襟瀬かな

日常。

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最近の記事

しらす召喚

娘が、「鼻をフン! とやったらこんなん出てきた!」 と言って見せてきた。 鼻から出たにしては大きすぎる物体だった。 軟骨のような細い塊がティシュの中にあり、私はひどく驚いた。 スッキリしたと言う娘の顔は清々しい。 しかし私は、こんな大きな塊が鼻から出てくる非現実っぷりに心の臓が高鳴った。 私はオエオエ言いながらそれを観察してみた。 訳の分からない物体は鼻クソだろうと決めつけてゴミ箱に捨て去るだけなら簡単だ。 しかし私の心が納得しなかった。 これは別パラレルから転送された

    • アサリさん

      スーパーでアサリを買い、砂抜きをしていて困ってしまった。 塩分濃度は3パーセント。 バットにアサリを入れ、ひたひたの塩水を入れる。しばらくすると貝からは本体がにょきにょきと飛び出してきた。 カタツムリに似ている。 いくつかの個体が目を出すかのようににょきにょきと飛び出してきて、一番活きのいい個体がピュっと塩水を吐き出してきた。 同じアサリでも個体によっては貝の柄も大きさも色も違う。個性があるんだと思った。 冷凍物のあさりの貝は全て色も柄も区別できないほどに揃っていたの

      • カラスの友達リスト

        最近カラスを近くで見る機会が多い。 毎朝職場の秘密基地のベンチに腰掛け、スマホを触りながら、就業10分前まで時間を潰す。 それから厨房の外壁とフェンスの間の細い道を歩いて職員玄関へと向かうのだ。 その時、大抵カラスが通り道に止まっている。 毎朝カラスは私の姿を確認すると、とても親切にフェンスへと退いて私に道を譲ってくれるのだ。 今日はそんなカラスが二羽もいて、私は嬉しいような怖いような、そんな気分で彼らの前をゆっくりと歩いた。今日こそはじっくりと彼らを見てやろうと決心し

        • 食べ頃のアイスクリーム

          冷凍庫の中に私のアイスがあるはずだった。 一箱6個入りで、一人2個の分け前で食べられるカップ形のチョコチップ入りバニラアイスだ。しかし、探せど私のアイスは見つからない。 「誰か私のアイス食べた?」 子供たちに問うと、娘は首を横に振り、息子はパソコンを触る手を止めた。 「オレが食べた。ゴメン」 私はその言葉に驚かずにはいられなかった。 私の分け前は二つも残っていたはずなのだ。確かに長い間食べるタイミングを逃しここまで来たけれど、まさに今が食べようというその時だったの

        しらす召喚

          南天の実と鳥のいない空

          最近鳥の姿を見かけなくなったと同僚が言った。 南天の実を食べる鳥がいないから、今年は珍しく実が残っている……と。 意識を向ければ確かにそうだと気がついた。 いつでもそこに居るはずの、ふてぶてしくゴミ袋を漁るカラスすら見かけない。それに、南天の実の赤色がやけに印象に残った。 気にし始めたら鳥のいない空が寂しく思えた。 かくれんぼの鬼をいつまでも続けさせられているような不安が付き纏う。それが何日か続くと、いよいよ私は別パラレルに飛ばされてしまったのかもしれないと、厨二病的思考

          南天の実と鳥のいない空

          髪型一つで世界が変わる

          例えばコケシ物語とかいうアニメがあったとして、それを実写化されたなら、私は脇役で出演できるほどにコケシなのかもしれない……。と、自分を疑った。 『んふんふ』とでも呟けば、なめこでも行けそうだ。 そう思い始めたら、私は自分の髪型に疑問を抱かずにはいられなくなってしまった。 製作者の美容師さんが悪いのでは無い。 このボブヘアーはとても手入れが楽で忙しい朝は大変感謝している。 けれども私の毛量が多すぎて、実力以上に頭がデカくなり濡れ衣を着させられた気分になるのだ。さらに洗い流

          髪型一つで世界が変わる

          寝具に歓迎されない日

          木曜日が好きじゃない。 土日が休日の私は、木曜には既に一週間分の疲れが蓄積し、明日は休みだと錯覚するほどだ。けれども明日は金曜日で出勤せねばならない。 その現実を突き付けられる木曜日がとても嫌いだ。 朝から『今日は9時に寝る!』を目標にし、晩酌もそこそこに床へと入った。 目標達成の9時だった。 ところが、いつも快適に寝られているはずの寝具が硬く感じた。木の上に寝てるのかというほどに身体が痛い。枕までもが誰かがすり替えたのかと疑うほどに高さがしっくりと来なかった。 おかし

          寝具に歓迎されない日

          美しい夕日を見た時

          最近外出する際、「行くぜよ!」と言ってしまう。 何かをし始める時は、「やるぜよ!」だ。 豆腐を買えば、「揚げ出し豆腐を作るぜよ!」となる。 とにかく「ぜよ!」を言いたくてたまらなくなってしまった。 なぜ故にそうなったのか。 ドラマの「JIN-仁- 」の影響だ。 私は最近、ドラマ鑑賞にハマっている。 テレビ番組は観ないしアンテナ線も繋いではいないが、「テレビ」という電化製品は、テザリングで映像を映し出すスクリーンとして置いてあるのだ。 今年はマッコト沢山のドラマを観た。

