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隣のアイツは何してる?~ラボインタビュー vol.13 Edu Knot Lab

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東京学芸大学Mistletoeが取り組む新たな教育の試み、Explayground(エクスプレイグラウンド)。
Explaygroundには、子どもたちや学芸大を始めとした各大学の学生、教職員、地域住民などが参加し、今後、企業や行政などとの共同研究の核となっていく「ラボ」が多く存在します。
しかしラボにおける活動も、コロナ禍による影響を大きく受け、大幅に制限されたり活動自体を休止したりしています。
でも、何事にも学びはある。
第13回は、Edu Knot Labの南浦先生(↑の写真左)に話を伺いました。

▼まずは最初に、南浦先生が現在、大学で教えられていることを教えてください。

教育学の中では少し変わった教育の分野になるのかなとも思いますが、日本語教育という分野を担当しています。
学芸大では国語教室という組織に属するのですが、日本で生まれ日本で育っている子どもたちに対して、身近にある日本語をもっと洗練させたり、考える力につなげたりする形で学ぶのが国語だとすると、日本語教育は、海外から来た外国人に、母国語じゃない第二言語として教える教育分野になります。
通常、日本語教育は、日本語学校や留学生センターなどに属することがほとんどですが、現在は国語教室という組織のなかでやっています。
何故かというと、最近、学校には日本語以外で育ってきた子どもたちも多く見かけるようになってきました。
そうした子どもたちに対して、躊躇なく教育活動ができる先生を育成するための1つの分野として日本語教育があります。その育成をメインでやっています。

▼うちの息子も先生から依頼を受け、友だちの日本語サポートをしています。先生がその分野を専攻したきっかけは、何かそのような実体験があったのでしょうか。

そのような体験は全くなかったです(笑)
きっかけは、25歳ごろに応募した講師の仕事ですね。
私が学生だった2000年代初めは教師の採用枠はとても少なく、なかなか先生になれない時代で私もその一人でした。そんなことから卒業後はいろんな縁で日本語教師をする仕事を得て、タイで2年ぐらい過ごしました。
その後帰国し、改めて教師を目指したのですが、すぐに採用試験があるわけではありません。そこで食いつなぐために、大学が滋賀県にあったので、滋賀県教育委員会に講師の仕事のコース登録を出しました。その際、どの免許を持っているかを記載する指導可能教科という項目に「その他」という枠があり、この前まで日本語を教えていたので、とりあえず「日本語」と書いたんですよ。
そしたら翌日に、大津市に中国やブラジルから来た子ども達がいる学校があり、日本語指導者がいないので、それを担当してもらえないかと連絡が入りました。
このとき25歳だったのですが、初めてこの仕事の存在を知りました。これがきっかけですね(笑)

▼Edu Knot Labを始めたきっかけを教えていただけますか。

私のこれまでの教師経歴は、何でもやらなきゃいけない状態が結構長く続いていました。専門は社会でしたが日本語教育や、理科や図工の担当をしたこともありました(学校教員時代のことです)。
この経歴と、前任校では総合的に学ぶ小学校教育コースみたいなところの専任をしていた経験から、専門ジャンルだけで仕事していくのは、学校の先生としては少し違うのではと思うところがありました。
もちろん専門ジャンルを核に横に広げていくということもあるのですが、なかなか難しく、学部・大学時代に裾野が広く、そこまで高くない山みたいなものを作れる場や仕掛けがあっても面白いのではという考えで始めました。

東京学芸大学は色々な要素・良さが数多く点在しており、それらがそれぞれのなかで活動しているので、他所の情報が先生も学生も持っていない。
それらをうまくつなげられるキッカケにもなればと思い、知り合いの先生に声掛けしながら徐々に広げつつある状況です。

▼立場や専門性の壁を越えて横でつながっていく取り組みが、Edu Knot Labだと理解してよろしいでしょうか。

そうですね。もともとは親しい先生たちとのランチ会から始まり、少しずつ周囲に声を掛ける形で拡げていきました。そしてある程度人数が揃った頃から少しずつ勉強会や読書会などを開き始めました。読書会といっても、読んだ感想をただただしゃべるものですけど(笑)
それから Explaygroundができる頃に、自分たちがやってる取り組みも学生も巻き込んでいこうよという話になり、その後ラボとしてEdu Knot Labを立ちあげました。
その後、企画を始めましょうというタイミングでコロナ禍となり休講期間に入ってしまいました。
しかし折角何かやろうって言っていたのだから何かやろうということになり、「Zoom を使い、学科を超えて短い文章をみんなで読んでディスカッションする」という取り組みを開いたんです。ちょうどその頃は学生にも先生にも不安がけっこう席巻していた時期だったので、学生たちに響いたらしくすごくウケが良かったですね。

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▼今春からはYouTubeライブも始められたそうですね。

はい。「Edu Knot Radio」と題し、ランチタイムに30分ほどの放送を月2回くらいのペースでおこなっています。
初回は300人ぐらいの視聴があり限定公開の割には観られたなという印象でした。
その後はまた休講になってしまい、オンライン授業が基本となってしまったので、大教室でのチラシ配布や黒板ジャックなどの宣伝活動ができないこともあり、だんだん視聴者数が落ちてきました。
学生たちの情報では、昼休みはなんだかんだ言って結局学生同士で話したりとか会議をしたりするから、昼休みに観るというニーズはあまりなさそうということ影響しているかもしれません。ただアーカイブを残してあるので、気になる人は後から観るみたいな感じになっているようです。

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▼Edu Knot Labへの参画者は、仲間うちの先生から始まり学生へと拡がって行きましたが、今後どのような人を巻き込んでいきたいですか?

