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【樹木の新たな可能性】リグニンとは

突然ですがリグニンという単語を聞いたことがあるでしょうか?

おそらくほとんどの人は何それ?ってなりますよね

ただ私たちはほぼ確実にリグニンを直接ではないにしても見たことがあるはずです。

実は、リグニンとは植物の細胞をつなぎ合わせる成分なんです。近年、研究が進められてこのリグニンを応用しようという展開が広がっています。

今回はそんなリグニンについて紹介したいと思います。

リグニンとは

リグニンとは木になるような植物が持つフェノール化合物です。リグニンは3次元の網目構造を持ち、植物の細胞同士をつなぎ合わせる役割を持ちます。


リグニンの一例(wikipediaより引用

動物の体は細胞同士をコラーゲンがつなぎ合わせていますが、植物ではそれがセルロースとリグニンに変わります。

動物界のコラーゲンについてはこちらをご覧ください↓

植物の細胞間でリグニンは細胞壁と働き、特に柔らかい草ではなくて、硬い木になるような植物が含みます。このことから特にリグニンは植物が進化の過程で木になる際に獲得したと言われています。

一般的に植物のセルロースの成分は紙製品に使われていますよね。それに対して、リグニンはセルロースを抜き取った後の搾りかすとして捨てられていたり燃やされていたりとあまり素材としての価値を発揮してきませんでした。

なぜなら、リグニンは細胞壁に含まれる網目構造物質の総称であり、決められた特定の構造を示す物質名ではないんです。さらにこの網目構造は非常に複雑であるゆえ、いまだにわかっていないことが多くあるそうです。

たとえば、植物の種類によってもリグニンの構造は変わりますし、同じ植物でもどこで育ったのか、育った環境の温度によっても異なる構造を持つようです。しまいには、同じ個体でも根元と枝ではリグニンの構造が異なるなど、どうやって人間が手を加えれば良いのか分からないという状況でした。

ところが、最近の研究では、日本固有の杉の木に含まれるリグニンが扱いやすいことがわかり、この杉から採れるリグニンを化学的に処理することで、私たちの生活に役立たせようとされています。

改質リグニンとは

日本の研究グループはポリエチレングリコール(PEG)という物質を持ち出でリグニンを修飾してやることで、リグニンに新しい性質を付与することに成功しました。

このようなリグニンを改質リグニンといいます。こうなるとただのリグニンとは全く異なる存在になるようです。

研究グループは比較的均一なリグニンを持つ杉の木から抽出し、さらにそれをPEG修飾するという手順で進めました。こうして出来上がった改質リグニンは非常に幅広い領域での要用が期待されています。

たとえば、耐熱性プラスチック、電子基板、炭素繊維など、現在の私たちの生活刺させる様々な用途での利用が期待されています。

また、リグニンを使った新素材は石油製品の代替品として応用ができるようで、その面からも環境にやさしい素材といえるわけです。

これまで、セルロースの搾りかすとしてあまり日の目を見なかったリグニンですが、超優秀な高性能素材として利用されていくかもしれませんね

詳細に知りたい方はこちらの動画をご覧ください

最後に

最近ではリグニンと同様に植物に多く含まれるセルロースをナノレベルにしたセルロースナノファイバーの研究も進められており、植物の成分から新しい材料を作り出す流れが来ています。

私たちの身近に存在する植物がこれほどの可能性を持っているのは驚きですし、これからも研究の発展を期待できます。リグニン一つとっても、まだまだ完全に解明されたわけではないので、

将来的には、植物から高性能な製品が生み出される日も来るかもしれませんね。

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