていうかエチオピアがアフリカにあるって知ってるだけでも凄くない?
でも今ここで私が何か言わなかったら、将来このおばあさんに会う他のミックスの子が悲しい思いをしてしまうことになるんじゃないかな?などなど
 思考回路はショート寸前、とはまさにこの事だ。

 ナミ恵は帰宅後も考えつづけた。
あの時、どう反応すれば良かったのだろう?
どう言えば良かったのだろう?

答えは未だに出ていない。

私は、文章を書く時、だいたい自分の経験から書きます。したがって、いただいたサポートは、今後も様々な経験をしにいくことに使わせていただきます。