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女性の社会進出が進まないのは、配偶者控除のせい?それとも社会の考え方?

パーソル総合研究所によると、2030年には644万人の人手不足になると予想されています。
人材不足は以前より言及されているものの、根本的な解決には至っていません。本当の課題は中途半端な女性活躍施策と、女性活躍とは矛盾する配偶者控除のせいではないか、をデータから明らかにしていきます。


まだ女性の社会進出は途中

2022年現在で、労働者数は6900万人でうち男性が3800万人、女性が3100万人です。男女の差が約700万人なので、単純に考えれば女性の社会進出を促し、男性と同じ労働者数になれば、労働人口の問題は解決されるといえるでしょう。

1985年の男女雇用機会均等法の制定以来、さまざまな政策や法整備が実施されてきました。

男女共同参画局より

図のとおり、女性の社会進出は2016年現在で66%まで上昇しました。ただ、男性の82.5%と比べると、16%の差があります。まだ、女性の社会進出が男性並みではありません。

しかし、25~44歳の働き盛りの女性をだけで見ると72.7%と、男性と比べて10%ほどの差です。30年以上、女性の社会進出を政府が支援してきて、ようやく女性が社会で活躍するのが普通になってきたように感じます。

にもかかわらず、いまだ実現していないのには、女性活躍系の施策以外に別の理由があるのではないでしょうか。

何が女性の社会進出を阻んでいるのか

いくつかあると思いますが、大きなものは「配偶者控除」「配偶者特別控除」の廃止、ないしはボーダーの変更だと考えています。

なぜなら、3100万人の女性労働者に対し、1400万人(約45%)が非正規雇用、さらに1100万人(全体の約36%)がパート・アルバイトだからです。女性労働者の3人に1人がパート・アルバイトになる計算です。

生産年齢人口・非正規/労働直調査2022

15~64歳の生産年齢人口に絞ってみても、非正規雇用の男女差は3倍近くあります。

雇用形態別(男女)/労働力調査2022

非正規雇用の内訳を見ても、特にパートの女性比率が高いことがわかります。

連合より

連合の調査によると、パート・アルバイトの平均年収は150万円前後。配偶者特別控除の壁である150万円に合致します。

労働政策研究・研修機構より

2022年現在、共働き世帯は1262万世帯で、専業主婦世帯の539万世帯の2.5倍近い数です。にもかかわらず、パート・アルバイト女性の年収が平均150万円なのは、男性が正社員、女性がパート・アルバイトの共働き世帯が多いためでしょう。
これについては、正確な情報がなかったため、推測になります。しかし、これまでのデータから考えると、可能性は高いといえます。

非正規雇用を選んだ理由/労働力調査2022

まだ「女性は家庭を守る」考え方が残っている

実際、非正規雇用を選んだ理由として、約30%の人が「家計の補助・学費などを得たいから」「家事・育児・介護などと両立したいから」と回答。「自分の都合のよい時間に働きたいから」も含めれば、64%になります。

ちなみに。「正規の職員・従業員の仕事がないから」は10%と、世の中でいわれているほど、不本意な非正規社員は多くないようです。個人的には、かなりメディアのミスリードが大きいのではないかと邪推していますが、本論には直接関係ないので、ここでは言及しません。

以上のように、女性の社会進出は進んだ一方、既婚者(共働き世帯)の女性は家事・育児のためにパート・アルバイトとして働き、十分に活躍しているとは言い難い状況です。

しかも、配偶者控除・配偶者特別控除があるため、年収103万円あるいは年収150万円以上、働いていない女性がかなりの数いると推察されます。

一つの施策として家事・育児支援が挙げられます。一部の企業では家事代行の補助金を出すなど、家事・育児支援を実施しています。ただ、同じようなことを政府が実施するのは難しいでしょう。

もう一つは男性の家事・育児への参加です。男性の育休取得率向上に向け、政府も動いています。しかし、育休の取得推進をしても、実際に夫が家事・育児に参加するかは不透明です。本人の意志に委ねるしかありません。

そう考えると、政府ができる施策で現実味があるのは、配偶者控除・配偶者特別控除の廃止、あるいは基準の見直しです。この控除は専業主婦世帯を基準に考えられており、夫婦ともに正社員として働くことを前提としていません。

社会が変わっていくように、制度も変わっていくべき

すでに見たように、専業主婦世帯はマイノリティです。であれば、この控除は見直されるべきではないでしょうか。

確かに、控除がなくなると社会保険を負担する世帯が増えます。しかし、それ以上に年収上限に縛られずに働ける女性が増えるのではないでしょうか。特にインフレが加速し、最低賃金も上昇している現在、103万円や150万円まででは働く時間が限られます。もはや実情に合わない制度と言えます。

配偶者控除・配偶者特別控除の廃止、ないしは基準見直しは国民からの反発を招くでしょう。しかし、労働力不足という観点から見ると、むしろ控除が女性の社会進出を阻害しているといえます。

もちろん、この控除一つですべては解決しません。しかし、女性の社会進出が促進されることで、逆説的に男性の家庭進出も進むと考えています。未来を考えられる政治家に、きちんと決断・実行していただきたいものです。

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