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UADの1176コンプをレビュー。違いについて長々語ります。

 UADの1176は非常に出来が良いと言われていますが、結構「違いがわからない!俺はクソ耳なんじゃないか!?」と思っている方もいることでしょう。

 まぁそれでもガッツリかけたら方向性がわかるから一度やってみてほしいんですが、それでも「俺の思った印象と他人が思う印象が同じかわからない!」と悩むことでしょう。
 クオリアの問題かよ。

 そんな方のために私の所見を書いておきます。
 私が正しいわけではありませんが、これくらいの認識でもヘラヘラ作曲している奴が一人いるので世のDTMer諸兄はご安心ください。

名シーンを挿入したい欲が止まらない(めだかボックス)

①1176LN Rev E(基準になるイイ音)

Rev E。Revision Eで5代目

 製造時期的には5代目で、後述するRev Aよりも新しいのでこの順番にするのは変ですが、しかし音は『基準』という感じです。

 俗にいう「1176らしさ」というのは「高域がチリチリと歪み、かっこいいぶっ潰れ方をする」というイメージですが、そういう意味では1176っぽくない音です。

 思ったよりもジェントルな、同じ1176の中では最も「らしさ」が薄く、クリーンで最も前に張り付くような音(超重要)です。

 ボーカルに使うにはうってつけで、声がグイグイ前に出てクリーンで真ん中の音を邪魔しないで前に位置してくれますね。
「1176をクリーンと呼ぶのはどうかなぁ~」と思う気持ちもあるけど、嫌味にならない味を持ちつつかっこいい素晴らしいコンプですね。

 ちなみにアタック・リリースが速いだけあって強く掛けると低域も少し減るコンプですが…それがむしろボーカルの息の低域とかを均してくれて良い塩梅だったりします。


②1176 RevA(一番歪む)

Rev A Revision A、つまり初代

 俗に言う「高域がチリチリと歪み、かっこいいぶっ潰れ方をする」というのはこちらのイメージ。
 ボーカルに掛けるのもいいんですが、中高域がパツッとした音なので大きい音量でアウトプットすると印象が変わります。

 また、ボーカルでちょうどいい位置を探ろうとするとがっつり潰したところに『良きところ』があり、コンプレッション量が増えるのでジャズボーカルとか声楽には合いにくい感じ(ちょこっとかけるくらいならRev Eやオプトコンプでいいし…)。

 色が明確なので、スネアに掛けて「バシーッ」としたカリカリの感じ(なんだそれ)を出したり、キックの低域が邪魔している時ちょっと深く掛けて「音量を抑えつつもサチュらせておく」みたいな使い方ができますね。

 Rev Eと比べて同じ設定でもコンプレッション量が多く、低域が減りやすい特徴もあり、ボーカルなら録りの段階でマイキングで変えてRev Eを使う方が最終的な音を考えやすいかな…?
 もちろん、「俺は録り音をガツガツ変えていく!」という形で使うのもありです。ロックボーカルにも合うし。

 また、Lilith Abi StudioさんがRev Aでのサチュレーション的な使い方を紹介していて、とても有用ですのでリンクしておきます。


③1176 AE(唯一Ratio2:1がある)

1176 AE。Anniversary Editionの略。レシオ2:1がある。

 一番クセがない音。
 逆に言えばクセがなくて「このコンプを使ってどんな音にしたいか?」が希薄になるところもあって、「失敗はしないから」という理由でインサートされることが多い気がする。
(もっとも、そんな理由でインサートされるコンプが良い働きをすることはない。すべての道具は目的ありきだもんで)

 しかも失敗しにくい要因としてもレシオ2:1があることもあり、わずかに掛けることも可能。
 これも「失敗しにくいコンプ」に起因しているが、やっぱり私は「失敗してもいいから堂々と掛けんかい」と思う方なので、良さがピンと来ない。

 Rev Aよりも色が少ないので、「似たコンプ探せばUADじゃなくてもいいんじゃね」とも思うが、1176の操作感に慣れているのでクリーンにボーカルを近づけたいなら楽でよく使ってしまう。
 ボーカルを前に出す力そのものはあるし、良いコンプだけど、使いどころは曖昧。

その他-UAD以外

①IKMULTIMEDIA T-Racks Black 76

昔はIKとWavesさえ買っておけばOKみたいなところあったよね

 低~中域の歪みが多い。
 Rev Aの中高域がチリチリする感じもあるけど、低域が減らないせいか「低域が多い」って印象が大きい。
 1176の中では素直にコンプレッションしてくれるけど、音は下がどっしりする。

②Arturia FET-76

いつ買ったっけ?

 不思議~。
「前に張り付く感じ」を独自解釈した結果、浮遊感のあるコンプレッション感が生まれた、って感じ。
 1176系…と言われればそうかもしれないけど、別のコンプと言われればそんな感じ。DBX160っぽさもあるというか…。
 前には張り付かないけど、コーラスとかをこれで均すと後ろに行ってくれそう。唯一無二だけど忘れるだろうな。

③Overloud Gem Comp76

 一番UADのRev Eっぽい音かも。
 実機よりも針がキビキビ動いてくれるので、アタックの設定に困らなくていいすね。
(アタックとリリースがリズムに合わせてメーター動くくらいに設定しやすい)

 私がもしUAD使えない環境ならこれを使うけど、UIが違う(アウトプットが右側にある)のでちょっと手が止まるのが残念。
 こういうのってほぼ手癖で覚えてるので、この手が止まる瞬間がもったいないですね。

終わりに

 1176は魅力があり、Klark Teknikのコピー品を持っています。

 ただ、掛け録りになると結構「一旦クリーンに録っておきたい」と思うこともあり、ゆるくかけられて音がしっかりするオプトコンプを購入したこともあって今は使っていません。

 私にとって1176は「音を前に出すコンプ」であって、掛け録りで使うのはまだまだ難しいなぁ、と思っています。
 ミックスで使おうと思うんですけどアウトボードを繋いでRECって手が止まって難しいですよねぇ(´ω`)

 終わります。

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