槐安の夢

“夢見ないことを
夢に見る。睡の時間に
目覚め
のしかかる沈黙の間に
睡る。夏の約束を
守る それを破る
ことによって。”
-P・オースター『説-かなたをめざして』-

私はこの詩がとても好きだ。どこか儚げで憂鬱で危うい感じが。以前、P・オースターの「ムーン・パレス」を読了した。教授に提出するレポートにも書いたが、今作は主人公の自分探しの物語であると思う。モラトリアムという中で自分とは「何者」なのかを探す旅。家庭環境が複雑な主人公だが、そうではない私もとても共感できる部分があると感心してしまった。やはり、天才は天才でしかなくて、それと対極のところに居る私は何処にでもいるありふれた学生に過ぎないのではないかと思う。

そんな私にも「夢」がある。とても小さな夢は「毎日3食を食べられる生活をすること」
そして最近の夢は「高円寺にある文芸カフェに行くこと」である。自分の読みたい本を読んで、有名な作家さんの作品などは一切読まない私でも、【本】と言われると惹かれるものがあるし、実際に就職先も本に触れているところである。一生本に囲まれて生活したい。できれば、快晴・気温は20度・低湿度という環境の中で独りソファーに寝そべりながら読書をするという生活を送っていたい。

しかし、夢は儚いものだ。以前誰かが「夢は人が触れてしまうから《儚》と書くんです。壊れ易いので、天地無用で下積厳禁ですよ」と言っていた。私は自分の中で一番大きな夢には決して触れてはいけないと思っている。夢は私に生きる希望を与えてくれるものであって、決して実現させてはいけない。夢だけではない、自分の「一番」のものには、美しいものには触れてはいけないのだと、そう思う。

#独り言 #エッセイ #夢 #ポールオースター #モラトリアム

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