見出し画像

〜コンテ初陣!炸裂、擬似カウンター!〜 21/11/4 《ECL21-22 グループG第4節》 トッテナム vs フィテッセ

こんにちは。えつしです。


今回は、ECL21-22グループG第4節、トッテナムフィテッセの試合をレビュー。
コンテ監督体制初の試合となるこの一戦。ビザを取得するまでの間は練習を指揮することができないこともあり、一応"見学"という形で練習に参加していたはずですが、初戦から監督交代の影響が色濃く出たゲームとなりました。


1. スタメン

画像2

・スパーズ
ロリス
ロメロ-ダイアー-デイビス
エメルソン-スキップ-ホイビュア-レギロン
モウラ-ソン
ケイン

72’ ソン⇄エンドンベレ
73’ モウラ⇄サンチェス、スキップ⇄ウィンクス
87’ ホイビュア⇄ロ・チェルソ

スパーズは、直近のマンチェスター・ユナイテッド戦からロ・チェルソに代えてレギロンを起用した〔3-4-2-1〕
準備期間は少なかったものの、フォーメーションをコンテの十八番である3バックに変更してきたスパーズ。インテルで採用していた〔3-5-2〕をそのまま適用するのではなく、とりあえず初陣は〔3-4-2-1〕


・フィテッセ
シューベルト
ドゥーヒ-バズール-ラスムッセン
ダサ-ベロ-トロンスタット-ヴィッテク
フレデリクセン-グボホ
バイティンク

46’ グボホ⇄オペンダ
74’ フレデリクセン⇄ダルフィル
86’ バイティンク⇄フーヴェン
90’ トロンスタット⇄オロス

フィテッセは、直近のヘーレンフェーン戦からハーイェクオペンダダルフィルに代えてベロヴィッテクバイティンクを起用した〔3-4-2-1〕


2. 1st half

2-1. 劇的ビ○ォーア○ター。コンテによって生まれ変わったスパーズのビルドアップ

まずはこの試合を観ていたスパーズサポーターを最も驚かせたであろう生まれ変わった後ろからの繋ぎについて。


ボール保持時の配置は〔3-4-2-1〕の基本布陣のまま変わらず、左右のCBがボールを持った時にCB、WB、ボランチ、シャドーの4人菱形を作ってのビルドアップ。

画像2


それに対し、フィテッセ前3枚でスパーズのCB2ボランチで2ボランチWBにはWBという形で捕まえ前から嵌めようとします。


しかし、先述の菱形を作ったところからモウラハーフスペースでボールを引き出したりケイン降りてきて縦パスを引き出したりしてスパーズがうまくボールを前進させます。
コンテが就任して間もないですが、今までプレスに来ない相手に対してもボランチが2人とも列落ちして後ろが滅茶苦茶に重くなるなどしていたところから、同数で嵌めに来る相手に対して前線の選手が降りてボールを引き出すという基本ができるように。

画像3
画像4


フィテッセのCBスパーズの前線3枚が降りていくのについて行ってなんとか潰そうとしますが、さすがに個の質には差があり、ただただ釣り出される形になって所謂擬似カウンターによってスパーズの快速FWに裏をつかれてしまいます。


スパーズは上図のソンが流れたスペースにケインが降りてきた場面のように、試合を通して前3人のスペースを使い合う連携が非常によく取れていました。それが1点目、2点目ともによく表れていたので紹介します。


まずは1点目。リプレイ直後でわかりにくかったですが、ホイビュアがミドルサードでトロンスタットからボールを奪い、ソンが左からダイアゴナルランドゥーヒソンに釣られ、空いたスペースでモウラがホイビュアからのパスを受けてからシュートモウラのシュートはシューベルトがセーブして左へ搔き出すも、ポジションを戻す前にソンが再びシュートし、13分54秒スパーズの先制点が決まりました。


