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衝撃波で尿路結石を破壊するデバイス

みなさんは尿路結石を患ったことがあるでしょうか?私はまだ経験がないですが、人生一度はあるかもしれないと思うと恐ろしいです。

普通の生活が送れなくなるレベルの激痛が走るといわれる尿路結石ですが、どのように治療されているのでしょう

今回は尿路結石の治療法の1つである衝撃波を使って結石を破壊する技術を紹介します。

尿路結石とは

そもそも尿路結石とは何でしょうか。これがわからないとこの先何にもわからないので、簡単に紹介します。

尿路結石とはその名の通り、尿路(尿道)に結石と呼ばれる石が詰まる状態です。その石というのはどこから来るのか?というのも科学の世界では研究されていますが、当然外からやってきたわけではなくて体内で作り出されて、それが尿と一緒に流れ着いてしまうんですね。

その形もトゲトゲだったりして、人間をどれほど傷つけたいんだ?ってレベルの見た目をしているときがあります。もちろん、自分自身が作り出しているんですけどね。

wikipediaより引用

結晶成長の分野では生物が作り出すバイオミネラルとして、そしていかに結石を防ぐかという観点から研究が進められています。

それでは、今回のメインテーマである尿路結石を撃退する方法を紹介していきましょう。

衝撃波で結石を破壊する

ただでさえセンシティブなところなのに衝撃波で破壊するってどこの中2だよって思ってしまいますが、これが意外と医療として認められているんです。

画像参考元

この手法は、電気水圧衝撃波破砕術という名前で、まさにその通り電気で生み出した水圧で衝撃波を発生させて結石を破壊する技術です。あまりにも禍々しいですが、もう少し具体的に説明していきましょう。

まず、衝撃波の発生のために、結石の近くまでデバイスを近づけて、そこで放電します。恐ろしくて仕方がないですが、まあ感電するとかそういう心配はいりません。安全な放電だと思ってください。

その放電により液中で小さな泡を作り出します。これをマイクロキャビティというんですが、これまたすごいんです。かなり前ですが、このnoteでも紹介したテッポウエビの記事を覚えている方はいるでしょうか?(まずいないですね)

マイクロキャビティとエビに何の関係が?と思われると思いますが、このテッポウエビは自分のハサミを強く閉じることで同様にマイクロキャビティを発生させます。このエネルギーが4000℃相当のエネルギーというのも驚きです。

実際、私たちが感じられるレベルでそんな温度にはなりませんが、このハサミパッチンによるマイクロキャビティと同じことを人間はできないので、放電現象を使うわけです。

ここまでくるとマイクロキャビティの強大さがお分かりいただけると思いますが、このマイクロキャビティの瞬間的な膨張は周囲に音圧波、つまり衝撃波を発生させます。そんなものが尿道で起きるとは想像もつかないですよね。ただこの衝撃波は音の伝わり方が変わるところでしか影響を及ぼしません。

どういうことかというと、体内における液体と体の柔らかい組織は音の伝わり方が似ているんです。科学の言葉でいうと音響インピーダンスの値が近いといいます。

そこでは衝撃波はほとんど影響を与えません。それではどこで衝撃波は仕事のするのかというと、液体や体の柔らかい組織と固いものの間、つまり結石のあるところでピンポイントで影響を及ぼすんです。

この衝撃波は結石と液体、もしくは体の組織の間で強く作動し結石を破壊します。もはや破壊できることは何となく想像できますよね。まるで漫画のような展開ですが、このような方法で尿路結石を治療するという技術なんです。

実は、この手法はさらに進化を遂げており、今では体の外から衝撃波を与えて、結石を狙い撃ちするという方法や心臓の血管にできた石灰(いわゆる結石と似たような石)を破壊することもできます。また、これらの技術も機会があれば紹介したいと思います。

最後に

今回は尿路結石を衝撃波で破壊する電気水圧衝撃波破砕術を紹介しました。

放電、マイクロキャビティ、衝撃波など、小中学生が好きそうなワードが次々繰り出される方法ですが、これが物理の応用例とも言えます。

トンデモ科学のようにも聞こえる方法ですが、これが正しい治療として使われているのも驚きですよね。医療の世界はとても奥が深いので、このような驚きの技術は他にもたくさんあります。また勉強して、ゆるりと紹介していきますね。


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