          美しい夕日を見た時

          直樹さん宅は素晴らしい

          今更になって私、半沢直樹を観ている。 いつか観ようとは思っていたが、視聴に至るまでに随分と時が流れてしまった。 なぜ今更なのか。 それはリアルタイムで放送されていた頃、世間の皆が面白いと騒げば騒ぐほど流行りになんて乗るものかといった天邪鬼な私が邪魔をしたからだ。それに、直樹さんは小難しい人という偏見もあった。とても私とは住む世界が違いすぎる……。 例えば、竪穴式住居に住む私が高級住宅街のお宅に訪問するほどに敷居が高すぎて、友人からのオススメも聞き流し、観ることなくここまで

          直樹さん宅は素晴らしい

          来年のカレンダー

          今年はもう残すとこあと二日。 この前職場のユニットの出入口にうさぎの置物を飾ってから半年ほどの体感なのに、早くもうさぎは時代遅れの置物となってしまうようだ。 すぐそこに辰が待機してるよな。と思って、慌ててうさぎを撤去し、龍の飾りを展示しておいた。 速い。その速さは年を越す毎に加速しているように思える。例えばマラソン大会でグラウンドを走る私は先頭を走っていると思いきや、実際は一週遅れで走っていたような違和感だ。 YouTubeの動画再生を1.5倍速にするみたいなスイッチを誰か

          来年のカレンダー

          今年のクリスマス

          クリスマスにケーキを作る行為。 特に誰にも求められてはいないし、作るの面倒だなって思う。だけど買うより作る方が断然安いし、作り始めてしまえば出来上がりまでの道のりはテンション上がってくる。子供達も自然と手伝いに来て、レシピとにらめっこしながら完成した時の、あの写真撮影の時間……。 面倒くさがりの私でも、作ってよかったって思えた。 達成感がすごくて、今ある私の実力以上のケーキの出来栄えにほくそ笑んでいたのは、去年までのこと……。 今年は心底ケーキを作るのが面倒に思えた。 だ

          今年のクリスマス

          癒された場所

          職場の屋外北側にある木製ベンチは、私の癒しの場所だった。大抵私は貸切でそのベンチに座り、虫や鳥や猿に癒されながら心のデトックスをしていた。 緑豊かなマイナスイオンで満ち溢れた癒しの場所は、職場での秘密基地だと思って長い年月を過ごしてきたが、私は今更とある事実と向き合うこととなった。 木製ベンチの頭上2メートル辺りにある排気口、あれはどこの空気を排出しているのだろう……? 何となく気にはなっていたけれど、ここは私のとっておきの場所だからと考えるのを放棄していたのだ。 私はこ

          癒された場所

          あなたはイケメン

          スーツ姿の息子がこの世の終わりと言わんばかりの絶望的な表情でやってきた。 私は車内からそれを見守って、ああ、失敗したのか……。と、鞄の中から財布を取り出した。 「なんなんだよあの機械! オレっていつもこんな腑抜けた顔してるって言うの!?」 助手席に乗り込んだ途端、息子は納得できない心情を吐き出し、悔しそうに顔を歪めた。 あの機械とは、証明写真を撮影する機械のことだ。 今日中に証明写真とそのデータが欲しいと、最寄りの書店にある証明写真の暖簾をくぐった息子は、数分後には絶望的

          あなたはイケメン

          私を褒めるために書く日記

          今朝の私が作ってくれた弁当が、とても美味しく感じられた。いつもならこの量で満足するはずが、なんだか物足りない。なんならもう一つ弁当を食べられそうな勢いだ。 甘いものはさほど好きではないけれど、自宅の冷蔵庫の中にあった饅頭をデザートに持ってこればよかったと、残念に思った。 午前は理由あっていつも以上の働きをした。 例えば通勤時の道路にて、警備員さんが赤と白の二つの旗を同時に扱い、上りの車と下りの車の通行指示を出しているのを見かけることがある。 私はその警備員さんが、赤旗と白

          私を褒めるために書く日記

          もうすぐ雪が降るかもしれない

          「今日の予定は?」 朝起きてきた娘に聞いてみる。 学校へ行くのか休むのか、それは確かめなくても起きてきた娘の表情をみれば9割以上の確率で当たるが、とりあえず「おはよう」の後に聞いてみる。 「……休む」 「わかった。じゃあ悪いけど、洗濯干しと掃除機お願いできる?」 「うん」 「助かるわ~。ついでに食洗機の片付けもお願いできる?」 「わかった」 「助かるわ~」 この流れは毎朝のテンプレートだった。 私は学校のアプリを立ち上げ、「欠席」を選択し送信しておく。 そん

          もうすぐ雪が降るかもしれない

          それはゴミなのか宝なのか

          ゴミ屋敷の片付け。 まさかそんな体験ができるとは思ってもいなかった。 なぜ私がプライベートの休日を割いてゴミ屋敷清掃の手伝いをしなければならなかったのか、それは話が長くなるので省略させていただく。言えることは、そんな経験をするべき事象が起きたからだ。 その家は、ただ散らかっているという表現だけでは物足りない有様だった。 翌日にはレンタルの介護ベットが運ばれるので、早急にそれを置くスペースを作らねばならない。 もしもゴミ屋敷の検定があるのなら、2級ぐらいには余裕で合格しそう

          それはゴミなのか宝なのか