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隠れ家の不良美少女 190 CDジャケット撮影

俺は友里香さんと山岸さんのオフィスへ来ていた。
CDのジャケット撮影をお願いするためだ、更に武道館の写真撮影もお願いしようと思っている。

「お疲れ様です、CDのジャケットをお願いしたいんですが」
「勿論喜んで」山岸さんはOKサインをくれた。
「それから、武道館の撮影もお願いしたいんですけど」
「そう、日程は?」
「10月31日です」
「うそ!その日は…………」少し渋い顔を見せる。
「スケジュール埋まってますか?」
「うん…………ちょっとね………」
「そうですか……残念です」俺は少し肩を落とした。

「ただ……変更出来ないこともないんだ」
「そうですか、出来ればキナコを一番理解してくれている山岸さんにお願いしたいです」
「そんな言われると嬉しいなあ」少し口角を上げる。

「ある出版社からの仕事が入ってるんだけど、その出版社からお願いされてる事があってね」
「そうなんですか?」

「キナコちゃんの写真集を出版したいらしいんだよ」
「「えっ!」」俺と友里香さんは顔を見合わせる。

「もし可能なら、武道館も撮影の一部だと言うことでなんとか変更できると思うよ」
「キナコの写真集ですか…………」俺は考えた。

「この度キナコのマネージャーになりました原友里香と申します」名刺を差し出す。
「そうですか、今後ともよろしくお願いします」山岸さんは頭を下げた。

「今回のCDアルバムには写真集が付いていません、ですから別に写真集を出しても問題ないと思います、何かアイデアはございますでしょうか?」

「私は『KINAKO18』と言うタイトルで少女と女の間で一瞬の輝きを切り取った写真集を考えていたんですよ」
「それは素敵ですね」友里香さんは頷く。
「友希くん、どうかなあ」山岸さんは俺を見た。
「そうですね、それはいい作品になりそうな気がします」
「ではキナコに確認をしますので少しお持ちいただけますか?」
友里香さんはキナコに電話する。

「やはり友希さんがOKなら良いと言う返事でしたよ」友里香さんは含み笑いをしている。
「なるほど……」山岸さんまで含み笑いで俺をみる。
俺は体の中が熱くなって背中に汗をかいた。

「では山岸さん、キナコの写真集は進める方向でお願いします」友里香さんは口角を上げる。
「了解しました」山岸さんも口角を上げる。
俺は決まり悪そうに頭をかいた。

「山岸さん、プリンちゃんの写真集はいかがですか?」
「えっ、プリンちゃんもマネージメントしてるんですか?」
「はい、任されてますので」
「それも出版社の方に確認してみます」山岸さんはさらに喜んだ。

「友希くん、いい人がマネージャーになってくれたねえ」
「はあ……ありがとうございます」
二人は山岸さんのオフィスを後にする。

帰りの電車で友里香さんはニヤッとしながら言った。
「友希さん、希和ちゃんに二十歳までは子供を作らないでね」
「えっ!何言ってるんですか」俺はギロっと睨んだ。

「キナコちゃんと約束したのよ、二十歳になったら友希さんと結婚してもいいって」
「何勝手に約束してるんですか、俺の承諾もなく」更に睨んだ。
「友希さんもそのつもりだったんでしょう?」すまし顔で言った。
「……………………」
「返事はいらないわよ」クスッと笑っている。
俺は何も言えず電車の窓に映った自分の顔を見る。
「桜、見てる友希さんの顔を、幸せそうでしょう」そう言って少しだけ寂しそうな顔をした。

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