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ベーシックサービスとベーシックインカムの潜在意識の違い

昨日の話とも若干重なるところがあるのですが、一応は全然別の話。

江草は現時点ではベーシックインカム派なのですが、同様の雰囲気はまといつつもちょっと違う対抗馬としてベーシックサービスというものも世の中では提唱されています。

ベーシックインカムは万人に一定の金銭を支給する制度で、ベーシックサービスは万人に基本的なサービスを無償で支給する制度です。ここでいうサービスが何を指しているかはもしかすると提唱者によってバラつきはあると思うんですが、誰にとっても必需品とされる医療・保育・介護・教育・水道・電気などが想定されてる感じです。

今回は別にどちらがいいかという是非を論じようというわけではなく(今日はヘトヘトで難しいことを考えるキャパシティがないので)、この間ふと思いついた、ただの印象論を披露しようと思ってます。つまり「それってあなたの感想ですよね」的な話をします。


ベーシックインカムとベーシックサービスと、万人に支給するという点では共通点はあるものの、配られる物が金かサービスかという違いがあります。言い換えれば、金銭支給か現物支給かと言う違いですね。

このどちらを好むかが分かれる理由はなんだろうと、江草はふと思ったんですね。

それで思いついた仮説が、もしかして重視してるジェンダーロールの違いが背景にあるのではないかという説です。

いわゆる旧来的な家族観では、男性(夫)が仕事で稼いで来てお金を家庭に入れて、女性(妻)が家事育児介護を担って家庭を回していたわけです。
これは、男性目線で言えば基本的なサービスが自然に支給されてた状態です。基本的なサービスが支給されてたからこそ仕事をしてお金を稼ぐことに専念できたと。
一方これは、女性目線で言えば基本的な金銭が自然に支給されてた状態です。生活を賄える基本的な金銭が支給されてたからこそ家で家事やケアを切り盛りすることに専念できたと。

この対照が何だかベーシックサービスとベーシックインカムの違いに一致してる感触があるんですね。(ただし教育に関しては整理が難しいんですが、今回は固いことを言わずこの点は置いておきましょう)

だから、万人に何かを支給することの必要性はどちらの立場も同じでありながら、その具体的な内容が分かれるのは、このどちらの役割を重視してるかに潜在的には由来してるんじゃないかなと思ったのです。

つまり、ベーシックサービスを主張する人は「基本的なサービスを受けられないかもしれない」などという心配なく、思う存分仕事をしてお金を稼ぎなさいと考えている(旧来型)男性ジェンダーロール目線で、ベーシックインカムを主張する人は「基本的な生活費が足りなくなるかもしれない」などという心配なく、思う存分、家事や育児などの家のことをやりなさいという(旧来型)女性ジェンダーロール目線というわけです。

ざっくりまとめると、ベーシックサービス派は仕事(公的活動)重視派で、ベーシックインカム派は家事(私的活動)重視派という整理です。

こうした「この社会においてどちらのジェンダーロールが思う存分出来てないのか」の潜在意識のちょっとした差が、推し進める支給物の違いに立ち現れてるのではないかと。

江草は昨日の記事やあるいは書籍『タイムバインド』の感想文などでも明らかなように「世の中で仕事が家庭に文化的勝利し続けていること」を問題視してる立場ですから、ベーシックインカム派であることとも整合的になるわけですね。

先ほど述べたようにこれはあくまで「個人の感想」に過ぎないものですから、ここでどちらがいいとかを議論してるわけではないのですが、意外となかなか面白い整理かもしれないないなあと思って紹介してみました。

もっとも、仕事重視派、家事重視派と言っても、(繰り返しになりますが)どちらも万人に何かしら支給することが必要と考えてる点では共通しているので、社会の現状に対する問題意識として両者にものすごく大きな隔たりがあるというわけではないだろうと考えてることは最後に強調しておきます。


なお、ベーシックサービスについてはこの井手英策氏という方が盛んに推されてますので、その思想を学びたい方は読んでみてはいかがでしょうか。

後者の本はめっちゃ最近出たばかりのようです(江草も今検索して知りました)。読んでみようかな。

前者の本は江草も以前読みましたが、ベーシックインカム派としては色々ツッコミたくなったというのが正直な感想です。実際、読んだ後にツッコミを入れる書評を書き始めてたのですが、気が昂ぶって長文になりそうすぎた結果、逆に手が止まって放置しっぱなしという恥ずかしながら悲しい顛末となっています(もう放置し過ぎて細かい内容を忘れてしまったのでお蔵入り必至です)。でも、ベーシックサービスの思想を知るにはちょうどよく読みやすい本だったと思いますので、ご参考まで。

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