見出し画像

外来種が引き起こす問題


外来種は日本の生態系に大きな影響を
与えている


日本ではあまり知られていないかもしれないが、外来種と呼ばれるこれらの生き物は、日本の生態系に大きな影響を与えている。

一部は人間の生活にも直接的な影響を及ぼし、農業被害や病気の発祥といった問題を引き起こしてる。

外来種について正しく理解し、適切な対策を講じることで、生物多様性の保全と地球の未来を守ることができる。 
そのために必要な知識として、外来種が引き起こす問題、日本の現状と対策、私たちにできることなどについて、理解する必要がある。

今回は、外来種とはどういうもので、どのような種類があり、そして外来種が引き起こす問題点と対策について、説明する。

〈目次〉
1.外来種とは
(1)国外由来の外来種  
(2)特定外来生物   
(3)要緊急対処特定外来生物
(4)国内由来の外来種
2. 外来種によって影響を受ける遺伝的多様性
    とは?
3.侵略的外来種とは
4.外来種は何が問題なのか?
(1)生態系への影響     
(2)経済的影響 
5.外来種問題への対策

1.外来種とは
外来種とは、もともとその地域に生息していなかった生物のことで、人間の活動によって他の地域から持ち込まれたものを指す。
外来種は、在来種の生息地を奪ったり、在来種と競合したりして、生態系に大きな影響を与えることがあるのだ。

外来種は大きく分けて、
①国外由来の外来種
②国内由来の外来種
がある。日本の在来種でも、他の地域から持ち込まれると「外来種」に相当する。

ただし
・渡り鳥
・海流に乗って移動してくる魚
・風で飛ばされてくる植物の種や昆虫
など、自然の力で移動するものは外来種として扱わていない。

(1)国外由来の外来種
日本に生息する人に飼育・栽培されていない外国から日本に持ち込まれた生き物は、確認されているだけでも約2,000種にもなると言われている。

代表的な例は、
・シロツメクサ
・ホテイアオイ
・アメリカザリガニ
・アカミミガメ
・アライグマ
など。

外来生物法※」により、日本の生態系・人の生命や身体・農林水産業へ被害を与える、またはその可能性があるものは「特定外来生物」、さらに著しく重大な影響を与えるおそれがあるものは「要緊急対処特定外来生物」に指定されている。

※外来生物法
特定外来生物の飼養や輸入に関する手続きを定めることで、その取り扱いを管理し、問題のある外来生物の拡散や増加を防ぐことによって、生態系や人々の安全と健康を守ることを目的とした法律。

(2)特定外来生物
特定外来生物とは、外来生物で
・在来の生態系
・人の命・身体
・農林水産業

に被害を与える、またはその可能性があるものを
指す。

特定外来生物に指定されると、 
・輸入
・放出
・飼育
・譲渡

の禁止など、厳しく規制がかかる。
特定外来生物は生きているものに限られるが、卵・種子・器官なども含まれる。

近年、特定外来生物に指定される外来種はだんだんと増えてきている。定着が確認されている特定外来生物の例をいくつかあげてみる。

・アムールハリネズミ
東アジアから北東アジアにかけて生息するハリネズミの一種。夜行性で、昆虫や小動物を食べる雑食動物。

・ヌートリア
南アメリカ原産のカワウソの一種。体長は約50cmほどで、水辺に生息し、水草や魚、貝類などを食べる。1年に2~3回、6~8匹の子供を産む。

・カミツキガメ
アメリカ原産のカメの一種。10kgほどになる個体もある。魚や両生類、甲殻類、小動物などを捕食する。噛む力が強く、人間にけがを負わせることもある。

・ウシガエル(アカガエル)
北アメリカ原産のカエルの一種。1kgほどになることもある大きなカエルで、昆虫、魚、小動物などを捕食する。

・オオクチバス(サンフィッシュ、ブラックバス)
北アメリカ原産の魚の一種。最大で1m近くになるとも言われ、魚、貝類、小動物などを捕食する。

・セイヨウオオマルハナバチ(ミツバチ)
ヨーロッパ原産のハチの一種。ニホンミツバチよりも体が大きく、温和で人が刺されることはほとんどない。

・セアカゴケグモ
ヒメグモ科に属するクモの一種。メス1cm前後、オス3〜5mm。オスは毒をもたないと言われているが、メスはオーストラリアで死亡例もある有毒のクモ。

(3)要緊急対処特定外来生物
緊急対処特定外来生物とは、特定外来生物のうち特に緊急に措置を行う必要がある生物で、
・移動制限命令
・通関後の検査
などの強力な措置をとることができる。