そして2点目。それまでもイマイチ取り所が定まっていない感じがあったフィテッセでしたが、特にここの場面は酷く、デイビスからダイアーへのパスに合わせて、トップのバイティンクがジョギングに毛が生えた程度の速度でダイアーに寄せていきます。ボールホルダーのダイアーには余裕があり、ハーフスペースへのパスコースを閉じなければいけないので、左のシャドーのグボホも低い位置で絞っています
さらにプレスのスイッチがはっきりしていないことによってボランチのトロンスタットホイビュアを捕まえられておらず、ダイアーからホイビュアにボールが出るも潰せずに、モウラに縦パスを通されてしまいました。
モウラがフリックでケインに繋ぎ、バズールはなんとか足を出してケインからボールを奪おうとしますが届かず。うまくキープしてタメとスペースを作ったケインから、モウラのスペースに走り込むランニングに対してスルーパス。GKと1対1どころか3対1くらいの状況だったモウラが落ち着いてゴールを決め、またしても相手の2ndラインを越えた後の前線の素早い加速と連携21分24秒にスパーズが追加点を獲得しました。


前線3枚の動きを見るに、誰かがランニングした後のスペースを使い合う意識はかなりあるように見えました。
スパーズにはWG、シャドータイプの選手が多く、さらに中盤にはバレッラのように守備で走り回り、スプリント力があり、カウンターでもどんどん裏へ抜けていってファイナルサードでの得点力も申し分ないというような選手はいません


そこでコンテは、ルカクのポストプレーから中盤の選手が前に出ていって攻撃に厚みを作るやり方ではなく、前線3枚が流動的に斜めのランニングをすることによってスペースを使い合い、さらにCBも上がってくることによって攻撃に厚みを持たせるやり方スパーズでは選択したのではないかと、僕は考えました。
そのCBの上がりが得点に繋がったのが27分47秒の3点目。


フィテッセは押し込まれて〔5-4-1〕のようになった状態。デイビスレギロンにボールを預けて上がっていきます。レギロンからフィテッセのボランチの前までボールを受けにきたソン、そしてソンへのパスでワンクッション入れている間に、デイビスが空けたダイアーの横のスペースに降りたホイビュアソンが繋ぎ、ホイビュアからダイアーへ。
プレスにいくときといかないときが明確になっていないフィテッセは、ここでボランチのベロが降りたホイビュアについていってしまいます。ベロが空けてしまった中盤のスペースでダイアーからソンがボールを受け、オーバーラップした大外のレギロンにパス。ソンに釣られたドゥーヒの裏へ走り込んだデイビスレギロンがワンタッチでパスを送り、デイビスのシュートミスなのかパスなのかよくわからないボールがケインに届き、最後は必死にカバーしようと飛び込んできたラスムッセンのオウンゴール


フィテッセはプレスには出るものの、取り所やスイッチをどこで入れるかが曖昧で、ボールホルダーに余裕を与えた状態でゆる〜い寄せ方で寄せることによって、CBからハーフスペースのシャドー2人やケインへのパスを簡単に通されてしまい、間延びしているので彼らが自由にプレーできるスペースを与えてしまう結果に。
スパーズのチェルシー戦前半の、ソンがカバーシャドウでジョルジーニョへのコースを消しながらチアゴ・シウバに寄せていくのをスイッチにプレスを開始したときのような守備ができていれば、あそこまでスパーズのCBから自分たちの2ndラインの裏にボールを通され、CBが晒された状態で擬似カウンターのような形になることもなかっただろうと思います。

チェルシー戦の記事はこちら↑


2-2. 追いつかないサポート。

フィテッセはボール保持時トロンスタットスパーズの1stラインの後ろでボールを受ける役割。もう片方のボランチのベロはビルドアップにはあまり関わらず、スパーズのライン間にポジショニングしてトロンスタットにボールが入ったときにボールを引き出します。


それに対しスパーズは、マンマーク程ではないもののケインがある程度トロンスタットを監視。左右のCBがボールを持ったときはモウラソンが寄せ、WBにボールが出たときはWBが縦スライドで対応。仮にCBからトロンスタットにボールが入っても縦パスは刺されないようにケインやシャドーの2人がすぐ寄せます。


