見出し画像

「効果があるから」だけではただちに「やるべき」とは言えない

地域枠関連の記事を読んでため息をついています。

地域枠制度はより一層推進されていくことが既定路線のようです。

読んでて色々と文句はあるものの一番気持ち悪いのは「地域枠は地元定着率が高いというデータがあるから」としてさらなる推進の根拠とする雰囲気です。

医師の地域偏在解消のために「地域枠」を設け、地元に定着する医師を育成していくことが極めて重要である

https://gemmed.ghc-j.com/?p=49449

「地元への定着率が高い」ことがこれまでのデータで明らかになっている「地域枠」について、次のような取り組みを進めてはどうかとの論点が厚生労働省から示されました。

https://gemmed.ghc-j.com/?p=49449


当然ながら何事も「効果があるから」だけでは「やるべき」とは言えません。

とある薬に全生存期間を伸ばす効果があったからといって、それだけでただちに「投与すべき」とはなりませんよね。その効果以上に大きなデメリットがあるかもしれませんから。

確かに「効果がない」なら論外です。
しかしたとえ「効果がある」としても、「効果がある」というメリットだけでなく付随するデメリットも勘案して、「メリットがデメリットを上回っている」すなわち「正味の便益がプラスである」と言える場合でなければ、それを推す根拠としては弱いでしょう。


翻って、地域枠制度はずっと人権問題が指摘されています(江草もあーじゃこーじゃnoteで書いてます)。




にもかかわらず、デメリットがどうこうという話は完全スルーで、「地域枠は効果があるから重要。どんどん推進しよう」みたいな一面的な議論を、がっつり公的な意義を持つ厚労省肝入りのワーキンググループで大真面目にされてるとなると、さすがにがっくりしました。


だいたいその肝心の「地域枠の効果」だって、どうも臨床研修や臨床研修直後に地域に残ったことを「定着」とみなしているようなんですよね。

別の回の資料ですが

そりゃ臨床研修なり専門研修なりの若手期間に地域に残るように縛る制度が「地域枠」なのですから、その期間は「定着」する傾向があるに決まってるでしょう。

「そこにいてくださいという契約を交わしたら……なんと!そこにいてくれたんです!WOW!!地域枠の効果スゴイ!!」と言ってるようなもので、ほとんど循環論法です。

せめて、地域枠制度で約束していた期間を越えてもなおその地域に残ってくれることを「定着」と言うべきように思います。(パッと見ただけでは分からなかっただけで実はそういう定義なのでしょうか)


なんというか、こういう適当にでも「地域枠に効果がある」と言いたかっただけの感じがすごく残念なんですよね。
あたかも推進することを先に決めていて、後付で正当化の理由を探してきたような。


もっと色々書きたかったけど、眠くて頭が働かないのでこのへんで。

江草の発信を応援してくださる方、よろしければサポートをお願いします。なんなら江草以外の人に対してでもいいです。今後の社会は直接的な見返り抜きに個々の活動を支援するパトロン型投資が重要になる時代になると思っています。皆で活動をサポートし合う文化を築いていきましょう。