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令和時代、ドローンのデータ利用は「見る」から「予測する」フェーズへ入り、資格やスクールビジネスは幻滅期へ突入

平成の終わりから急激に成長してきたドローン産業、要素技術からハードウェア、ソフトウェア、そして下流のソリューションまで含めると非常に大きなドローン・エコシステムが構築されると予測されている。

現在は、黎明期だといわれている。実のところ、一番栄えているのはスクールビジネスや資格に関するビジネスである。そして初心者向けの撮影用ドローンの講習や規制に関する講習も目白押しだ。しかし、これらは早晩思ったほどビジネスが伸びずに関心が薄れる時期(いわゆる幻滅期)に入ると思われる。参入障壁が低い上に、飽和状態に陥っているからだ。

そもそも、最終受益者がドローンを利用して得るメリットは何だろうか。多くの人が勘違いをしているが、実はドローン自体にはあまり価値はない。ドローンを使って何をやるかが問題だからであり、ドローンも人工知能と同じく、ツールでしかない。特に業務においてドローンが利用される場合は、「ドローンではなくてもよいがドローンだとうまくできる」というものがほぼ全てである。例えば、撮影や点検、測量、観測などだ。

ドローンを運用するメリットはあくまで、映像やセンサー情報を含めたデータを従来より効率的に取得できることであり、その意味で「ドローン産業の本質はデータ産業」である。機体ばかりが注目され、国内の展示会などでも格好良い機体やCGばかりが注目を集めるが、ドローン産業はデータでありソフトウェアであるという現実を忘れない方が良い。

特に、ドローンのハードでは一歩も二歩も先を行く中国、強力な航空産業を持つ北米などでは、ドローンのハードウェアよりもソフト面、機体管理や飛行ログ取得、フライトプラン作成、データ解析、画像解析、認証取得などのビジネスが多く立ち上がっているのが分かる。

これらの地域では「飛ぶのは当然」であり、いかにドローンを使って効率的にデータを集めるか、そしてそれを解析するかが重視されているのだ。「なんとか飛ばそう」としている我が国のドローン産業より相当先を行っているのは間違いない。

ドローンがデータ産業であり、いわゆるデータ駆動型社会を実現する一番有効な手段なのだと理解すると、その先に訪れるビジネスチャンスもまた見えてくるのではないだろうか。ドローンは効率的なセンサーの集合体の一つなのであるからだ。

データ産業としてのドローンビジネスがこれからたどる道は、ビッグデータ産業とIoT(モノのインターネット)、そしてそれと絡み合う人工知能の関係と図式は同じである。

つまり、ドローンを利用することにより、より多くの「データ」が取得できるようになった。それらは、画像であり、動画であり、赤外線だったり、レーダー3次元データだったりする。しかし、この飛ばしてデータを取得することがビジネスになる期間は非常に短かい、というかビジネスにはならないだろう。

なぜなら、最終受益者のフォーカスは「このデータをもとに何を行うか」が問題となるからである。どんなに高度に自動化したドローンでデータを取得しても、それこそ30mの長い棒の上に取り付けたカメラで撮影したものであっても、データの価値に変わりはない。まさにデータ駆動型社会におけるデータのフィードバックをもってリアル世界の何を駆動させるかという点が重要だ。

そして、多くの産業と同じく、一定の臨界量に達したデータの蓄積は、人工知能によるビッグデータ解析や機械学習・深層学習といったツールにより、また「特別な意味を持ち始める」のだ。

データの相関が人間の想像力を超えた部分で動き出し、スパコンの数値シミュレーションなどを介し、そして多くの知見を我々に返してくれるようになる。

これから、ドローンができるようになること、それは「見る」ことから「予測する」ことに移ってくるのは間違いないだろう。一定のデータの蓄積が意味を持ち始めると、例えば、もはや飛ばさなくても予測できるサービス、飛ばしただけで対象構造物の耐用年数が予測できるサービス、取引資産価値が推定できるサービスなどが主流になってくるのだ。ドローン産業の主戦場は明らかに、人工知能を活用したデータ解析の戦いに移る。

ところで、あらゆる人工知能を利用したサービスに言えることであるが、人工知能をうたい文句にするサービスは他社との差別化をするのが非常に難しい。特に深層学習を利用したサービスなどは常にフィードバックループを返すことにより限りなく精度は高めていけるものの、100%の最終製品になることはないからだ。

そして人が教えてルールベースで定義されているものと違い、深層学習の結果何をもって判断されたのかがエンジニアであっても説明することが困難だからである。実際のところ、サービス毎に結果の違いは有っても、データの蓄積さえあれば人工知能プラットフォームは短期間でその違いを埋める可能性も高い。

つまり、ドローン産業もまた他の産業と同じく、いくつかのインフラ化したプラットフォームと、その上にのる非常に先鋭化したニッチ向けのサービスの展開が行われるであろう。特殊なエリアに特化したサービスは人工知能やドローン以外の部分、例えばアフターサービスやテクニカルサポートや機器のユーザーインターフェースなどで先鋭化を図る

結局のところ、飛び道具ではなくそのような地道な一歩一歩が多く出てきて新たな産業エコシステムが立ち上がるのだ。

令和の時代、ドローン前提社会の時代、もしかすると予測もつかない劇的な進化が待っている気もする。何が起きるか非常に楽しみだし、その波の最先端にいたいと切に思う。

一緒にやる人、ぜひ!

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