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601号室の陽だまり。

大好きで大切な同期の辞職が発表されたのは、4日前のこと。

突然のことに衝撃を受けたけれど、さほど驚いていない自分がいた。それはもともとこんな技術職の業界に身を置きながら、同期の半分は文系だったからかもしれない。

半分が女性。半分が文系。多くが未経験者。

その異端さは、私達とこの会社のあいだになんとなく消えない違和感を生み、そして同期の絆を想像以上に強固なものにした。


・・・


彼女は、陽だまりのような人だと思う。

元気いっぱいな時だけでなく、少し落ち込んでいる時にも、会いたくなるような存在。口にする言葉はいつも底抜けに優しくて、こころがほっとあたたかくなる。同期も上司も、みんな彼女のことが大好きだ。


新しい道へ踏み出すと決めたときの気持ちは、どんなものだったろう。

いつも飄々としている彼女だから、さらっと決断したように見えるけれど、きっと自分の中でたくさん考えて出した答えなのだろうと思う。ふと、BUMP OF CHICKENのbeautiful gliderの歌詞を思い出した。


もう答え出ているんでしょう どんな異論もあなたには届かない
もう誰の言う事でも 予想つくぐらい長い間 悩んだんだもんね


陽だまりのような彼女が、その優しいこころを曇らせて人知れず悩んだ夜が、もしかしたらあったのかもしれない。

だけど先日会った彼女は、凛として前を向いていた。とてもかっこよかった。


それならもう、笑って送り出してあげるしかないよね。寂しさは、大切な人を現状に留まらせておく理由にはならない。


たった一人で、大きな決断を下した彼女の勇気を称えて。それから、これからの彼女の人生が陽だまりのようにあたたかく、優しさに包まれたものであることを祈って、ワイングラスをかざした。


「ハリウッドで女優デビューしたらLAまで会いに行くね」なんてかけた言葉は、半分冗談で、半分本気だ。
彼女がこれからどんな道に進むのかはまだわからないけれど、なんだってできるし、どこへだって行けるって私は信じてる。そしてどこへ行ったとしても、また私はこうして彼女に会いに行って、ワイングラスで乾杯するんだ。



陽だまりのランドスケープ 溜め込んだ涙はいっそ置いて行きなよ


#日記 #tanka #現代短歌 #ノンフィクション
#あの夏に乾杯

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