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秋の公園とガラケーと。あの人は今。


昔、ちょっと、いや、だいぶ個性的な方とお付き合いをしていた。

当時はまだ将来のことなんて考えていなくて、今が楽しければいいや、というスタンスだったと思う。

少し年上の彼は、何かとうんちくを語るのが好きだった。

音楽や映画、洋服や自転車、スポーツなどのことを色々と詳しく教えてくれた。

ヴェルヴェット・アンダーグラウンドと『バグダッド・カフェ』をこよなく愛する人だった。

「日曜日の朝」をリピートしてました。


退屈なのに不思議な魅力のある映画ですね。


新鮮だった。

世界が広がるようで、本当に楽しかった。

でも、そういう日々は過ぎ去り。


将来のことが心配になった私は、彼とお別れすることを決めた。

なんでも決断したら曲げない性格の私。

一応きちんとお伝えしたはずだったが、納得しなかったようで。

ある秋の日、バイト先近くの公園に呼び出された。



彼「別れたくない。」

私「いや、もう終わった。別れる。」

立ったまま、そんなやりとりを繰り返し、私の決意が揺るがないことを分かってもらえたかも、そんな時だった。

彼が突然、自分の携帯電話を取り出した。

ん?

時は2000年代初期。
まだパカパカのガラケー時代だ。


そのガラケーを開いて両手で持ち、閉じるのとは反対側に思いっ切りへし折ったのだ!


バキバキっと音を立ててガラケーは接続部分が外れ、壊れた。

ひえーっ!

コードみたいなのがむき出しになったようにも見えた。

多分、もう使えない。


その一部始終をポカンと眺める私。
スローモーションで見ているようだった。

そして彼は、見るも無惨な姿のガラケーを地面に叩きつけ、こう言い放ったのだ。


「お前からかかってこない携帯なんて、
 もういらないっ!!」


その瞬間、私は気が動転したのか、くるっと後ろを振り返り、走って逃げた。


一度も振り返らずに、見えなくなるところまでひたすら逃げた。

多分怖かったのだ。

携帯が、携帯が、あんなことになるなんて!

そして、全然意味がわからなかった。

ただ、愛されてたんだな、というのは伝わった。

でもごめん。私はもう戻れない。



案の定、しばらく彼は音信不通となった。




秋の公園。
今でもその光景を思い出す。
思い出すから忘れられない。


ちなみに、その後また連絡が取れるようになり(新しい携帯買ったんでしょうね)、もう一度ちゃんと話し合って、お別れしました(と思います。そこの記憶は曖昧)。


あの人は今、お元気だろうか。

幸せに暮らしていることを祈ります。



私の昔話に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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