【SDGs、幸福度】医療へのアクセスの確保。2024年度から「健康日本21(第3次)」、目標「健康寿命の延伸」。

SDGs(持続可能な開発目標)の実現を目指し、多様性社会に向けた取り組みが世界的に進められている。

日本は、2022年のSDGs達成度ランキング(「持続可能な開発レポート」)において世界163か国中19位であり、過去最低の順位や最低評価数(全17中6項目、4段階評価)になっている。スコアは79.6(過去最高80.1)であり、5年間ほぼ横ばいを記録している。
また、2023年の世界幸福度ランキング(「世界幸福度レポート」)は、137カ国中47位(過去最高43位、最低62位)であり、2015年(46位)以来8年ぶりに40位台に回復している。

2013年度から10年間計画として開始した「健康日本21(第2次)」は、2022年10月に最終評価がおこなわれ、報告書が取りまとめられた。これを踏まえ、2024年度から開始する「健康日本21(第3次)」の改正案が策定され、告示された。改正内容にはSDGsの理念なども盛り込まれている。

SDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)

この2つのランキングは、SDSN(Sustainable Development Solutions Network:持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が発表している。
SDSNは、2012年8月に、潘基文国連事務総長(当時)が設立した非営利団体のグローバルなネットワークである。国連が掲げる持続可能な社会を実現するため、学術機関や企業、市民団体などのステークホルダーが連携して解決策を見出し、行動することを目的としている。

SDGs

SDGsは、持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標である。
2015年9月の国連サミットの成果文書として採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中で掲げられた。
2030年までの達成を目指しており、17のゴールと169のターゲットから構成されている。
2001年に策定されたMDGs(ミレニアム開発目標)は、主に開発途上国向けの目標であり、2015年を達成期限として取り組まれたが、すべての課題が解消されたわけではない。SDGsは、その課題を引き継ぎ、「誰一人取り残さない(leave no one behind)」を基本理念に掲げ、すべての国が取り組むべき新たな国際目標となった。

持続可能な開発レポート

持続可能な開発レポート(Sustainable Development Report )は、各国のSDGsの達成度合いを評価(スコア・4段階評価など)したものである。
SDGsの17目標に対して4段階で評価し、その達成度を基準に順位付けをしている。

17目標の達成度、4段階評価(2022年)

・【達成済み】達成に近づいている「グリーン」
 4【教育】
   質の高い教育をみんなに
 9【インフラ、産業化、 イノベーション】
   産業と技術革新の基盤をつくろう
 16【平和】
   平和と公正をすべての人に

・【課題あり】課題が残っている「イエロー」
 1【貧困】
   貧困をなくそう
 3【保健】
   すべての人に健康と福祉を
 6【水・衛生】
   安全な水とトイレを世界中に
 8【経済成長と雇用】
   働きがいも経済成長も
 11【持続可能な都市】
   住み続けられるまちづくりを

・【重要な課題】重要な課題が残っている「オレンジ」
 2【飢餓】
  飢餓をゼロに
 7【エネルギー】
  エネルギーをみんなにそしてクリーンに
 10【不平等】
  人の国の不平等をなくそう

・【深刻な課題】大きな課題が残っている「レッド」
 5【ジェンダー】
  ジェンダー平等を実現しよう
 12【持続可能な消費と生産】
  つくる責任つかう責任
 13【気候変動】
  気候変動に具体的な対策を
 14【海洋資源】
  海の豊かさを守ろう
 15【陸上資源】
  陸の豊かさも守ろう
 17【実施手段】
  パートナーシップで目標を達成しよう

世界幸福度レポート

世界幸福度レポート(World Happiness Report)は、SDSNが発行しているもので、世界各国の幸福度に関する調査結果をまとめたものである。主観的な幸福度を調査し、その調査結果をベースに6つの要素を加味して順位付けし、ランキングを示すという報告方法がとられている。
国連が「国際幸福デー(International Day of Happiness)」に定めている3月20日に毎年(2014年を除く)公開している。

各国の幸福度は、アメリカのギャッラップ社の世論調査データをもとに、”GDP”や”人生の選択の自由度”などの6要素の3年分の資料から数値化される。
聞き取り調査は、各国の約1000人に「最近の自分の生活にどれくらい満足しているか」を尋ね、0(完全に不満)から10(完全に満足)の11段階で答えてもらう方式でおこなわれる。

