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2-12 新たな村人

悠介がこの村にやってきてから1ヶ月が経った。村での生活にも慣れてきて、楽しい毎日を過ごしていた。

悠介が村に来たときに建設中だった家は数日前に完成し、中の家具も揃えられた。

そんなある日、村長が村の入り口の門に向かった。

迅「おはようございます、村長!今日はまた新しい入村希望者を迎えに行くんですよね!」

悠介「あ、そうなんですか!」

千紘「1ヶ月でまた新入りってのはなかなか早いわね。それだけこの村に合う人がいたってことね。」

村長「それでは行ってくるぞ。楽しみに待ってなさい。」

そう言うと、村長は持っていた鍵で門の錠を開け、再び閉めてから洞窟の奥へと歩いて行った。

悠介「どんな人が来るんだろう。ドキドキする。」

千紘「悠ちゃんももう先輩だね。」

悠介「せ、先輩なんてそんな。1ヶ月ぐらい、大して変わらないですよ。」

そんな会話をした後、通常の担当業務に取り掛かった。昼食を食べ、12時半を少し過ぎた頃、そろそろだと言う迅に連れられ悠介は千紘と一緒に門に向かった。

迅「悠介のときもそうだったと思うけど、新人のお出迎えは俺と千紘の仕事なんだ。」

千紘「他のみんなも気になってはいるけど、仕事はあるし、一度に大勢いると新人さんが萎縮しちゃうから私たちだけでまず会うの。悠ちゃんは今回特別よ。」

悠介「なるほど…。あっ、来た!」

村長が暗闇の奥から現れた。そしてその後ろにいたのは、悠介と同じぐらいの背丈の子供だった。

村長「新人を連れて来たぞ。」

迅「村長、おかえりなさい!そして新人さんもようこそ!」

千紘「え待って、また小ちゃくてかわいい男の子来たんだけど。」

颯人「…どうも。はやとって言います。お願いしまっす。」

千紘「なるほど、ちょっと反抗期系の子かしら。」

迅「おい千紘。またすぐそういうこと言うなって。」

村長「今日から皆と暮らす颯人じゃ。良くしてやってくれ。」

〜その夜〜

颯人の新人歓迎会が開かれ、また村人が全員で集まり楽しそうにしている。

迅「良かったな、悠介。同い年の子が入って来て。」

悠介「そ、そうですね。でも仲良くなれるかはまだ…。」

迅「大丈夫!村長が連れてきた人はみんないい奴だから!ほら、話しかけにいこうぜ?」

2人は颯人の元に移動する。

迅「よ。話そうぜ。」

颯人「どうも…。」

迅「この子は悠介って言うんだ。村に来てすぐ会ったよな?偶然にも2人は同い年なんだ。だからお互い仲良くなってほしいなと思ってる。」

悠介「よ、よろしくね。」

颯人「…ああ。子供は俺らしかいないって聞いたし、一番話は合うかもな。よろしく。」

悠介は颯人に意外と話しやすそうな雰囲気を感じた。

悠介(…もっと冷たい感じかと思ったけど、そうでもないのかな…?)

何から話そうか考えている内に、他の村人も颯人の所に来た。悠介のときと同じように、我先にと新人に近付こうとしている。

悠介「あの、これ終わったら颯人の家行っていい?またゆっくり話したい。」

颯人「ああ、いいぜ。」

そう言うと同時に他の村人たちに気圧されながら悠介と迅は元の場所に戻った。

迅「…良かったな、家行く約束も出来て。仲良くなれそうじゃんか。」

悠介は少し嬉しそうな表情をしてうつむいた。颯人の方に目をやると複数の「現金な」村人の対応に追われ、大変そうにしていた。

〜歓迎会後〜

悠介(ドキドキするなぁ。)

颯人の家に向かう悠介。辺りはすっかり暗くなっていた。

ノックして入れてもらい、御座の上に座る。

颯人「悠介だったよな。改めて、俺は颯人。よろしく。」

悠介「うん、よろしく颯人。」

颯人「…悠介も最近この村に来たって聞いたけど。」

悠介「そうなんだ。1ヶ月前ぐらいかな。」

颯人「1ヶ月過ごして、この村はどうだ?」

悠介「すごく良い所だと思ってるよ。みんないい人ばっかりだし、颯人もすぐ慣れて楽しくなると思う。」

颯人「そうか…。それなら良かった。」

悠介「やっぱ最初は不安だよね。僕もそうだったし。」

颯人「あ、ああ…。」

少し考えてから颯人が言った。

颯人「なあ、ここにいるってことは、悠介も元の世界で嫌なことがあったんだろ?聞いていいか。」

悠介「ああ、うん…。」

悠介はここに来た経緯を話した。修司のことは話さなかった。その間、颯人は真剣なような、しかめっ面なような顔で聞いていた。

颯人「はあ、バレていじめられたパターンか。…まあ俺らの歳でってなったらそれか親バレかぐらいしかねーよな。」

颯人「結局元の世界の奴らなんてそんなもんなんだよ。少数派を排除して、自分らが正しいって思い込んで。なら俺だって俺が正しいと思う世界で生きてやるよ。」

悠介(…颯人は元の世界を良く思ってないんだ…。僕は、ホントは元の世界でみんなと普通に一緒に過ごしたかったけど…。)

颯人「…ま、もうこの村に来て、二度と戻らない訳だしどうでもいいけどな。俺はこのまともな世界で楽しく生きてくよ。」

颯人「あ、俺の話がまだだったな。悠介に話してもらったんだから、俺もちゃんと話さないとな。…俺はな、」

そう切り出したとき、迅が家にやってきた。ノックして外から声をかけてきた。

迅「おーい、2人で話してるところ悪いが、そろそろ寝ろよー。」

悠介「あ、もうこんな時間なんだね。颯人の話はまた今度でいいよ。」

颯人「ああ、そういえば今日はいろいろあって疲れたな。また明日。」

悠介「うん、おやすみ。」

そう言って悠介は颯人の家を後にした。

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