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RNAオリガミを使った次世代のものづくり

DNAと聞くと遺伝子と思われるかもしれませんが、近年ではそんなDNAを利用したナノの世界のモノづくりが研究されています。

DNAは正式名称がデオキシリボ核酸といい、いくつか種類がある核酸の一種なんです。そんなDNAの親戚のような核酸が最近ワクチンなどで有名になったRNA(リボ核酸)です。

今回はこのRNAの構造を解明し、ナノの世界のモノづくりを実現する研究を紹介したいと思います。

核酸のナノテクノロジー

まず簡単に核酸のナノテクノロジーについて簡単に見ていきましょう。

DNAナノテクノロジーは、治療薬、酵素ナノリアクター、コンピューティング、材料合成など、さまざまな応用が可能です。要は薬などをはじめとする医学的・生物学的な領域から、半導体デバイスのような物理の世界、そしてDNA自身がコンピューターになるというとても摩訶不思議な研究分野です。

中でもDNAオリガミと呼ばれる技術は、一本鎖DNAをホチキスでパチパチとつなぎとめるようにして折ることにより、さまざまな2次元および3次元構造を作製することができるんです。

そして、このようなナノの世界で作り上げる複雑な構造は人間の手によってDNAの遺伝情報(塩基配列)を操作してやることで可能になります。

RNAオリガミ

DNAナノテクノロジーの研究がよく進められている一方で、RNAには難しい点がありました。それは、RNAの場合は最終的にどんな形になるのか予想が難しいというところです。

研究グループではEGFP mRNA、De Bruijn RNA配列、M13ウイルスゲノムの転写物と呼ばれる材料を使ってRNAの正四面体構造や正八面体構造を作り上げました。

実際に作製されたRNAオリガミによる立体構造がこちらです↓

参考文献より引用
参考文献より引用

ここでは細かい専門用語は難しいのでおいておきましょう。

簡単に言えば、RNAを利用して面白いナノ構造を作り、その形や特性をいろいろと調べてみたということです。

RNAオリガミの安定性

さらに研究グループはRNAオリガミの安定性を調べるため、DMS-MaPseqという方法を利用しました。

DNAやRNAといった核酸はそれ自身が持つATCGの塩基が互いにくっつくことによりループ構造を作ったりします。残念ながらそのループ構造は分子レベルの大きさのため、虫眼鏡で覗いたぐらいではループ構造があるなんてわかりません。

ここでループ構造を持たないということは手をつなぐはずの塩基が手をつないでいない(ペア:塩基対)を作っていないということになります。全ての塩基が手をつないだら二重らせんになりますからね。

そこで、利用されるDMS-MaPseqではこの手をつないでいないアデニン(A)とシトシン(C)を見つけて、ループ構造の位置を明らかにする方法のようです。

異なる構造の特徴の相対的な安定性を調査した結果、ホチキスの芯にあたるステープル末端と頂点が、ステープルや足場よりも局所的なハイブリダイゼーションを不安定にすることを見出した。

私自身もちょっと難しく感じる分野ですが、結局なんの役に立つのでしょうか。

まず、この研究はRNAオリガミの安定性を調べたことにより、DNAやRNAといった核酸全般の折り畳みがどのような機構で起きているのか理解を進めることができるそうです。

そして、これまでDNAをメインにしてきたDNAオリガミの技術をRNAに展開することにより、RNA特有の能力を付与することができるという強みがあります。

具体的には細胞へ直接遺伝子を送り届けることが可能になり、未来の医療や遺伝子編集などといった技術への応用も考えられるそうです。

最後に

今回はRNAオリガミの世界を紹介しました。

あまり聞きなれない分野だったかと思いますが、このような技術が近い未来のデバイスやもしかしたら医療の発展に寄与するかもしれません。

遺伝子とかいうとちょっと怖いなと思う感情もありますが、正しく科学を理解して少しずつ知識を増やしていきたいですね。

参考文献

3D RNA-scaffolded wireframe origami

ChatGPT-assisted Journal Reading

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