失恋2

元恋人と最後の夜を過ごした。
とはいっても、特別なことを何かしたわけではなく、一緒に晩御飯を食べ、ちょうど放送していたベストヒット歌謡祭を見つつ、お互いに見せたい動画を見せ合っただけの時間である。
たった2時間45分程はあっという間に過ぎた。

恋人という枠を取っ払うと、お互い余計なことを気にしなくて良いからか、心から楽しいひとときを過ごすことができた。
くだらないことで笑い合い、お互いのことを知り尽くした同士でテレビを見ながら話すひとときはここ最近で一番楽しい時間だった。

そして、最後は2人で話した。
自分は今まで相手に与えてもらった沢山のことへの感謝と、相手の素敵だなと思う部分、そしてこの結末を迎えてしまう原因を作ったことへの謝罪の意を伝えた。
「もし…」と後悔していることも素直に伝えた。
元恋人は今まで見た中で一番泣いていた。
相手からも今までの感謝や好きなところを伝えられた。
そして「もし…」と少しばかりの後悔も伝えられた。
相手もきっと苦渋の決断を下したことは容易に想像ができた。

こうしてお互い感謝の気持ちを伝え合い、これから当面は親しい友人として付き合っていきたいねと意思確認できた。
お互いに恋人ができた時はそのことを報告して、相手次第で連絡をどうするか決めようと話した。
最後はしっかりハグをして、笑顔で家を出てお別れした。
相手は見えなくなるまで見送ってくれた姿が印象的だった。

見事なまでに綺麗な別れだった。
帰る前日に話を持ちかけて、楽しく1日を過ごす時間を作ってくれた相手には感謝の気持ちしかない。

ただし、この楽しかったひとときと、お互いのことを一番理解していることを痛感する程に、恋人としてこれからの人生を歩めないことが無念で仕方がない。
表面的に好きな人がいたとしても、これほどお互いの理解者として愛することができるだろうかと思ってしまう。
遠距離じゃなければと、早く地元に戻っていればと悔やんでも悔やみきれない。

家を出たあとはスッキリとした気持ちだったが、振り返ると無念な気持ちが沸々と湧いてくる。

しばらくは引きずりそうだ。
幸いにも、自分には話に付き合ってくれる友人に恵まれている。
他の人に話せば楽になれるかな。なれるといいな。

あんなに良いものではないが、「花束みたいな恋をした」に救われた気がする。
とんでもない大失恋が、素敵な人生の1ページとして刻んでも良いんだと思うことができたのはこの映画のおかげだ。
とりあえず今は、これほど大切な相手との失恋は滅多に経験できるものではないとプラスに捉えて、明日からの日々を頑張るのみである。
がんばれ自分。


(備考)
密かな夢として、お互いこの後にできた恋人とうまくいかず、30歳を過ぎても独り身なのであれば、もう一度復縁しても面白いかもしれないとふと思った。
今すぐに戻ることは絶対にできないが、お互い真剣に次の恋人と向き合っても無理であれば、その経験を乗り越えた2人であればより良い関係が築けるのでは?と想像してしまった。

そう考えると少し前向きになれた。
次にできる恋人と真剣に向き合おう。しばらくは遊んでも良いかもしれない

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