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短編SF小説 「宇宙レポート」

私たちは、実験のために地球から連れてきた様々な人種や年齢の地球人に、ある複雑な問題を持たせて対処してもらった。

まず泣き出すグループがいた。叫ぶものもいた。生まれて間もない赤ん坊や子どもが殆どだった。

次のグループは暴力を使い、他の人間に危害を加えはじめた。まだ幼い人間が殆どだったが、中には年齢が高いものもいた。

ある程度成長した人間からは様々な反応が見られるようになった。それらは「怖い」「嫌だ」などの言葉を発しての抵抗だった。中には泣いたり、暴れるなどの反応を織り交ぜるものもいた。

高齢のグループはネガティヴな問題に対し、それを受け入れたかのように様々な反応を示した。

我慢する。ポジティブに考える。ストレスを軽減する為に他人と話し合う。人間たちはそのグループの事を「大人」と呼びあっていた。最も目立った被験体は言葉を巧みに操り、与えられた問題について的確に表現した。

その被験体の話を聞いた周りの大人たちが反応し、問題の対処法についての交流をし始めた。別のグループの世話まで始めるものもいた。しかし、いわゆる「大人」でないグループに属する人間にはそれが理解出来ない者もいた。

大人グループは10〜20代から高齢者まで様々だったが、年齢が高くなれば大人に属せるという訳ではなかった。逆に高齢になりすぎると、体力とコミュニケーション能力も衰えてこのグループから外れる結果となった。

実験結果を報告する。地球人に複雑な問題を与えた場合、大人グループが中心となってコミュニケーションを取り、自分たちで対処することが出来た。

言葉は元々、人間が自然環境の中で生み出したコミュニケーションの手段だ。言葉は人間の文化と精神の成熟に寄与し、地球という惑星を宇宙でも稀有な存在に発展させるのに貢献したのだ。

以上である。この「言葉」は記述でも表現出来る為、このレポートは地球人の言葉で作成してみた。私たちは長い間、言葉を持たずに信号のみの交信に頼っていたが、言葉の重要性を理解し、コミュニケーションの問題を解決する糸口としたい。

きっと、あなたたち同胞も、初めてこの言葉という地球人の発明したコミュニケーションの道具を体験して驚いていることでしょう。私たち宇宙生命体全体が直面している、互いの理解不足から生じる対立や衝突を乗り越えるためにも、地球人たちの発明した言葉の力を借りることが出来れば幸いだ。』


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