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実写化について

 某実写ドラマの件で、思うところがあり筆を取りました。
 先に断言しますが、私は脚本家の方を擁護しようとは思いません。全くこれっぽっちも同情出来ないですし、亡くなられたA先生へ心からのお悔みを申し上げます。

 まず率直に実写化はもうやめろと思う。
 ドラマ好きと漫画好きは似ているようで違っていて、これまで実写ドラマで私が見ていて納得出来たものがありません。映画ならともかく予算の決められているドラマ内で納得行く出来だった、見ごたえがあったと言えるのは『三匹のおっさん』か『半沢直樹』ぐらいでしょうか。このふたつに共通するのは恋愛要素が薄い(薄くしても大筋に問題ない)、という部分です。
 恋愛要素が薄いと成功しやすい最大の理由は、大御所俳優・女優を起用するからです。若手のビジュアル重視な俳優・女優を起用せず、演技力のストレート勝負に持ち込める点。
 そして恋愛要素でキャーキャーいう女子たちの視聴率を無視するとどうなるか、そう。

 テレビドラマ最盛期を過ごして来た、現在七十代周辺までを視聴者として見込める、最高の利点があります。現在七十代周辺でテレビドラマが好きな方々はこまめにドラマチェックします。SNSを使用しない分、ダイレクトでリアタイします。
 こういう人たちの好みを踏まえて脚本を書くべきだった。
 SNS最盛期だからとそちらにかまけてしまい、実写ドラマはコケてばかりいる。現在七十代の酸いも甘いも知り尽くした方々は、若い男女の恋愛ドラマにそこまで興味持ちません

 なのに何故か若手俳優・女優を起用したがる。ままあそこら辺はギャラの関係やテレビ局の何かしらのあれこれがあるんでしょう、ですが原作ファンからしたらそんなの知ったこっちゃありません。お前らの事情で原作をかき回すなって考えにしかなりません。言い訳は要らん。

 私が初めて実写ドラマに触れたのは『スケバン刑事』です。あいにくと初代斉藤由貴さんのは記憶にないのですが、二代目スケバン刑事は記憶に残っています。おまんら許さんぜよ!の決め台詞格好よかった。
 ですがその後に続いた三姉妹編、正直に「何故??」の嵐でした。事件らしい事件の記憶はなく、三姉妹はくのいちの家系。なんで?と疑問を抱きながらも、好きな漫画が実写化しているんだから有難く見ないといけない……と堪えていたのは今でも憶えています。

 しかしながら原作者の和田慎二先生が生前裏話として残してくださった中に、あの三姉妹編は和田慎二先生の付けた設定ではなかったと描かれていました。寧ろ和田慎二先生すら「なんでだ!」とお怒りだったのを知り、ああよかった、私が好きな『スケバン刑事・麻宮サキ』は学生で、学生であり不良であるからこそ悪を憎む女性で、悪を倒せるのは悪を知る者だけ、権力に染まるのではなく身体ひとつで我を張って、『普通の生活をしていたら普通の女性』だった人で、その認識は間違いではなかったのだと安堵しました。
 長年和田慎二先生が読者に伝えてこられたものを、私は間違いなく受け取っていたのだと安堵できました。

 今回の実写ドラマで私が真っ先に思い返したのは和田慎二先生です。あの和田慎二先生ですら、連載が終了し長い年月経ってから読者の我々に教えてくださったわけですから、現時点現役で連載を続けていらっしゃる漫画家さんの苦悩たるや……。

 かつての私のように、「好きな漫画の実写ドラマだし……」と我慢して見る必要はありません。なんなら原作者にストレスをかけ続ける未来にも繋がる。我々視聴者が我慢して見続けた結果、和田慎二先生は意に沿わぬ設定を『スケバン・サキ』に付けられただけでなく、続編の話までテレビ局に持ち出されたそうです。
 しかもこれ、昔だと作者に「なんでこんなキャスティングしたんだ!」とかよく判らないクレーム入れるファンがいました。知らねえよマジでそんなんテレビ局に言えやあ!!って思った原作者、大勢いらっしゃるでしょう。

 実写を有難がる必要はない。
 何故なら漫画ファンと実写ファンは別物。実写ファンは俳優・女優のファンだから見ることのが多い。
 実写ファンは内容云々どうでもいいんだなと思うことが多々あります。その最たるものが私は進撃の映画だと思いました。人類最強のゴロツキは出ないわ主人公の激重感情ストーカーヒロインが敵に回るわで、「進撃とは……?」な改変であるにも関わらず、俳優・女優ファンの方々は「大成功だった」と評価してらしたので、ああ、違う世界線の方々なのだなと遠い目をしたものです。

