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技術書を印刷して、技術書典で頒布するときに部数を考慮するロジックのすべて(2019年9月20日バージョン)

はてブのカテゴリーエラーは相変わらずのようなので、これが「生活」なのか「ゲーム・アニメ」なのか、それともちゃんと「テクノロジ」に分類されるのか、わたし気になります!

注意: この記事は技術同人誌という超特異点についての記事なので、間違っても、アニメ・ゲームジャンルのサークルさん、参考にしないでください!極めて高い確率で死ぬ可能性が予見されます。

さて、技術書オンリーイベントの代表格、技術書典に参加するときに考えるべきロジックを、技術書典1から継続参加してるノウハウとして記事にします。

※その日の天気、内容、告知、配置場所、時の運などによって左右されてしまう傾向があります。技術書典7(2019/09/22)は、台風が西日本あたりに来ていて、天気が荒れている可能性があります。

考えるべき事

技術書典の13時まではゴールデンタイムです。特にサークルチェック数が多いサークルさんはその傾向が強めです。というのは、技術書典では13時までに完売する、遅くても14時までに、みたいなパターンがかなり多いので、本当に買いたい本はみんなそれくらいまでの時間に行かないと売り切れるからです。

本当に売れる本が100部程度しか刷られておらず午前完売みたいな伝説ができあがり過ぎて、よりいっそう13時・午前の競争率が高まってしまっています。(ある意味悪循環?)

技術書典はいくつもの意味で特殊な環境です。

・ 技術というジャンルに限定しているので、コミケなど汎用イベントの情報・評論島などとは違い、スタートダッシュが大きい
・ 技術書典は、サークルあたりの来場者数(ここではサークル係数と呼ぶ)が圧倒的に高い。600サークルに10000〜15000人くらいが来るので、コミケのようなサークル係数1〜2程度のイベントとは違い、コンスタントに20倍前後のサークル係数を持っている
・ サークル数が圧倒的に多い割に、公式サイトのカタログが使いづらく、よほど強い意志でもない限り全部をチェックなんてできやしないため、事前告知と、ブース設営の2つが売れ行きに大きく影響する
・ サークルによっては当日売り上げよりも、Pixiv Boothの電子版の方が遙かに売れる(当日200部で、後日電子版1000以上頒布みたいな話も多い)
・ そもそも、技術に飢えて、技術の為なら金に糸目を付けない人たちが来るので、普通の薄い本とは、値段に対する意識が全く異なる。普通のうすい本と違って「絶対にそこにしか無いもの」が極めて多い。

など、挙げればキリがありません。

そこで、値段付けと部数判断はとても重要になります。

値段付け

技術書典の本は大半が1000円です。一部のサークルでは500円や1500円の本も頒布していますが、大半は1000円です。コミケなどと違い、小刻みに値段設定するくらいなら1000円冊の枚数で値段設定する方が、サークル主にも、一般来場者にも、どっちにも利便性がとても高いです。

昔は1Pあたり10円みたいな計算方法がありましたが、気にする必要はありません。技術書では分厚さは正義ですが、60P位で1000円でも、それが本当に読みたい本であれば、みんな普通に買っていきます。

※コミケの常識を捨てよ。1000円というのは技術書典での基本トークンです。

そもそもコミケと違い、初参加、200冊を2時間完売なんて話も普通にありうる世界です。(もちろん良い本を、上手に告知して、前日までの準備万端で、当日の説明など全部うまくいけばです)

技術者がよく使う技術や言葉について、うまく掘り下げた本が500部売れるみたいな話も度々発生しています。

そもそも、まっとうな技術書って、入門で最低価格2000円、普通のテクニカルな突っ込んだ本なら3000円以上が当たり前の世界で、1000円で突っ込んだエッジな本ならお得じゃないですか!

※値段の力学違うので、もちろん値段付けの方法は全く異なります

1000円は確実にボリュームゾーンですが、完成度やコストによっては2000円みたいな値付けでも普通に売れます。その場合は、やはり見せ方次第です。

部数判断の基本

これは本当にどのサークル主も頭を悩ますものです。一応、ここ最近の技術書典では平均値が100部です。ただし、完売時間は早めになるという傾向です。

コミケなどのイベントで200部以上を刷るのはかなりのDive Into Kiyomizu!です。技術書典では度々言われてるような500部とか1000部刷るってコミケだと「頭おかしい?」と言われるレベルです。

コスト面だけでいうと、部数は200部〜300部くらいを印刷するのがコスパが良いと考えられます。例えば、100P程度の薄い本は早割をうまく使えば、200部刷っても5万円程度の印刷費です。1000円の値段付けが当たり前なので、50部出れば印刷費はペイできます。もちろんサークル参加費や他必要が諸々かかってきますが、1/4売ればペイできると考えると気が楽になりませんか?