フィテッセは、グボホベロが降りてこないことによってトロンスタットがCBからボールを引き出す役割を完全に1人でやることに。1人である上にケインを中心としたスパーズの前線の3人に警戒されているのでなかなかボールを受けることができず。1人だとCBが横パスを繋いでサイドを変えたときもどうしてもサポートに行くのが遅れホイビュアはトロンスタットを気にしなくてよくなるので、フィテッセのCBが無理にグボホに縦パスを入れたところをロメロエメルソンと一緒に囲んで奪うこともできていました。

画像5


スパーズに長い時間ボールを保持され、さらに自分たちの保持の時間でもあまりうまく振る舞うことができていなかったフィテッセですが、3失点目の前辺りから段々プレスがかからなくなり、スパーズに押し込まれる時間が増えてきます。


しかしそれが逆にスパーズの攻撃力をうまく削ぐ形に。それまでフィテッセのプレスを逆手に取る擬似カウンターの形で前線の3枚がスペースのある状態でプレーできていたスパーズでしたが、フィテッセのラインが下がり、陣形がコンパクトになったことによりモウラなどが自由にプレーできるスペースが減り、それまでほど簡単にチャンスを作ることができなくなりなした。


それを受けてモウラグボホの脇にボールを受けにくる場面が増えます。ボールを受けてフリーの状態で運ぶことができればよかったのですが、彼はそこから一気にDFライン裏へのスルーパスを選択することが多かったです。


31分19秒ヴィッテクのコーナーキックからラスムッセンがヘディングで1点を返します。
ここのコーナーキック、スパーズはストーンにモウラケインを置いたマンマークの守備で対応していました。
ゴールを決めたラスムッセンにはダイアーがマークについていたのですが、ダイアーは倒れたドゥーヒを跨がなければならず、ラスムッセンに剥がされてしまい、ゴールを決められてしまいました。
こういったエラーをなくすために、最近は多くのチームがゾーンゾーン+マンマークといったやり方を採用していると思うのですが、コンテスパーズではこれからどうなっていくのか、気になるところです。


さらに、自陣でのモウラのパスミスからグボホベロと渡り、シュートブロックに来たダイアーの股を抜く、ゴールへのパスという表現がぴったりなベロのシュートがサイドネットに吸い込まれ、38分7秒に点差は1点に。
モウラのパスミスも軽率ではありましたが、そこに至るまでにロメロスキップが一度大きく蹴り出して陣地回復をしたかったところ。
ただコンテのサッカーではああいった場面でも繋ぐことになるということかもしれないので、それならば狭いスペースでももう少し落ち着いてきちんとトラップして繋げるようにならなければなりませんし、あのエメルソンの太ももでの対空時間の長いロメロへのパスはやってはいけないプレーだと思います。


3. 2nd half 根性!根性!根性!

ハーフタイム、フィテッセグボホに代えてオペンダを投入。そして前半の中途半端なプレスとは全く変わった様子で、なんとか追いつこおうとロリスのところまで追いかける猛プレス
ロメロからエメルソンにボールが出たらオペンダ全力でプレスバックしてヴィッテクと挟んでボールを取ろうとしてくるし、バイティンクダイアーからロメロにボールを誘導して、ロメロに寄せながらスキップへのパスを牽制するために寄せる角度を微調整してくるわで前半とは運動量が全く違うフィテッセ


2ボランチをスパーズの2ボランチに当てる形もやめ、前線の3枚の距離を縮めてホイビュアやスキップにボールが出てもすぐに寄せて縦パスはささせないようにするスパーズと同じような仕様に。そしてボランチがスパーズのシャドーをみることに集中することによって、前半にCBから度々入れられていたシャドーの2人やケインへの縦パスを遮断。


フィテッセの勢いにスパーズが気圧されていると、なんと59分に2枚目のイエローカードでロメロ退場。前半の1枚目のイエローは少し厳しい気もしましたが、この2枚目は文句の言いようがなく、スパーズは数的不利の状態で30分間戦うことに......
とはなりませんでした。