 それ設定の借りパクなんじゃねえの?とド直球に言わせて頂きますね。だってオリジナルのシナリオ書きたいならオリジナルでやれよって話ですので。日曜劇場に頭下げて来な
 漫画協会の里中先生が仰ってましたが、実写化は『二次創作』です。ただドラマや映画はそれが『公』とされてしまうので、作者クレジットや作者の意向を無視してはならないと思うんですよ。原作に対しそれ以上に大規模となる映画や公共の電波を使用したテレビドラマ、これらは原作者が原作者ではなく、脚本家が原作者に成り代わる可能性がありますので、その成り代わりやなりすましを許してはならないと個人的に強く感じます。

 あと実写ドラマで単行本の売上伸びるとかはない。
 そもそも評判だから実写に選ばれるのであって、実写ファンがそこから漫画に手を出すほうが珍しい。漫画好きは漫画好きとの繋がりのが深いから、実写に選ばれる時点で評判は既に高いんですよ。気になるけどまだ読んでなかったって人は手に取るかも知れませんが、テレビドラマ化!や映画化!で長期連載している漫画に手を出す実写ファンはまずいないと考えていいでしょう。
 だって考えろよ、テレビという公共の電波で無料で見れたものを金払って買うか?自分の推しの俳優・女優はそこにおらんのに。それでも買う!って人は改変された実写が好きなんだぞ?
 原作読んで「コレジャナイ」になる可能性のがクソ高いだろ。

 だから実写化してるから有難がって我慢して見る必要はないんです。

 ですが中には実写映画で大成功した作品もあります。
 それとの大きな違いは原作へのリスペクト。もうこの一言に尽きる。変にオリジナリティを出そうとせず、原作のトレースをしたい、原作に忠実なものを『現実世界』に作り上げたい。そうした圧倒的な我欲が却って原作ファンと俳優・女優ファンを大喜びさせます。

 衣装だけ寄せるのならそれはコスプレで、そしてコスプレイヤーならもっと気合い入れて衣装作る方々を私は知っています。一個人に過ぎないコスプレイヤーさんでさえ、おのれの人生の履歴と言える技術の粋を凝らし衣装を作るというのに、それ以上の予算を組めるドラマがなにゆえ手抜きのコスプレドラマを作るのでしょう。求めてねえからそんなもん。

 話はかなり戻りますが、テレビドラマ視聴者のターゲットがおかしいんですよ。若いタレントに夢中になり、若いタレントに金を落とすのは確かに若い方々です。ですが『量』で言えば、テレビドラマを視聴するのは現在七十代~五十代、四十代が主。これは政治にも言えることですが、どの層が最も人数が多いのかを加味した上で練るのが戦略です。
 なのにどうして無意味な恋愛要素やお色気シーンを入れようとするんですかね?
 枯れ始めた年代(私も)に恋愛要素やお色気シーン山盛りのドラマが受けると思います?「ほーん(鼻ほじ)」で次から見ませんよ。この年代が求めるのは日々のフラストレーションを打開する圧倒的カタルシス。自分では行えない勧善懲悪。溜めて溜めて溜めて募った鬱屈を晴らせる爽快感。
 漫画ならこれらを自分のペースで楽しめますが、ドラマは違うでしょうよ。「次週、深まる二人の絆──……!」とかされても「え、ぁはい……」でしかない。そんな元気ねえんだ、我々は。下手すりゃ連載漫画は完結してからまとめ買いして一気読みとかするぞ。

 あとね、若い世代はネッフリで見るから。
 テレビドラマとかそういう古代遺物は七十代周辺に任せておきなよ。そうすりゃタゲ取りやすいでしょ。
 極論『西部警察・令和』みたいなのシナリオ書いたら視聴率すごい取れると思うよ。あの当時のキャストの子供たちは今、みたいなね。警察官になっててもいい、コンビニ店員でもいい。多分最後の西部警察から二十年ぐらい経つよね?
 ならその子世代の話をシナリオで書いたらきっと楽しい。親の背を追うでもいい、親の二の舞にならぬと反抗してるでもいい。まだ学生のその子供たちが、学生でありながら事件を解決してるなんて素敵じゃない。視聴者も親世代子世代で楽しめるんじゃないかな。

 どうせ『二次創作』するなら同門のテレビドラマからしてくださいよ。
 これだけ素材がたくさんあるのに、何故漫画原作を実写しようとするの?これまで自分の局でやって来たドラマ見直してみてよ。きっといくらでもあるよ、素材が。

 テレビ局の思惑に漫画業界を巻き込まないでください。
 オリジナルシナリオやりたいなら日曜劇場に頭下げてください。
 正直もうそれしかないと思うぐらい、今回の事件は重い重いものです。

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