古田徹也さん講演会

 『はじめてのウィトゲンシュタイン』著者の古田徹也さんの講演会へ。ずいぶん前だれど、ウィトゲンシュタインの『論理哲学論考』の読書会をやったことがあり、その興味から参加。

 私が読んでたのはいわゆる「前期」ウィトゲンシュタインで、それは哲学とか倫理学の問題としては面白かった。で、今回の講義は後期ウィトゲンシュタインについてだったのだけど、これが「小説を書く」ということと大きく関わっていると思えて、けっこう、とても──いや、すごく感動したし、元気が出た。

 言葉が「魂」を持つには──言い換えて、単に言葉を「メッセージ伝達の道具」と見るのではなくて、それに愛着を持ち、大きなまとまり、ひとつの文化として体験する/使っていくためには、言葉や表現を検討する=「へめぐる」ことが大事、という話。

 例えば「Aさんってどんな人?」と聞かれた時に、

(´-`).。oO(「弱い」、違うな……「繊細」、これでもない……「優しい」。これだ!) 
 →「Aさんは優しい人だよ」

 というように、意味は似ているけれど少しずつ違う言葉を「へめぐる」──検討していって、「しっくりくる」表現を選び取ること。こうしたプロセスの中で、言葉の感覚とか表現力が豊かになる。同時に言語全体も厚みを増していくこと。(もちろん常に「優しい」が正解なのでなくて、文脈や、どう言うか/書くかによっても異なってくる)

 ただこれって、小説はじめ、文章を書く人は、常にやり続けていることだと思う。意味はそれほど変わらないのに、ほんの僅かに違う表現を、時に何十分もかけて「あれも違う、これも違う……」と探していく。結局最後に使うのは一つの表現ではあったとしても、この「探す」という途上のプロセスに光が当たったようで、そのことがとても嬉しく感じた。

(´q`).。oO(つまり、ええと──最近書き上げた小説の推敲を頑張ります)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?