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折れないなんて無理だから

"どうすれば、折れない心を育てられますか?"

仕事がら、人材育成関してクライアントからご相談いただくことがあるのだけれど、度々いただくご相談が、これ。

わからなくもない。

雇っている側からすれば、大切に育ててきた人材が、壁やクレームにぶつかってポッキリと心が折れて、"わたしには無理です"とか"この仕事はわたしにはあってないです"と言って辞めていってしまうのはつらいことだ。

働いてる側だって、好き好んで心を折りたいと思う人は極めて希な存在だろう。みんな、別に心を折りたくて折ってる訳じゃない。

そんな中で、気づけばもう10年ほど同じ会社で揉まれているからか、"心が折れることはないんですか?"とか、"どうすれば折れずにいられるんですか?"と聞かれることもあるのだけれど。

いや、折れてるから。

何度も、折れてるから。

なので素直に"日々折れてますよ"と返すとみんな、"またまたー"と言うのだけれど、折れてるってば。

でも。

これは完全に個人的な見解だけれど。

本当に強い人は、絶対に折れない心を持っている人よりも、折れてもまた歩き出せる人なんだと思っている。折れた時にどうすればいいかわかっていて、折れても自分は大丈夫って、思えてる人。 同じ場所でも、違う場所での再スタートでもいい。前に、足を出せる人。

新入社員の頃、折れちゃだめだ、心が折れるのは弱いことだ、負けだ、と思っていた時期があって、あの頃は折れちゃダメだと思うほどに苦しくなっていた。

けれどある時先輩が、

"は?なに、自分は絶対折れない無敵なやつ目指してんの?別に折れてもいーじゃん。折れないことより、折れたところからまた起き上がれるかどうかじゃん?本当に強いやつは、起き上がり方を知ってるやつだよ。自分はどうすればそこから脱せるかわかってるやつだよ。そういうやつは、折れることが怖くないから、強い。チャレンジできる。だから俺は自分のチームには折れないやつよりそういうやつのほうが欲しい"

みたいなことを言っていて、なるほど、と思ったのだった。

それ以来わたしは、折れた時の対処法を心のお守りに、折れることを必要以上に我慢しないようになった(とはいえ不器用だから、あまり周りには出さずに、人知れずひっそりと折れていることが多い)。たとえば、

とにかく何もしないで寝る、とか

日帰りか一泊で旅に出る、とか

実家の裏山に登る、とか

レイトショーで映画を観る、とか

とりあえず泣く、とか

一度思いつきでスカイダイビングをしたら、すっかり立ち直ったこともある。

折れてもまあ、これのうちどれかをやれば大丈夫かな、と思えると、気持ちがだいぶ楽になる。

それでもダメなら、辞めればいい。その選択肢を自分にOKすることだって、お守りになる。

そしてやっぱり、周りの人たちからの励ましや、他愛もないことで笑いころげる時間や、何気ない一言に、何度も何度も、救われてきた。

これからも、たくさんたくさん、数えきれないぐらいたくさん、心が折れる場面がやってくる。そこに折れずに立ち向かう強さや勇気は持ち合わせていないし、かと言って折れない心をこれから鍛えようとも思っていない。けれど、折れてもまた立ち上がるしたたかさと、誰かが心折れそうなときにそっと寄り添える優しさを持った人でありたい。

そんなふうに、思っている。


#大人になったものだ #エッセイ #旅しゃぶ更新部



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