見出し画像

「滅私奉公」と「御恩と奉公」

同じ武士でも、鎌倉~戦国期の武士と江戸期の武士は違います。前者は「御恩と奉公」の関係でメリットを与えるから主君に仕えるのに対し、後者はまさに昭和のサラリーマンです。

戦国期の武将をリスペクトする経営者は多いですが、その違いを理解していないように思います。

この違いを理解していない経営者が多いから、いまだもって日本の企業は低迷し続けるのだと、私は考えています。

なぜならば、経団連の会長やトヨタの社長が「終身雇用制の維持は不可能だ」といっているのに、いまだ社員に「滅私奉公」を求めているからです。

確かに、終身雇用制の時代は60歳の定年まで(基本的には)何があっても社員の雇用を守ってきました(特に大企業は)。だから、社員はその恩に報い、全国転勤させられようが、理不尽な目に遭おうが、時に家族を犠牲にして我慢してきました。

それは安定した雇用と退職金・企業年金があったからです。生活の一切を企業に依存していたからこそ、滅私奉公で頑張ってきたのです。

が、終身雇用制は崩壊し、40~45歳以上で強制的なリストラを実施する今、その関係もまた崩壊しています。

今は御恩と奉公、何らかのメリットを企業が与えてくれるから、社員は頑張るという構図です。メリットを反故にされたら、企業にそっぽを向き、転職するのは当たり前です。そりゃ、「金柑頭」と罵られた明智光秀は謀反を起こしますわ。

これまでの「何があっても社員の生活を守る」という約束を保護にされているのに、「滅私奉公せよ」とはこれいかに。

そんな理屈は通りません。しかし、多くの経営者はあまり理解していないように思えます。

もっと言えば、幕末の志士たちも脱藩浪士(藩を捨てた武士)や藩主を蔑ろにした武士が多い(長州藩とか)ので、滅私奉公する武士など、江戸初期から後期のわずかな期間ですが。

何が言いたいかといえば、経営者は本気で労働環境を改善しないと、早晩、会社組織が崩壊するということです。

今はまだ終身雇用の残り香があり、労働者もその意識で働いています。しかし、10年以内にはその意識はほとんどなくなり、企業に依存するという生き方は少数派になるはずです。

そのとき、「養っているのだから、お前たち働け」という企業・経営者のもとに、どれだけの社員が残るのでしょうか。

各所でDX(デジタル技術による経営改革)が叫ばれていますが、むしろ経営者の頭の中(考え方)こそ変革・アップデートすべきです。

よろしければ、サポートをしていただけると嬉しいです。サポートが今後の活動の励みになります。今後、求職者・人事担当などに有益な情報を提供していきたいと考えています。