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子どもたちが自分たちで居場所をデザインする

アトリア参宮橋主導でアトリエを作るというプロジェクトが始まりました。アトリエとはここでは広く創作のための共有の場所というイメージです。創作の活動は何を指しても構わないと考えています。場所が許せばダンスや音楽、あるいはプログラミングなどもあり得るでしょう。その第一弾としてアトリエを象徴するような「棚」を作るという連続ワークショップが始まりました。僕はプランニングとファシリテーションの一人として部分的に関わっています。

棚は自分たちが使う、自分たちのためのモノを収納するための道具として捉えています。故に場、そのものを象徴する存在だろうというわけです。棚を作るプロセスはざっとこんな感じ。

①どんな棚にするかを考える(イメージスケッチ)
②イメージから設計図を展開する
③設計図をもとに工房の方と打ち合わせ
④試作
⑤完成・設置

この流れは実際のものづくりのプロセスをトレースしています。また、それぞれのプロセスの中にも実際の現場で行われている工程を、子どもたちは行うように体験を設計しました。

実際のものづくりのプロセスをトレースし、子どもたちが体験することに価値があるかというとそうではないと思っています。「大人のプロセス=体験すべきプロセス」ではなく、実際に考えたモノが、形をなして、使われるためには必要なプロセスがあり、それを体験しているということがユニークな点だと思っています。

また、全てのプロセスは共同作業で進めます。自分のアイデアと他者のアイデアが一つになり形になっていくという体験は、「社会」というものの面白さとダイナミズムの縮図であるとも言えます。これは楽しいところ。

①どんな棚にするかを考える(イメージスケッチ)

7月11日(日)に一回目のワークショップが行われました。オフラインでの参加者が8名、オンラインでの参加者が4名程度。5歳〜10歳くらいの子どもたちです。今回のワークはこんな感じ。
■ アトリエ・棚を学ぶ
■ 自分のための棚を各自考える
■ それぞれ考えた棚から、みんなの棚をまとめる
■ 実寸大のスケッチに展開する

このワークショップで行われた流れは、いわば
リサーチ→アイデアスケッチ→アイデアの統合→実寸で検討

という感じで、ものづくりや表現の現場で日常的に行われているものです。リサーチの部分では小さな子どもも一緒に参加しているため、即席ですが紙芝居を作りました。紙芝居を通じて子どもの発想を自由にするアプローチを試みています。動物たちが暮らすアパートの物語で、それぞれに"らしい"棚を使っています。
・鼻の長い象は高いところにある棚
・ペンギンはキンキンに冷えた棚
・モグラはトンネルみたいな棚
みたいな感じ。おばけなんかも出たりしてみんなで笑ったりもして。

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子どもたちの考える棚はアトリエでやりたいことが凝縮されています。「好きなこと」に没頭するための棚とも言える。たくさんの昆虫を細かく分けた扉付きの棚で育てたい子どもや、電車(の模型?)をしまうために細長い棚にする子ども、あるいはお花の形の棚にしようというアプローチの子どももいます。

できた各自のスケッチはみんなで観ます。そしてみんなに対して自分の棚を説明してもらいました。いわゆるプレゼンテーションです。子どものプレゼンテーションって自分の好きなところ、こだわったところだけをしゃべることが多いので大人にとっても学びがあります。パワーポイント使ってどうでもいいことばかり並べてない?

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蝶々の形をした棚を説明してくれています。※顔は隠してあります。

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スケッチができたところで休憩。おやつを食べます。この時間がこの日唯一の静かな時間だったと思われる。おやつが終わったらみんなのアイデアを統合して実寸の大きなスケッチに挑戦です。

アイデアの統合は参加した子どもたちのアイデアを少しづつ抽出し、合わせて一つの棚にしました。理想的にはみんなで話し合って、どうするべきかを子どもたち自ら導いた方がよかったかもしれません。ここはちょっと課題。

とはいえ実寸の紙に向かうと子どもたちの発想はまた広がるようで、元のアイデアを超えるスケッチを残してくれる子どもも表れます。部分的に描いたものを切り抜いてコラージュすることで一つの形をデザインしていきます。

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出来上がった実寸のスケッチを、設置予定の場所に貼ったところでこの日は終了です。2時間以上の長丁場でしたが、最後までみんなやり遂げることができました。アトリアには子どもが遊ぶためのスペースが併設されています。子どもたちは集中が切れるとそこで遊んでは、また棚の創作に戻るというペースで活動していました。遊ぶことを拒まなかったことは良かったのかもしれません。集中できる環境を作ることも一つですが、そもそも集中なんてしなくても良いんです。

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1ヶ月かけてこの棚のスケッチが実際に使うことができるものになります。実物が立ち上がる過程というのは大人だって楽しいものです。子どもたちはどんな感覚を得るのだろう?完成が楽しみです。

やっている子どもたちはもしかしたら、そこまでの自覚はなく楽しくお絵描きをしているような感覚かもしれません。しかし、共同制作すること、考えたものを共有すること、自分の考えと他者の考えを統合すること、などたくさんの経験がこのプロジェクトには詰まっています。

子どもたちの成長にとって大切なのは、何かのためになるからやる、ということではなく、やった結果が未来につながっているということなのでしょう。たくさんのことを一緒に楽しんで行けたらいいなと思います。

実物になるのは8月末の予定。完成したら観に来てください。

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