※内容に問題がある、アピールが弱すぎるなどの理由で爆死する本・サークルの場合はもちろん、その限りではありません。

サークルチェック数が現時点で100超えているサークルさん(残念ながら技術書典ではサークル単位のチェック機能しか無いため、品目が多いサークルさんは気をつけなければいけません)が、50部だったとしたら、サークルチェックしてくれた人が、全員暗殺でもされなければ、それなりの早い時間帯で既にペイ完了でしょう。

さて、部数が多いともちろんその分、見誤って余る可能性は残ります。

・ 印刷費が掛かりすぎてる場合は、費用面で足が出る
・ 余った本を、とらのあな、などに入庫する(手続きが必要になる)
・ 自宅かどこかで、在庫を保管する

印刷費が掛かりすぎるは、どうしようもないので、さすがにその見極めはしましょう。出来れば最悪でも半分出れば印刷費トントン位に設定しておくと良いと思います。

さて、余った本をどうするか?ですが、

・ とらのあなさんは、最近技術書に力を入れていることと、会場からのダイレクト入庫サービスがあるので、余った部数が50部未満ならそのまま預けてもいいでしょう
・次の技術書典や技書博、あるいはコミケに申し込めば「既刊本」として持ち込めます。ここでとても朗報です。技術書典6から「新刊本だけのイベント」では無くなりました。既刊本へのニーズもとても高いイベントに変化しました。

じつはこの既刊本が出るイベントに変わったことは、大きな変化です。元々、同人誌即売会は「新刊を買う」傾向が強いのですが、技術書典は「今まで行きたかったけど行けなかった人」も多く来るイベントであり、既刊本は、これまでの同人誌即売会で見られないほど、既刊本にもニーズがあります。

※もちろん、扱ってる本の鮮度や、そのときどきのニーズに左右される点にはご注意ください

被チェック数は、ある程度判断基準にはなります。そのサークルがどれだけの人が訪れたいと思っているか?の数値にほどよく近いものです。サークル数が多すぎるため、サークルチェック機能は来場者にとっての生命線です。

※ただし、サークルごとのチェックなので、品目の多いサークルさんはご注意ください。

部数判断の応用編

ここまでは部数判断で考えるべき基礎的なロジックでした。ここからはそれを実際にどう判断するか?です。技術書典は既に「見本市」としての側面も持っているため、サークルによっては主戦場を、Pixiv Boothのようなオンラインの電子頒布に絞ることも可能です。

印刷にはリスクがありまた当日の混み具合を考えると、話題になった本が後日Boothで売れるパターンは、皆さんも普通に理解できると思います。

そこで、取れる戦略の一つが、印刷部数を低めにして、電子版をメインにするという方法です。

・ 電子版ダウンロードカードを用意しておいて、Google DriveやDropboxなどのファイルストレージ経由でダウンロードできる権利、あるいは対面電書のようなユーザーごとにパスワードを付与出来るサービス使い、当日販売する
・ Pixiv Boothの商品ページへのリンクを印刷して無料で配る

この二種類のやり方があり、これらはいわゆる、名刺印刷やカード印刷でダウンロードカードを用意するようなやり方です。

最悪でも、紙に印刷してハサミで切ればカードをいくらでも作れることです。自宅にプリンタがあれば名刺印刷ソフトと専用の紙で印刷することも可能です。

電子版を当日発売するやり方は、コスパがとても良くオススメです。

紙の本の部数を絞って、電子版DLカードを多めに用意するという戦略があります。

モノグサな人は、その日の販売を早めに切り上げて、Pixiv Boothへ誘導するという戦略もありますが、その場合、電子版DLカード頒布よりは機会損失は大きく生じます。

「いつでも買えるなら後で買ってもいいし」で後で買い忘れるというパターンが生じるからです。

残念ながら(?)最近のトレンドは、印刷部数を絞って、電子版DLカードを多めに用意するという流れかもしれません。なにせリスクが少ないためです。ただどのサークルもがこの戦略をとると、次回以後の午前の競争率がアホみたいに高くなるという傾向がマシマシになります。