近年では、南米原産の危険なアリ(ヒアリ※)が18都道府県で確認された。ヒアリは2023年4月1日からは「要緊急対処特定外来生物」に指定されている。

(※)ヒアリ
南米原産のハチ目アリ科フタフシアリ亜科に属するアリの一種で、体長は2〜3mm、赤い体と黒い頭部が特徴である。非常に攻撃的で、刺されると強い痛みと炎症を引き起こす。

(4)国内由来の外来種
国内由来の外来種とは、日本国内の他の地域から、別の地域に持ち込まれた生き物のことを指す。同じ国内の在来種であっても、他の地域から人の手によって持ち込まれた生き物は外来種として扱わている。代表的な例としてメダカが

・メダカ
メダカは小型の淡水魚で、日本人にとって身近な野生生物の一つである。近年、メダカは水環境の悪化や農村環境の開発、外来種の影響で数が減っている。

2.外来種によって影響を受ける遺伝的多様性とは?
遺伝的多様性とは、生き物の個体や地域によって、同じ種でも異なる遺伝子を持つことを指す。例えば、私たち人間も性格や顔つきが異なるのは、個々の遺伝子(DNA)が微妙に異なっているからである。

この遺伝的多様性が保たれている場合、個体や地域の生物が多様な個性を持つことにより、その生き物の集団全体で見た状況の変化や突発的なトラブルに適応するための選択肢が増える。

そのため、その種が生き残る確率が高まる。しかし、遺伝的多様性が減少すると、生物は環境の変化や病気に対する抵抗力が弱まり、絶滅のリスクが高まる。

3.侵略的外来種とは
外来種の中でも、特に地域の自然環境や生態系に大きな影響を与えるものは、侵略的外来種と呼ばれいる。代表的な例をあげる。

・マングース
・グリーンアノール
・アメリカザリガニ
・アカミミ

4.外来種は何が問題なのか?
生態系は、はるか長い時間をかけて食物連鎖や相互作用が繰り返され、微妙なバランスの中で成り立っている。
しかし、外来種が侵入すると、生態系だけでなく人間や農林水産業にも深刻な影響を及ぼすことがる。

ただし、すべての外来種が悪影響を与えるわけでない。一部の生物は自然のバランスに組み込まれ、大きな影響を与えずに順応している。

しかし、非常に大きな影響を及ぼすものも存在する。外来種が引き起こす可能性がある問題点は以下のようなものがある。

(1)生態系への影響 
侵略的外来種は、生態系に様々な影響を与える。代表的な影響には以下のようなものがある。

・捕食:在来種を食べる

・競合:在来種の生息・生育環境を奪ったり、餌の取り合いになる

・遺伝子攪拌(かくはん):近縁の在来種との雑種を作る

・人の命や身体への影響

アライグマも見た目は可愛いものの、気性が荒く攻撃的なことで知られている。 
また、狂犬病などの病気や寄生虫を媒介する可能性もあるので、遭遇した場合には十分な注意が必要である。

(2)経済的影響 
侵略的外来種は、農業や漁業、林業などの経済活動にも悪影響を与えることがあります。

・農業
外来種が農作物や家畜に被害を与えることがあります。

生態系サービス(※)
外来種が生態系のバランスを崩すことで、生態系サービス※が損なわれることがある。外来種によって生態系サービスが損なわれると、それに依存する産業や経済活動に影響が及ぶ可能性がある。

※生態系サービス
自然の生態系が提供する恩恵。食料、水、木材、医薬品、観光、レクリエーション、気候調節、洪水制御、土壌保全、害虫駆除など、さまざまなものがある

・観光業
外来種が生態系や景観を変化させることで、観光業にも影響を与えることがある。
例えば、外来種の植物が景観を乱し、美しい自然環境が損なわれると、観光客の興味を失わせる可能性がある。

また、外来種によって野生生物が減少すると、野生動物観察などの観光活動にも影響が出る可能性がある。

・保全活動
外来種の管理や駆除には費用がかかる。例えば、外来種の駆除や生態系の回復には、人件費や資材のコストがかかることがある。
これにより、保全活動に予算が割かれ、他の重要な環境保護活動への資源が削減される可能性がある。

5.外来種問題への対策
外来種問題の対策は、主に環境省が主導し、各都道府県や市町村、関連する研究機関、NGOなどと協力して行われている。

具体的には、環境省が外来生物法を策定(外来種の管理や規制、監視体制の整備など)などを行い、都道府県や市町村は環境省の指導のもとで、

・地域ごとの外来種問題に対する具体的な対策
・外来種の監視・調査、駆除活動の実施 
・情報の収集・提供、啓発活動

などを行っている。


以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?