Explayground のラボは通常、ラボに所属する方がいて、いわゆる小さいオープンなゼミみたいな形で進んでいくイメージがありますが、今のところ Edu Knot Lab に関しては「所属する」という概念があまりないですね。
企画に対して参加する、観に来るくる形で、その企画が終わったらバイバイって感じなんですよね。
なので恒常的に質の高いコミュニティーがずっとあるというより、なんかそういうことを思っている先生、やってみたいと思っている先生たちを巻き込んで、企画が終わればおしまい、また別の企画ができれば何かするというアメーバ的なものがEdu Knot Labなんだろうなと思います。
なので、どうなっていくのかは何とも言えないですが、イメージとしては、初等とか中等、国語とか音楽とか美術など縦割りのものに対する横軸的なものとして、Edu Knot Lab があり、学科を超えた何かをしたければその企画に集まる。またそういう思想が先生たちに普及していけば、役割を終えるとも考えます。

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来春、学芸大キャンパス内にExplaygroundの新たな活動の拠点となる建物が竣工する予定です。Edu Knot Lab は過去1年半ぐらい、活動の場がオンラインとなってしまいましたが、リアルの場ができたとき、現時点で想定されることはありますか。

正直「どっちも」になった時期を全く経ていないということもありすごく難しいのですが、学芸大だけじゃなくどの大学もこの2年間で相当、大学における学びの形が良くも悪くも変わってしまったので、正直どうなるのか想像がつきません。
今も建物の完成予想図を見て、「ああこれならソーシャルディスタンスが取れていいな」と思っちゃった。この認識がヤバいですね(笑)
こういう空間があるのはすごく魅力的だなという一方、その空間の中で何をするのかというところが、だいぶ自分の中の感覚や仕事の感覚からすごく抜け落ちてきている気がしていて、大事さは分かるけどもどうすればいいんだろうと戸惑っています。
ただ、集まってワイワイやるっていうのはすごく大事な根幹だと思うので、あることに対して関心を持った人が集まってきて、ワーって話をしてなんか次のところにまた持ち帰って行ってもらえるようなハブになったら良いのかなと思います。
そういうハブは、オンラインであれリアルな空間であれ、必要ですので。

集まってワイワイやる。大切ですね。

ただ、今Explaygroundに参加しているメンバーはちょっと固定化されてきてるところがあるように見えます。外から見ると元気よく見える反面、入りづらくなっているようにも見えます。
大学は割とそういうところが多くて、何かを作っていくと、それに乗り切れなかった人が面白くなくてはぶてる(=広島弁でいう、ふてくされる)状態になってしまい、乗ってくれない。そのせめぎ合いがいつも難しいと思っています。
なので地道ですが「今度来てみない」「一緒にやりませんか?」などの直接的な声かけは大事だと僕は思います。

なるほど。新しい建物を中心に人と人の交流を生み出すにはどういう仕掛けが必要ですかね。

やっぱり学生の視点ですね。なかなか交わる場所が少ないっていうところがあるのかなぁとは思いますが学生の声がやっぱり少ない。
あとは今もやってるかもしれませんが、昔、福井大学がやっていて「なるほど」と思ったのは、教職大学院の先生の机を、付属高校とか付属中学校にも設置し、研究室からたまに学校に行くのではなく、職員室に自分の机がある状態にしていました。
最初はすごく違和感を持たれると思いますが、「先生の机がそこにある」みたいな状態とかがうまく作れたりすると、だいぶ違ってくると思います。

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一人目としていかがでしょうか?

いいですよ、はい。誰にも捕まりたくないときなど(笑)。そういうのができるとホントすごく良くて、もちろんそれがまた閉鎖感を生むのもあるのかもしれないですけど、その場所に1人か2人、常駐とは言わなくても、別の部屋を持っているとか別の机を持っている、「あそこに行くとあの人おる」という状態があると、このような話は動いていきやすいのかなと思います。

ありがとうございました。

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インタビュアー:Explayground
編集:フジムー、ミーコ
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●これまでの連載
vol.1 変人類学研究所
vol.2 codoschool
vol.3 Edu Coaching Lab
vol.4 EXPitch
vol.5 武蔵野らぼ & グローカルジオラボ
vol.6 授業研究ラボ「|IMPULS」
vol.7 VIVISTOP GAKUGEI準備室
vol.8 東京学芸大学ヒューマンライブラリー
vol.9  金文ラボ
vol.10 Möbius Open Library
vol.11  防災教育ラボ
vol.12 対話型検討会ネットワーク


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