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音楽家の旅行記 金沢編 -Part1 1日目 朝 金沢駅〜近江町市場-


金沢駅到着

新宿から夜行バスで金沢駅西口に朝7時過ぎに到着。やはり何度乗っても夜行バスはどうも慣れず、今回も殆ど寝ることはできず。ヨーロッパのFilix Busという一般的な長距離バスに比べ日本の夜行バスは狭い上にシートもかなり固め。その上乗客のスマホの使用率がどうも高いようで夜中に光が飛んでくると割と気になる。あとは休憩回数が多い。2時間毎にトイレ休憩が入るのは運転する上では、また様々な乗客がいる故大事なことではあるがサービスエリアという概念が基本的にないヨーロッパと比較した場合高頻度と言えるだろう。ちなみにヨーロッパの高速道路は基本的に無料なのである。

到着後に感じた金沢の第一印象は、思っていたよりも開けていることであった。またビルや近代建築物の色が独特であること。勿論東京の灰色コンクリートジャングルでもないし、京都の枯れた色でもなく落ち着いた茶色系統ではあるものの少し明るい雰囲気を感じたのだ。後は空気感。地方特有の少し淡い感覚。東京の空気感というのはどうも濃淡が強くやや重い。これは東京の色彩感にも現れている。自然の色や神社仏閣の赤、白、緑、青、或いは江戸切子や歌舞伎の連獅子の衣装など伝統工芸、芸術の色合い、こんな所によく現れている。今回石川を初めて訪れたのも復興支援の他にはこの色彩感への興味が大きく関わっているのだがそれは後ほど改めて詳細に書くことにする。

鼓門

金沢駅に到着してまず真っ先に向かったのは鼓門(写真)である。
世界の最も美しい駅に選出されたことのある同駅。やはり目立つ。だが実は、事前に知っていたこの鼓門以上に駅前にあった噴水のモニュメントに驚いた。噴水といっても傘立てのスタンドぐらいの大きさのものなのだが、小さな噴水がいくつも連なっていてそれで日付や時間が表示されるものは今回初めて存在を知ったのであった。

近江町市場〜朝食

寝不足と初めての地にテンションがだいぶおかしいことになり、そのまま歩いて近江町市場へ。朝から海鮮丼。贅沢である。途中でおそらく近江町市場の買い物券の購入らしき行列に遭遇したがまあこれが1キロは並んでいるのではないかと思うくらいに長くて唖然としたのを覚えている。美味しいもののためには待機時間を厭わない私だがそれでもその長さには驚いた。

朝から2500円前後の海鮮丼。うーん贅沢。

やはり北陸に来たからには海鮮だろう。ということで躊躇せずに朝海鮮丼。さすが市場の中だけあって魚の状態は悪くない。特にウニはミョウバンの味はせずちゃんと原型を留めたままクリーミーなのはやはり地方だから良いものが比較的手軽に味わえるものではないだろうか。海鮮丼の中で特に美味しく感じたのはイカとノドグロ、やはり地物である。イカは歯切れがよくもちもちとした食感で東京で食べるような粘り気が強い感じではない。ノドグロは白身の淡白な味ながら噛めば噛むほど油と繊細な旨味がどんどん溢れてくる味。鮮度も良い。

食べ歩き

とはいえど単純に鮮度だけで言えば東京の市場周辺で食べるものも決して悪いものではない。近江町市場もどうもあらゆる地方から魚や野菜を仕入れ販売しているようで、想像を超える、というものを見つけるのは簡単ではないようだ。ということでさらに良い海鮮を求め市場内を彷徨う。

岩牡蠣とホタルイカ。いきなりだが今旅最強の味覚だった。

とある鮮魚店で牡蠣とホタルイカに目を惹かれた。生牡蠣は好物の一つである。フランスやスペインで魚介に恋しくなった際、生オイスターで魚介成分を補給していた。特に日本ほど魚種が、それも生食においては豊かではないヨーロッパでは貴重な生魚介であった。がそのオイスターも日本の味には敵わない。日本は寒流と暖流、それぞれ2本ずつに囲まれており栄養と魚の群れが豊富に流れ着いてくるのが原因ではないだろうか。そんな中でも北陸、特に富山湾は対馬海流だけではなく黒部の山々からのミネラル豊富な水がダイレクトに富山湾に注がれ非常に栄養が豊富であるため魚が集まるそうだ。日本で取れる種全体の半分以上が取れることもあり故に富山湾は天然の生簀と呼ばれる。そんな富山湾で取れた今がまさに旬のホタルイカの釜揚げ、これには心底恐れ入った。もう東京ではホタルイカは食べられないだろう、そんな思いまで沸く始末。口に入れた瞬間全身から光が発せられるかのように細胞が震えだした。透明感とその向こうに広がるイカの癖、そして旨味。この度で一番美味しいと感じた代物である。牡蠣もせっかくだからと真牡蠣ではなく倍の値段する岩牡蠣をチョイス。こちらも透明感が高く、上品な瑞々しい旨味が噛んだ瞬間にプリッとした弾力と共に弾け飛んだ。これだけ美味しいのに水のようにゴクゴク入っていってしまいそうな、喉越しの良い軽い身の質。これだけで金沢にきてよかったと思えるだけの逸品であった。

地物の味に打ちひしがれた後は香典返しのためにまた別の鮮魚店でノドグロ入りの干物セットを購入。自分で食べられないことを歯がゆく思いながら金沢城公園・兼六園に向かって足を進めていく。

次回に続く。

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