朝起きて、メダカの水槽の近くへと行くと、メダカ達は水面へと上がってきて必死に泳いだ。メダカのくせに、水槽で溺れるのかと思うほどのはしゃぎっぷりだ。
『お腹空いた！ 餌をください！ 』
　とアピールしてくる。
　いつもそうだ。彼らは近くに人間の姿を確認すると、餌くれアピールをしてくるカワイイ子達だ。
　今日も小さな命は元気だなと、餌をパラパラと水面へと落とす。メダカ達は嬉しそうにそれを食べた。
　
　昨夜は19時に寝るという偉業を成し遂げた。
　最近夢見が悪く、朝スッキリと起きられない日々が続いていた。
　最近私の夢には知らない人が登場する。3ヶ月前ほどから、知らない人間は1人2人と増えていき、全てが知らない人で作られた夢になった。私だと思って夢の中で過ごしていた私は、私ではなかった。手を繋いでいる、娘だと思っていた女の子も、私の娘ではなかったというオチで目覚めてからというもの、夢を見るのが怖くなった。
　そんな悪夢を見る私は、きっと疲れているに違いない。充電しても50％までが限界で、その力で何とか生きていたように思う。
　たっぷりと良い睡眠を取り、見る夢は素敵な夢を見なければと思った。
　
　私の理想としては、50過ぎたおじさんになったピーターパンと、手を繋いで夜空を飛び回るという夢が見たい。
　
『キミ、ずいぶんとおばさんになったじゃないか！』
　
　ワハハとおじさんピーターパンは笑う。
　
『貴方こそ、ピーターパンのくせに随分とおじさんじゃない！ 私の方が10は若いんだから！』
　
　私はハンムラビ法典に従い、おじさん攻撃をピーターパンに浴びせる。
　心が子供のままの逆コナンの私たちは、お互いに愛のある罵り合いをしながら、気持ちよく夜空を飛び回るのだ。
　そんな夢が観たいと思いながら、昨夜は19時に床についた。
　

　ぐっすりと眠れたので、今朝はシャキーンと起きられた。
　おじさんピーターパンの夢は、観られたのかどうかは覚えていないが、忘れているだけで観られたのだろうと勝手に思い込む。
　
　息子のお弁当作りと朝食作りは、いつも「クソだるい」とため息をつきながらやっていたが、今日は違った。鼻歌まじりに上機嫌な私がいる。これは本当に私なのか！？ と疑うほどに調子がいい。
　金曜の朝なんて、泥にまみれたように上手く動けないはずなのに、不思議すぎる。
　とにかくシャキーンの朝に感動した。
　
　忙しい中娘が、
　
「幼稚園と保育園の違いは何？」
　
　と、それ今聞くこと？ と思う謎の質問にも、私の知識の中で知る限りを笑顔で説明ができた。
　息子が、
　
「やべぇ！ 検尿撮るの忘れた！」
　
　と、去年の今頃と同じ事を叫んで慌てていた。また今年も検尿の前に用を足してしまったらしい。
　毎年起きる同じハプニングにもイラつかず、
　
「アホだね。コーヒーでも飲んだら？」
　
　と、余裕の笑みを浮かべて言ってあげられた。
　
　今日の私は調子が良い。
　本当に今日は金曜の朝なのかと思うほどに、身体と心が別人のようだ。
　朝食を食べながら、水槽のメダカを遠目で見ると、小さな命達は元気いっぱいに泳いでいた。