また、報告手法で使用されている要素は以下の6つである。
・1人当たりの国内総生産(GDP)
・社会的支援(Social Support)
・健康寿命(healthy life expectancy)
・人生の選択の自由度(freedom to make life choices)
・寛容さ(Generosity)
・腐敗の少なさ(Perceptions of corruption)

「健康日本21」、目標「健康寿命の延伸」

日本は、2000年から「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」を推進している。最大の目標として「健康寿命の延伸」が掲げられた。
健康寿命は、幸福度の6つの要素の1つである。

2003年5月から施行された「健康増進法」は、この「健康日本21」をさらに推進するためにつくられた法律である。医療制度改革の一環であり、国民の健康づくりや疾病予防の積極的な推進を目的としている。
健康づくりに取り組むことを国民の責務(「国民は、健康な生活習慣の重要性に対する関心と理解を深め、生涯にわたって、自らの健康状態を自覚するとともに、健康の増進に努めなければならない。」)としており、生活習慣改善や受動喫煙防止、誇大表示の禁止など、健康に関する正しい知識の普及についても定めている。

2024年度から「健康日本21(第3次)」が開始する。健康寿命の延伸は、引き続き「実現されるべき最終的な目標」となっており、その実現のための5つの基本方針と53項目の目標などが定められている。
指摘されている課題だけでなく、様々な社会変化(多様性社会やデジタル化、次なる新興感染症など)を踏まえ、見直しや改正が行われた。
「全ての国民が健やかで心豊かに生活できる持続可能な社会の実現」のため、誰一人取り残さない健康づくりの展開(Inclusion)と、より実効性をもつ取り組みの推進(Implementation)を通して、国民の健康増進の推進を目指す内容となっている。SDGsの理念は、基本方針からも確認できる。

健康寿命

健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」をいう。
2000年にWHO(世界保健機関)が提唱した指標で、日本とWHOでは算出方法が異なるが、日本でも導入されている指標(「健康な期間」の平均値)である。
2012年の「健康日本21(第2次)」から、国民生活基礎調査をもとに、2つの指標(主指標「日常生活に制限のない期間の平均」、副指標「自分が健康であると自覚している期間の平均」)により健康寿命を評価し、具体的な数値目標を決めている。
2019年は、男性72歳、女性75歳であり、平均寿命との差は男性9歳、女性12歳となっている。また、平均寿命とは「0歳における平均余命」のことであり、1950年は男女ともに約60歳だったが、2019年は男性81歳、女性87歳となっている。

医学的進歩や公衆衛生の改善、健康志向の高まりなど、様々な社会的発展を背景に、平均寿命と健康寿命は年々延び続けている。

多様性社会に向けた取り組み

日本健康21は、国民のニーズに応じた多様で質の高い健康増進サービスに対する社会環境の整備を推進してきた。健康日本21(第3次)でも、それは引き継がれ、「社会環境の質の向上」が基本方針に定められている。
医療機関や福祉サービスなどをより身近なものにするため、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード、個人健康情報など)や正確な医療・健康情報を入手・活用できるインフラ整備などを進め、広報・啓発活動もおこなう。これにより、多様性のある健康づくりに取り組めるようになる。

日本健康21には、この取り組み以外にも、多様性社会の実現に向けた内容が盛り込まれている。この健康施策を推進することは、SDGsの実現にもつながり、健康寿命だけでなく健康増進に向けた選択の自由度を高めるなど幸福度の向上にもなるだろう。

おわりに

SDGsは、開発途上国だけでなく世界のすべての国の目標であり、持続可能な多様性社会の実現と世界各国の幸福度の向上のための目標である、というのが国際的な認識であると認識する。
本記事では、日本の取り組みとして日本健康21を取り上げ、健康寿命を中心にSDGsや幸福度などと関連付けてみた。
多様性社会の実現を目指す上で、国際社会と日本社会がWin-Winの関係を築いていくことは重要だ。SDGsの実現で、世界各国の社会保障が機能し、QOLも向上するだろう。

SDGs16【平和】平和と公正をすべての人に
16-7「あらゆるレベルでものごとが決められるときには、実際に必要とされていることにこたえ、取り残される人がないように、また、人びとが参加しながら、さまざまな人の立場を代表する形でなされるようにする。」
これは、目標16の実現のための方法の1つである。すでに目標16は最高評価を得ているが、引き続き大事にしたい考え方である。


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