早めに売り切れるという技術書典のトレンドは、こういった印刷部数判断の難しさが拍車を掛けていて、今後もそれを緩和する方法があまり無いという問題があります。

公式ウェブサイトがもう少しだけでも使いやすくなれば、多少は印刷部数予測の精度が上がり改善されるはずですが、それでも劇的な改善につながるとは限りません。

場合によっては「取り置きサービス」のようなものが盛況になることで改善されるかもしれません。これによって、取り置き数に応じた、つまり需要の正確さに近い印刷部数判断が可能になるかもしれません。

ただし、これも「取り置き予約したけど、結局来なかった」というリスクが無いわけではないため、必ずしも改善になるとはかぎりません。

ゆえに、筆者の個人的予測としては、「改善の可能性はあるけど」、根本的改善にはならないと考えています。

全部を売っちゃダメ!(追記)

これ意外に忘れる重要なポイントです。いちぶ例外を除いて、最低10部は手元に残しましょう。印刷部数が少ない場合は5部とかでも。出来れば20部くらいあると良いです。

理由は「本は最強の名刺だから」です。紙で刷ったペラの名刺なんて、どうせ大抵の場合は捨てられるか忘れられるか、そんな程度です。もちろん真面目に名刺管理してる人たちもいますが、エンジニアなんてどうせ人の顔も覚えられないし、名刺なんぞよりはGitHubのrepositoryやQiitaの記事や、書いた同人誌の方がよっぽど価値のある「その人のポートフォリオ」です。

故に印刷した本は、その人の「実のある名刺」です。必ず手元に残して、常に一・二冊は携帯しておきましょう。特に勉強会とかカンファレンスに行くなら必須です。

で、友人・知人とか、お近づきになりたい人に配りましょう。自分について知ってもらう最大のチャンスです。

あと、イベントとかで「プレゼント」として寄贈することもできます。意外に便利ですよ?これ

Pixiv Booth

さて、技術書典の当日がおわったあとの主戦場はPixiv Boothで、実際サークルによってはいい数が捌けているのですが、一つ難点があります。

サークル数および品目が増えすぎて検索が困難になっています。

故に、SNSやブログなどの導線がとても重要になります。

ゴールデンタイム以後

さて、13時までの2時間という激戦を戦い抜いた皆様、そのあとをどうしますか?多くのサークルの完売時刻は14時くらいとされています。

電子版DLカードを主戦場において、ゆるゆるやっていくという考え方はありです。いろいろなサークルさんにお邪魔してコミュニケーションを取るというのも楽しみの一つです。あるいは自分のブースに来てくれる人とコミュニケーションを堪能するのも、もちろん楽しいことです。

13時までに目当てを買ったあと、冷やかしに来る人たちや、自分がチェックしそびれた良さそうな本を買いに来る人も多くいます。このとき、自サークルについてチェックしてなかったけど、興味をもってくれる人が増えるので、このタイミングで重要なことは「これってどんな本なの?」と聞かれたら、ソラで答えられることです。

「誰向けに書かれた」「どういう内容の本」で「どういうコード」が載ってるのか?位は説明できるといいでしょう。

ちなみに、早めに撤収して、我らが非公式アフター開催の18時までどこかで時間を潰すという考え方もあります。

非公式アフターは、名前の通り、技術書典公式運営様とは違う、非公式で開催しているアフターパーティーです。ここ最近は100名以上集まって、飲んで食べて騒いで、LTをする集まりになっています!

もちろん体力の続く人は、17時ぎりぎりまで頒布を続けるというのもありでしょう。意外に16時とかにふらっとくる方もそれなりにいます。

お祭りはもちろん13時以後も続きますが、さすがに朝から6時間戦い続けるのは大変なので、ある程度緩急を入れていくといいでしょう。

最後に

実際には、もう印刷部数は決まってるはずなので、今回書いた事は当日どういうムーブをするかの指標および、次回以後に考える材料です。

DLカードなど、準備はまだ間に合います。

技術書典7の歩き方
・ 技術書典事前準備をしよう

サークルチェックや設営準備など、早めに済ませておきましょう!

それでは良き技術同人のお祭りを堪能しましょう!

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