ロメロの退場後、〔4-4-1〕にシステムを変更してケイントロンスタットはできるだけ使わせないように牽制しながら、4-4のブロックが根性でスライド。フィテッセ根性プレスが功を奏し、今度は数的不利の状況の中、スパーズ根性を見せる番に。


バズールのロングボールを使って、守備ブロックを大きく揺さぶりながらなんとかこじ開けようとするフィテッセでしたが、大外にはちゃんとSBがスライドして対応していたスパーズ。チーム全体で献身的に動き、72分ソンエンドンベレ73分モウラサンチェススキップウィンクスに代え、〔5-3-1〕に変更。左右のCBの運びに対してはIHが前に出て牽制する形に。


ずっと押し込まれる時間が続く中、献身的なシュートブロックやロリスのナイスセーブもあり、なんとか残り10分強、というところまで来たときです。


ドゥーヒケインを掴んで押し倒し、ロメロ同様2枚目のイエローカードで退場に。さらに84分、焦って前に出てくるフィテッセの裏を取って抜け出したエメルソンのシュートをPA外でGKのシューベルトが手で弾き、一発退場3人退場でしかもGKが退場ということで試合は一気にバカ試合に。


その後、ピッチ上に乱入してくる観客まで現れ、より一層バカ試合の様相を呈したこの一戦でしたが、結局ロ・チェルソに決定機があったりしたものの後半は得点は動かず、3-2スパーズの勝利で幕引きとなりました。


4. 試合総括、感想

前半30分で3点を決め、コンテサッカーの到来で観客を喜ばせたかと思ったらその後2失点に加え退場者まで出すところはさすがSpursyと言ったところですが、前半見せたあのサッカーは明らかにこの2年間程のスパーズがやってきたものとは違っていました。

・前から来る相手に対して後ろが引きつけ、空いたスペースにシャドーやトップが降りてきたところから始まる擬似カウンター

・前線3枚のスペースを使い合う流動的な動き

・WBにボールが出たときに明らかに今までよりも寄って並行のサポートを作るのが早くなったスキップ

CBからボランチへの遊びのパスで相手の前線3枚を収縮させて、左右のCBからハーフスペースのシャドーやケインに縦パスを入れやすくする作業

よかったポイントを簡単にまとめるとこんな感じ。



・後半プレッシャーを強めてきたフィテッセのようにものすごい運動量で迫ってくる相手やプレスのスイッチをきちんと決めて同数で嵌めて来る相手に対してどう対応するか(ボランチを1人CBの間に落とすミシャ式や、コンテがインテルでやっていたようにGKも含めたビルドアップなど)

・相手のプレスが速くなった時に、CB陣が恐れずにボールを隠さずにトラップし、縦パスを狙い続けることができるか

・リーグでは、フィテッセ相手程前線の質的優位でキープしたり簡単に剥がせたりしない中でCBの運びなどを使っていかに前線にスペースと時間を与えることができるか

今考えられるリーグ戦に向けての課題はこのくらい。


後ろが相手を引き出し、それによってできた時間とスペースを前線が享受することができるというのがコンテサッカーの利点の一つ。それがよくわかった良い初陣となりました。


5. おわりに

良くも悪くもCBがとても大事になってくるコンテの戦い方。
デイビス配球面ではすばらしい力を持っていることが改めてわかりましたが、それでもプレミアリーグで起用するにはアジリティフィジカルを含めた対人能力、単純な高さに不安があるのは事実。ここのポジションには冬の移籍市場でテコ入れが入る可能性が高いかなと見ています。


いよいよ始まったコンテスパーズ。ポチェッティーノの解任から早2年、苦しんだ期間の鬱憤を晴らすスパーズの逆襲が始まるとワクワクしています。


そんなコンテスパーズを自分なりに分析し、これからも毎試合レビューをお届けしようと思うので、よろしければこれからも試合のお供に『えつしの"football analysis"』を読んで楽しんでいただければ幸いです!


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。





この記事が良かったと思ったら、投げ銭お願いします。 全力でお礼にいきます!!!