令和元年度 予備試験論文 民法 設問1 合格答案になるポイント

注意     とりあえず無料noteとして掲載しますが、今後加筆修正した上で有料note(100円の予定)に変更する可能性があります。また、内容は適宜加筆修正します。

7月末までに配信予定の有料動画では、このポイントに沿った解説を行います。


令和元年度 予備試験論文 民法 設問1のポイント

大事なポイントは何か?
大事なのは論点ではない。論証を暗記しても本問ではまったくといって良いほど役に立たない。
請求が認められるかについて、一つ一つ、法的な説明ができているかが大事。
→条文に沿った説明や判例を踏まえた説明ができているかが大事

1   Dの請求の内容を法律的に説明していること

所有権に基づく返還請求権としての建物収去土地明渡請求

この請求が認められるためには①Dが本件土地を所有していることと、②Cが本件土地を占有していることが認められる必要がある。
②の要件を満たすことは明らかなので、①Dが本件土地を所有しているか否かが問題になる。


2    Dの所有権取得を正しく説明していること

(1) AからBへの相続による包括承継(896条)

(2) BのDに対する抵当権の設定が有効であること
所有権者でなければ有効に抵当権を設定することはできない。
もしBが所有権者でなければ抵当権は無効になる。この点をどう説明するか。

(3) 抵当権の実行によって所有権を取得していること


3   Cの主張の法的構成を正しく示していること

問題文から読み取れるCの主張は二つ
①自らが本件土地の所有権者であるとの主張と、②所有権者ではないとしても本件土地に対して法律上の占有権原を有しているとの主張の2つである。

(1)Aから本件土地を贈与されたことによって所有権を取得したとの主張(176条)
CはDに対してこの主張をすることができるか。
これは対抗問題なので177条の問題になる。
177条の説明をすることが大事なポイントになる。

177条の第三者の意義を示して、あてはめているか。

(2)Cに本件土地の適法な占有権原があるとの主張

Cは本件土地について賃貸借契約や使用貸借契約などを締結していないので、契約に基づく占有権原はない。

そのため、法律上の占有権原が存在しないか、具体的には法定地上権(388条)が成立しないかが問題になる。

法定地上権の成立要件を満たすか検討する必要がある。
① 土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属すること
② その土地又は建物に抵当権が設定されたこと
③ その抵当権の実行によって土地と建物の所有者が異なる同一人ではなくなったこと
これらの要件を満たすかを説明する必要がある。
これらの要件を満たせば、「その建物について、地上権が設定されたものとみな」されるので、Cは適法な占有権原を有することになる。

合否のポイントとしてはこれだけ書ければ間違いなく上位合格答案になると思いますが、
Dが対抗力ある地上権があるとして担保価値を算定したといった問題文の事実を使えばさらに点は伸びます。
法定地上権の構成でこの事実を使うなら信義則違反の検討をすることになりますが、現実にそこまで論じている時間も紙面もないと思います。


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