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止まない空腹と親子丼のおはなし

2020年7月21日(火) 曇り

月に一度、お腹が空いてたまらない時期がやってくる。
今月もそれは当たり前にやってきて、私は昨日から止まない空腹とたたかっている。

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20時過ぎの東京駅。ひとりで夜ごはんを食べる店を探すのは、なかなか難しい。昼間は定食屋だった店が、夜になると居酒屋に顔を変えてしまうから。あるいはこちらが本来の顔なのか。いずれにせよ、お酒を飲まずにひとりで入れるお店を探してなんとかいうストリートを端まで歩いた。

なんとなく親子丼が食べたい気分だなあと思っていたところ、偶然見つけたので迷わず入る。さすが、欲しいものは何だって手に入る街・トウキョウ。「お待ち合わせですか?」と尋ねる店員に臆せず「1人です」と告げると、4人席に案内された。昔からおひとりさまに抵抗がない。

運ばれてきた親子丼をスプーンで口に運びながら、これまでに親子丼を食べたさまざまなシーンを思い出していた。


親子丼はどれもやさしくて、あまい。卵はふわふわのとろとろで、お肉にうまみが染み込んでいる。おいしいと感動し合える相手がいた日のこと、いなかった日のこと、いなくなった日のこと。どんなときだって、たとえ食欲がなくたって、親子丼は容易く喉を通って胃袋を満たすのだった。スプーンで食べるというのも、喉を通りやすい原因のひとつかもしれない。風邪をひいたときに食べるものは、スプーンで食べるものが多いように思う。


満たされた気持ちで店を出る。満腹感と幸福感は、類語にあたるかもしれない。頼むから、この満腹感が明日まで続いてくれよ。最近やたらと空腹を訴えるお腹にそう念じ、やってきた東海道線に身体を溶け込ませた。


#日記 #エッセイ #コラム #空腹 #ご飯
#親子丼

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