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辰野登恵子 身体的知覚による版表現/BBプラザ美術館/2022.4.19-6.19 感想

純粋に抽象絵画ではなく、何かしらのボリュームと厚みを持っていながら、一方でやっぱり具象的とも言えないもの。

以前名古屋市美術館で回顧展を見たときは、70年代から80年代への変化に驚いた記憶があるけど、
その後に沢山遼さんの論考(「辰野登恵子-グリッド/斜行/アクソノメトリー」『絵画の力学』書肆侃侃房、2020年)を読んで、

・地の上の図ではなく、
・地そのものが平面性に還元されるのとも違う、
・地のズレが生む厚み、

というような指摘がされていて、そうやって一貫した問題を見出せるのか!と興奮した覚えがある。

なので、今回の展示は版画作品ということだったので、版ズレの効果に着目してみようと意気込んで臨んだのだけど、
「身体性」をテーマに据えているだけあって、なにかバイオモルフィックな、赤血球のような、版ズレと言うよりは、なにか単体で蠢いている物体であるような印象を受けてしまった。

抽象とも具象とも言い難いような、据わりの悪い感覚で作品を眺めつつ、2000年代の作品まで来ると色調も抑え目ですごく洗練された感じがして、その辺りでふと「オブジェとしての概念」という矛盾した言い回しが思い浮かんで、何かストンと腑に落ちてしまった。
概念の再現表象ではなく、
概念であり、かつ、オブジェであるようなもの?
それが何か妙に腹落ちしてしまい、しばらく椅子に座って眺めていた。

というようなことを、備忘録として残してみる。

2022.4.23

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