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読書ログ『熔ける -大王製紙前会長 井川意高の懺悔録-』


今から12年前の2011年。
大王製紙の前会長、井川意高さんがギャンブル依存症により私財を溶かしたことが各メディアで広く報道されました。
108億円もの会社資金をギャンブルのために不正に使い込んだというセンセーショナルな内容と、大王製紙という企業規模の大きさ。この衝撃的なニュースは記憶に残っている方も多いと思います。
本書『熔ける』は彼自身がその経緯を赤裸々に綴ったものです。
私がこの本を手に取ったのは、なぜこれほど社会的影響力を持って順風満帆に見える人物がギャンブルに溺れ、最終的に多くを失ってしまったのかが単純に疑問だったから。
また、カジノというよくわからないディープな世界にちょっと興味がわいたからです。

当時ニュースを聞いて私は以下のように思いました。
「大企業のボンボンでお金に苦労せずに育ったからこんな事件を起こしちゃったのかな~」
恐らく同じような感想を抱いた方は、そこそこ多いのではないかと思います。
しかし書籍を読むと、井川氏の人物像は我々が想像していたものとは全く違うことがわかります。
ニュースや報道で傲慢な印象を与えがちな井川氏ですが、本書を通して見えてくる彼は極めて真面目努力家であり、仕事に対する誠実さも際立っていました。
特に社長就任以前のへの向き合い方やビジネス戦略の立て方は、純粋にビジネスの心構えとして取り入れたい内容が多くありました。
周囲からの信頼も厚く、新商品の発売も大成功に導き(大王製紙から発売されている紙おむつ:GOO.Nは井川さんが手がけた商品だそうです。びっくり!)、仕事にも熱意を持って取り組む。
当初抱いていた印象とのますますのギャップに猶更興味を惹かれました。

井川さんのインタビューはこちらのYoutubeもチェックしてみて下さい。
臨場感がありますし、聞いているだけで頭の良さが伝わってきます。

ちなみにここまで井川さんの真面目な面をピックアップして書きましたが、交友関係はとても派手だったようです。
芸能界の方とも広く交友されていたことが、実名を踏まえて書籍の中に多く書かれていました。
ここまで書いていいの?と思った内容もあったほどです。



上記のように井川さんの人物像も事細かに記載されていましたが、マカオやシンガポールのカジノについても詳細に書かれていました。
そもそも自分の持っているお金の範囲でギャンブルを行えばこんなことにならなくないか?と素人の私は思ったのですが、多額の金を落とす上客はその場で借金が出来る仕組みも整っていたようです。
カジノ側の緻密なシステム、客を沼に引き込む構造も解説されており、知りたいと思っていたカジノという世界も知ることが出来ました。この辺りはめちゃくちゃ面白い!!のでぜひ読んでいただきたいです。

読み終えた感想として、万人に対する「絶対に大丈夫」なんてないんだなと強く認識しました。
特に井川さんは周囲からの信頼も厚く、実績も十分にあったはずです。しかしどんなに優秀な人間でも、ギャンブルの魔力には勝てない。
誰しもギャンブル等の依存症に陥る可能性は無視できないものです。
人間の弱さと強さ、依存症の恐怖。
これらを知ることは、経験豊富な社会人だけでなく、ギャンブルのリスクについてまだ理解していない人々にとっても価値があるのではないかと感じました。

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