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学研『学習』と『科学』/ 小学生向け学習雑誌について

〜 子供の教育にイノベーションを起こした画期的な学習雑誌 〜



〈目次〉

1.はじめに
2. 『学習』と『科学』創刊
3. 画期的な販売方法
4. 楽しみながら自発的に学ぶ気持ち


1.はじめに

戦後日本の出版史で、金字塔となる記録を樹立した小学生向け学習雑誌に、学習研究社(現・学研ホールディングス、以下学研)の『科学』と『学習』シリーズがあります。 

同誌は『1年の学習』『1年の科学』というように、小学生の学年ごとに刊行されていました。最盛期に両誌の発行部数の総計が、670万部を突破。当時の子どもの3人に2人は読んでいたといわれ、文字通り「国民的」な学習雑誌の地位を獲得していたのです。

なぜ『学習』と『科学』は、それだけの部数を発行できたのでしょうか。



2.『学習』と『科学』創刊

第二次世界大戦の終戦時、あらゆる物資が不足し、学校の復興や教科書の作成も、ままならない状況でした。

加えて、GHQの指針のもと、戦前の教育カリキュラムは否定されてしまい、教育現場に混乱が生じていました。

そのような環境の中、1946(昭和21)年に学研の『学習』が創刊されました。

学研の創業者、吉岡秀人氏は、「日本の教育を復興し、教育現場で不足している教科書を補えるレベルの学習雑誌を作ろう」という、大きな志をもって取り組みました。

この志を原動力に、『学習』は子供たちが楽しみながら学習できるユニークな内容となりました。

『学習』には、『「できる喜び」と「学びとるチカラ」を育む』というコンセプトがありました。

そして、1957(昭和32)年に『科学』が創刊されました。誌面に加えて、素晴らしかったのは「付録」です。その「付録」は、子どもたちに「科学への夢と憧れ」をいだかせました。

『科学』の「付録」の例として、色水実験キット、金属鉱物や岩石の標本、簡易的な顕微鏡、カメラ、鉱石ラジオなどがあげられます。

『科学』の「付録」


子どもたちが、その「付録」を使ってみることで、実際に科学を体験することができました。




3.画期的な販売方法

『学習』と『科学』は、書店で扱わないという、販売方法で、発行部数を伸ばしていきました。

具体的には「教育コンパニオン」と呼ばれる女性の販売員を中心として、家庭へ直接販売する方法を確立しました。



4.楽しみながら自発的に学ぶ気持ち

学研が歴史に残る学習雑誌を残せたのは、その編集方針によるところが大きいです。

「ためになるから読め」と上から押し付ける姿勢でなく、「どうやったらより子どもに分かりやすくなるか、面白くなるか」。 

創意工夫に熱心な編集方針を持った学習雑誌は、当時は特別な存在だったのです。

学研の『学習』と『科学』は、各家庭へリーズナブルな価格で提供されました。
経済的なハンディキャップをなくし、多くの子供たちの手元に届きました。


学研の編集者たちの「子供たちに学びとるチカラを高めてほしい」という良心的な想いが、雑誌の内容にあらわれていました。

そのことで、多くの子供たちに「楽しみながら自発的に学ぶ気持ち」を育むことができたと思います。


以上

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