皆さんは電池と聞くとどのようなものを思い浮かべるでしょうか。

やはり乾電池が一般的な気がしますが、人によっては四角いバッテリーが思いつく方も多いかもしれません。

一般的に電池といわれてるものは、アルカリ電池であってもリチウムイオン電池でも化学反応を用いた電池が多いんですが、世の中には化学反応を使わない電池も存在しています。

その中でも特に異色な仕組みで電気を蓄える方法がフライホイールバッテリーと呼ばれるものです。これは大きなコマに電気を蓄えるという一見変わった方法ですが、近年注目を浴びているんです。

今回はそんなフライホイールバッテリーを紹介していきたいと思います。

フライホイールバッテリーとは

おそらく多くの方は聞きなれない言葉だと思いますが、簡単に言えば巨大なコマのようなものを使って、電気を蓄える装置です。

どうやってコマに電気を蓄えるのか？不思議ですよね。実はこのフライホイールバッテリーは、発電所などで作った電気を使ってコマを回転させます。

回転しているコマはその回転の分だけエネルギーを持っているといえますね。つまり電気エネルギーを回転エネルギーに変換して蓄えておくという方法です。

そして、電気が欲しくなった時に回転しているコマからエネルギーを取り出し、電気に変えて使うことができるんです。

電気を使ってモーターを回転させるように電気を使ってコマを回転させ、逆に手回し発電機と同様に回転エネルギーを電気に変えます。

こう聞くと、普通の電池でいいじゃん！って思いますよね。しかし、電池には種類によって得意・不得意があり、このフライホイールバッテリーには一般的な化学蓄電池にはない特徴があるんです。

メリット・デメリット

温度変化に強い

一般的な化学電池は温度変化に弱いという特徴があります。化学電池はその名の通り、化学反応をもとに発電・蓄電しているわけですが、化学反応は温度変化によって大きく影響を受けます。

またスマホやノートPCを長時間使っているとかなり熱くなってしまうときもありますよね。

そもそも化学反応と無縁なフライホイールバッテリーはこのような高温・低温の変化に強いという特徴があります。ただ巨大なコマが回転しているだけですからね。

それに加えて、化学電池よりも長寿命という特性があります。スマホの電池を10年使うことは難しいですが、フライホイールバッテリーは20年以上使えるという優れものです。

変換に必要なコンデンサが不要

電気には交流と直流という種類があります。基本的に化学電池には直流でしか蓄電することができず、使うときには直流を交流に変換する必要があります。

当然、変換するということは変換装置を用意する必要がありますよね。これを電解コンデンサといいますが、当然このコンデンサを買うのにもメンテナンスにもお金がかかります。

一方、フライホイールバッテリーではコンデンサを用意する必要がありません。そのため、よりスリムに電気を届けることが可能になります。

ただし課題も残っている

ここまで来たら、大型蓄電装置は全部フライホイールバッテリーに変えてしまった方がよさそうですよね。

ただし、そんなに都合よくできてはいませんでした…

フライホイールバッテリーは巨大なコマを回してエネルギーを蓄えておきますが、永久に回転し続けるコマも見たことないですよね。つまり、電気を使ってコマを回転させても、空気抵抗や軸の摩擦によって少しずつエネルギーを失っていずれは止まってしまいます。

現在は科学も進歩しているので、コマを真空中で回転させて空気抵抗をなくしたり、超電導でコマを浮遊させて軸の摩擦をなくしたりとエネルギーロスをなるべく減らすように研究が進んでいます。

しかしながら、真空引きや超電導というのはそれだけでコストやエネルギーがかかってしまうという問題があります。これらの基盤となる技術のコストが十分に下がるまでは、化学電池がフライホイールバッテリーにすべて置き換わるとはいかないでしょう。

昨今、エネルギーミックスという言葉が流行っているように、1つの技術で全てを置き換えるということは現実的ではなく、それぞれのメリットをうまく使って、逆にデメリットをカバーしあいながら、化学電池とフライホイールバッテリーはともに使われるようになるでしょうね。

最後に

今回は、密かに注目を浴びてるフライホイールバッテリーについて簡単に紹介してみました。

ちなみに、このフライホイールバッテリー、日本では山梨県で実証実験されているようです。近い将来、日本の一部の地域ではフライホイールバッテリーが主流になることもあるかもしれないですね