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「谷根千」の歴史とその足跡

「谷根千(やねせん)」とは、現在の文京区から台東区一帯の「谷中・根津・千駄木周辺地区」のことです。谷中は台東区、根津と千駄木は文京区の地域にあたります。

寺町の谷中、職人の街だった根津、文豪や芸術家に愛された閑静な街、千駄木。頭文字をとって「谷根千」とよばれるこのエリアには、町の至る所に歴史の足跡が残されています。



〈目次〉
1. 谷中が寺町といわれている理由
 ■参考: 和菓子店『谷中岡埜栄泉』
 ■参考: へび道
2. 根津の名所  根津神社
 ■参考: 「染物・洗張 丁子屋」 
3.千駄木  文豪や芸術家に愛された閑静な街 
 ■参考: 日本の伝統的な木造建築「旧安田楠雄  
 邸庭園」


1.谷中が寺町といわれている理由
谷中は「谷中生姜」と生姜が特産の農村でした。1625年に江戸城の鬼門※にあたる上野に寛永寺が創建され、それに伴い、上野にほど近い谷中にはお寺が多く建てられました。

※ 鬼門とは、鬼が出入りする方角と言われており、大変縁起の悪い方角とされています。鬼門の方角は北東です(江戸城の北東)。寛永寺は江戸を守護するために鬼門の方角(北東)に建立されました。

さらに、1648~1651年に幕府の政策により、隣接区の神田界隈から多くの寺院が谷中に移転してきました。このことによって寺の数が飛躍的に増え、今も谷中には70以上もの寺院が点在する「寺の町」となっています。

現在の谷中のメインストリート「三崎坂」の沿道の両側は、民家よりも寺の数の方が多いほどです。


■参考: 和菓子店『谷中岡埜栄泉』
創業1900年、4代目が暖簾を守る和菓子店『谷中岡埜栄泉』は、その趣ある店構えが上野公園へと続く散歩コースのランドマークタワーとなっています。
現在の建物は先々代が戦後、建てたものです。第二次世界大戦末期、空襲されるという噂が絶えなかった谷中町は被害を最小限に留めるためにこの一帯を更地にしました。
同店もその時、店を閉め、建物を壊しました。その際、店の看板は近所のお寺に預け、守ってもらったそうです。そして終戦後すぐに先々代が木材を集めて店を建て、商売を再開しました。現在お店に掲げられている看板は、寺で守ってもらった当時のものです。

近所の人たちに愛され続ける同店の「豆大福」は甘さ控えめの餡を柔らかくコシのある餅で包んだものです。また、かつてこの地で広く栽培されていた「谷中生姜」にちなんで作られた「浮草」は、生姜を練り込んだ皮で餡をコーティングした焼き菓子です。生姜がほんのりピリッとしてアクセントになっている名物菓子。どちらも昔ながらの製法と伝統を守り、変わらぬ味を提供していています。

■参考: へび道
三崎坂を下り千駄木駅方向に歩くと、うねうねと蛇行している道があります。その形状から地元では「へび道」とよばれ、へび道は現在、文京区と台東区の区境になっています。
なぜこのような形状をしているのかというと、ここは現在は暗渠(あんきょ: 地下に埋設した水路のこと)となっている藍染川(あいぞめがわ)の流路だったからです。藍染川は水はけが悪く、よく氾濫したため、1921年から暗渠工事が始められ、現在はその姿は残っていません。 



2.根津の名所  根津神社

根津神社は約1,900年前、日本武尊(やまとたけるのみこと)により創建されたと伝えられています。1706年、徳川綱吉の命令により、現在の場所に移転しました。

根津神社は、徳川家康が眠る栃木県の日光東照宮の様式を継承しています。当時の建築の特徴が今も数多く残っており、重要文化財に指定されています。東京で訪れたい神社の一つと言えます。



■参考: 「染物・洗張 丁子屋」

不忍通りの根津神社入口交差点から北東の古い住宅地内の「藍染大通り」を行くと「染物・洗張 丁子屋」があります。
同店は1895年創業の染物屋で、手拭をはじめ、ブックカバーや扇子入れなどを販売しています。丁子屋が店を構えるこの場所は1965年まで「藍染町」とよばれていました。店の前の通りには藍染川という川が流れ、川沿いに染物屋がいくつも並んでいました。
当時、この界隈では、藍染川を利用して染色作業が行われていたのです。現在、川は埋立てられ、染物屋はこの1軒が残るのみとなりました。



3.千駄木  文豪や芸術家に愛された閑静な街
千駄木には、日本を代表する文豪、夏目漱石や森鴎外をはじめ、芸術家や著名人が住んでいました。
日大病院横の解剖坂を登り切り南側に進むと「夏目漱石旧居跡」の碑があり、半生を千駄木で過ごした森鴎外の原稿などを展示する記念館「森鴎外記念館」など、千駄木の街では文豪の軌跡をたどることができます。

■参考: 日本の伝統的な木造建築「旧安田楠雄邸庭園」

「旧安田楠雄邸庭園」では、戦前の日本の伝統的な木造建築を見ることができます。
大きなガラス戸を開けて入ると、当時のままの姿が残されており、柱に施された細かな彫り物や古い電話、畳や襖など昔の建築文化を垣間見ることができます。
また大きな庭には四季折々の木や花が咲き誇り、2階の窓から望む風景はまるで絵画のように美しいです。



以上

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