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噤みの午後 News

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知らなくても生きてはいけることばかりだけれど……
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森山至貴さんとの往復書簡「詩と音楽と社会的現実」が(ひとまず)完結しました。

森山至貴さんとの往復書簡「詩と音楽と社会的現実」が(ひとまず)完結しました。

2017年の春から14往復、28編にわたって連載してきた森山至貴さんとの往復書簡がこのたび最終回を迎えました。言葉と音楽、覚醒と陶酔、創作の技法、翻訳、言語的クィアとしての詩、天皇制、エロス、愛、自由といったテーマについて、その時々の互いの実作活動に即して語り合ってきました。この企画を持ちかけたのは僕の方ですが、正直言って、始める前はこんなに長く、そして深く語り合うことになるとは思ってもみませんで

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平成の詩 ふたつ: ユリイカ篇

平成の詩 ふたつ: ユリイカ篇

実は、最初西日本新聞のために平成の詩を書いたとき、とんでもない間違いをおかしてしまった。行数と段落数を勘違い(!)して、指定された分量の三倍ほど書いてしまったのだ。書き上げる直前に気がついて、青くなった。駄目だろうとは思いつつ、暗澹たる気持ちで最後の数行を書き上げて、担当のデスクに事情を話したら、案の定「絶対無理」という返事。

仕方なく一から書き直したのが、前篇で紹介した「平成を脱ぎ捨てて」であ

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平成の詩 ふたつ: 西日本新聞篇

平成の詩 ふたつ: 西日本新聞篇

今年に入って、平成の詩を二篇書いた。最初は西日本新聞からの依頼で、これは「平成ララバイ」という企画の一環だった。平成を回顧するシリーズの合間に毎月ひとつずつ詩を挟んでゆくという。第一回目の詩は1月に松本圭二。2月が僕で、3月には三角みづ紀が書いている。令和の時代が始まるまで、あとひと月は続くのだろう。誰が書くことになるのか、楽しみだ。

僕の書いた詩は次のようなものだ。

  平成を脱ぎ捨てて

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PIW 文月悠光特集:本日公開!

PIW 文月悠光特集:本日公開!

Poetry International Web の最新号は、文月悠光さんの特集です。文月さんの詩10篇を未発表の英訳とともにお読み頂けます。作品の選択と翻訳はJordan A. Y. Smithさん。

https://www.poetryinternationalweb.net/pi/site/poet/item/29627/Yumi-Fuzuki

僕がジョーダンと初めて出会ったのは去年の夏

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PIW 文月悠光インタビュー: Out on the Town but seriously

PIW 文月悠光インタビュー: Out on the Town but seriously

この記事は、Poetry International Webの文月悠光特集の一環として掲載した英文インタビューの和訳です。ただし英語から日本語に直したのは前半のエッセイ部分のみ。インタビュー部分はもともと日本語で交わしたものをPIWのために英訳しました。したがってここに掲載したものが原文ということになります。(上の写真は森野千聖さんの撮影)。



2009年に発表された文月悠光のデビュー詩集は

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ニカラグアのグラナダ詩祭がVirtualになるという知らせ:3月7−9日まで

ニカラグアのグラナダ詩祭がVirtualになるという知らせ:3月7−9日まで

ニカラグアから一斉メールの通知が届いた。どうやらグラナダ詩祭をオン・ラインで行い、Facebookで中継するらしい。出演はRuben Darioという詩人だそうだ。

El primer evento en este formato es el Homenaje Virtual al poeta Rubén Darío que se estará transmitiendo en la págin

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混声合唱とピアノ、群読のための 《さよなら、ロレンス》 YouTubeで観られます

混声合唱とピアノ、群読のための 《さよなら、ロレンス》 YouTubeで観られます

作曲家・社会学者 森山至貴が我が『笑うバグ』の詩数編をネタに合唱曲「さよなら、ロレンス」を作曲してから幾星霜(正確に覚えていない)、今度はそこに脚本・演出家馬原颯貴(うまはらそうき、と読むのだそうだ。至貴と韻を踏んでる?)が加わって、「群読版」というのが出来あがった。

1月初旬に公演があり、僕は直前まで日本にいたのだが、ぎりぎり間に合わず、泣く泣くドイツへ戻ってきたのだ。それがこのほどYouTu

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我が『前立腺』がNHKラジオ深夜便に出演するらしい

17日 日曜日の23時台の予定とか。僕は付いていってやれないし、ミュンヘンでは聴くこともできない。ひとりで大丈夫だろうか?旅立つ我が子を見送る心境です。

1月27日付 日経新聞文化欄に寄稿しました:「英国の背骨を歩く」

1月27日付 日経新聞文化欄に寄稿しました:「英国の背骨を歩く」

去年の秋、マンチェスター近郊からスコットランド国境まで英国を縦に貫く自然遊歩道「ペナインウェイ」を(ちょっとだけ)歩いたときの話です。最後の方は詩になっています。

疋田龍乃介か笑福亭智丸か?: トークイベントのお知らせ

疋田龍乃介か笑福亭智丸か?: トークイベントのお知らせ

来る12月27日、この世の果の庭園にひそんだ本屋さん、神戸ワールドエンズ・ガーデンで疋田龍乃介と笑福亭智丸の三人でトークします。

(智丸です。どうぞ、よろしゅう↓)

疋田龍乃介は詩集『歯車 vs 丙午』で鮮烈なデビューを果たした現代詩人。蕎麦と納豆を中核に備えた過激な言語パフォーマンスに、僕は彼が詩誌「びーぐる」に投稿して来た時から度肝を抜かれ、目出度く詩集が出版されたときには栞に詩を献じたり

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「ミュンヘンの岡田利規」と福岡で:トークイベントのお知らせ

「ミュンヘンの岡田利規」と福岡で:トークイベントのお知らせ

岡田利規と初めて会ったのは2017年の元旦だった。場所はミュンヘン室内劇場近くのアパート。劇場が借り上げて、委嘱したアーティストに提供しているものだ。彼は年末からここに住み込んで、同劇場で発表する新作の制作に取り組んでいた。

引き合わせてくれたのは、その新作で音楽を担当するUさんの奥さんである、Kさん。彼女とはその数年前ウィーンで会っていた。オーストリアの写真家が撮った日本の写真に僕が詩的なテキ

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帯の話

帯の話

柴田元幸さんに新刊『前立腺歌日記』の帯文を書いていただいた。柴田さんに帯文をいただくのは、実はこれが二回目である。最初はいまからちょうど10年前、栩木伸明と一緒に訳したサイモン・アーミテージの詩集『キッド』(思潮社)だった。柴田さんはこんな風に書いてくださった。

「詩とは翻訳で失われる何かである」とロバート・フロストたちは言った。
「詩とは翻訳で得られる何かである」とチャールズ・シミックたちは言

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岩波ウェブ連載「3.11を心に刻んで」に、新井高子編著『東北おんば訳 石川啄木のうた』について寄稿しました。

岩波ウェブ連載「3.11を心に刻んで」に、新井高子編著『東北おんば訳 石川啄木のうた』について寄稿しました。

https://www.iwanami.co.jp/news/n23504.html

岩波書店のウェブサイトでは、3.11にまつわるさまざまな人の文章を、震災以来現在に到るまで毎月連載し続けている。いつも冒頭に誰かの言葉を引用し、そのあとエッセイが続くという体裁だ。

昨年末に寄稿依頼を受けたとき、まっさきに頭に浮かんだのが、手元に届いたばかりのあらたかさんの『東北おんば訳 石川啄木のうた』だっ

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