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アルフレド・ジャー展|「音楽(私の知るすべてを、私は息子が生まれた日に学んだ)」

「シールアートで夜景旅行」の続きで
  2023年10月のお話です。


岡山まで来てよかった。
「シールアート 大村雪乃展 夜景旅行」は楽しかった。

おとなりの広島に
もうひとつ気になっている展示がある。

それは広島市現代美術館で開催の
アルフレド・ジャー展

「音楽(私の知るすべてを、私は息子が生まれた日に学んだ)」
という作品を観たい。


いや、
「観たい」というより
「体験したい」が適切か。


この作品は、空間そのものが作品だ。
ある時刻になると、
広島市内で生まれた赤ちゃんの産声が響き渡る。
ある時刻とは、赤ちゃんが実際に生まれた時刻。


この作品の存在を知ったとき
素直に感心した。

思いつくのもすごいし
実現してしまうのもすごい。


この作品を体験した人は
なにを思うのだろう。

考え方とか
生き方とか
感じ方とか変わるだろうか。


もしも私が体験したら?

不毛とか理不尽とか
もうすぐはじまる年末調整とか
乗り越えられる?

そんな気がしてやってきた。


広島には18時過ぎに到着した。
美術館はとっくに閉まっている。
広島グルメを食べてこの日は終了。

カキのクリームパスタ
ご当地ジェラート


翌日。
広島に来たからには
原爆ドームと平和記念公園は素通りはできない。

慰霊碑にお参りして
ボランティアの方の説明を聞く。
目の前に立つとやはりショックだ。

原爆ドーム


雨が降り始めた。
それでも人が減ることはなく
むしろどんどん増えて
平和の鐘と平和資料館の前には
行列ができていた。
向き合おうとする人の多さにほっとする。


平和記念公園から周遊バスで約20分。
広島市立現代美術館「アルフレド・ジャー展」へ。

広島市立現代美術館


「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」がお出迎え。

「われらの狂気を生き延びる道を教えよ」

続いて「広島、長崎、福島」

祖父母の家は2つとも福島にあった。
広島と長崎と並べられていることは
いろいろ思い返してしまってショックだけれど
福島で起きたことが忘れられてしまうことは
もっとショックだ。
この作品を作ってもってよかったのかもしれない。

「広島、長崎、福島」

「生ましめんかな」

こんなに大切な言葉をどうして忘れていたのだろう。
いま思い出せてよかった。

「ヒロシマ、ヒロシマ」

始まる前の緊張感と恐怖感。
はじめて味わう感覚。
これが作者の狙いなのかな。


さあ、いよいよ
「音楽(私の知るすべてを、私は息子が生まれた日に学んだ)」。

天窓から自然光が差し込む円形の部屋。
中央には広島産のモミジの若木。
モミジをぐるりと囲むベンチ。

天窓はステンドグラスだろうか。
柔らかな光が入ってきてとてもきれい。

「音楽(私の知るすべてを、私は息子が生まれた日に学んだ)」


「音楽(私の知るすべてを、私は息子が生まれた日に学んだ)」


最初に2人の赤ちゃん。

「サウンド・オブ・サイレンス」をはさんで
さらに4人の赤ちゃんの産声を聞いた。

最初から最後までもの大キック力強く泣く子
最初は弱々しくても徐々に力強くなる子
最初から最後まで弱々しくて心配になる子。

声の大きさ、高低、勢い。
ひとりひとりまったく違う。


「生まれるってこんなに大変なのか」とか
「まだお母さんのお腹のなかにいたかったなぁ」とか
「生まれてすぐに変なあだ名付けないでよ~」とか。

あ、最後のは私か。

みんなそれぞれ
大人にはわからない言葉で
語りかけていたりして。

6人目の赤ちゃんの声がフェードアウト。
シーンとした途端
タイトルの意味がわかった。

産声は、特別な音楽だ。
お母さんと出産に立ち会った人たちだけが聞ける。

それを聞くことができるなんて。
なんてスペシャルな体験。
胸が熱い。


美術館を出ると
雨は上がっていた。

アルフレドさんの「音楽」は
想像以上にすごい作品だ。

ほんの30分ほどいただけで
私の心はとても豊かになった。

血のつながりもなく
一生接点を持つことのない人たちの幸せを
私はいま心から願っている。

生まれてきた赤ちゃんが
みんな幸せに生きられるように
明日からも仕事しよう。


最後までお読みいただきありがとうございました。

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