人に仕事をお願いする9つの心得

自分で成し遂げたいものがあったとしても、一人の力は限られている。当然、誰かに手伝ってもらうことになるが、そのカギは「お願いする力」である。編集者という仕事は、自力で何かをなしとげるというより、いわば人にお願いして成し遂げる仕事である。その経験と、自分が思う「理想の頼まれ方」とを掛け合わせて、仕事をお願いする心得を9つにまとめてみた。

その1:お願いする仕事のみならず全体を語る。お願いする仕事が、全体のごく一部だとしても全体像とそれが出来上がることの意味を伝える。単に石を積み上げてほしいのではなく、人々の憩いの場を作りたいためだと伝える。

その2:なぜあなたにお願いしたかを伝える。その仕事はだれでもいいからやってもらいたいのではなく、あなたにやってもらいたい。あなたの何が素晴らしいと思ってお願いしたいのか。その理由を語る。だれでもいいのではなく、「あなた」にお願いしたい思いを伝える。

その3:見本を示す。やってもらいたい仕事が明確であれば、「このようにしてほしい」というものを、サンプルをつくるなり、ダミーをつくるなりして可視化する。自分で模範を示せ、かつ定量的な仕事に効果的である。

その4:できるだけ具体的に伝える。使える時間とお金を示し、出来上がりのイメージを可能な限り具体的に伝える。スペックを表示できないものであっても、あいまいな表現は避け、可能ならば数字も用いて表現する。

その5:進捗確認をする段階を決めておく。仕事が10%進捗するごとに相談するのか、それとも半分まで進んでときか、など。それ以外に、どのよう状況のときに、即座に打ち合わせをするかを明確にする。

その6:仕上がりのイメージを言葉を尽くして伝える。仕上がりの具体的な形を表現できない場合は、あらゆる言葉を使ってイメージを伝える。定性的であったり、クリエイティブな仕事の際には特に大事。「派手に」「明るく」といった表現も、受け取り側によって大きな違いがある。形容詞で表現するだけでなく、音楽や映画でそのデザインの世界観を伝えるなど、背景やストーリーと一緒にイメージを伝える。

その7:依頼したら託す心境になる。仕上げてもらいたいイメージを意を尽くして伝えるが、最終的には仕事を受けてくらた人の力を信じることである。その人に依頼したのは自分が決めたことであり、仕上がりをすべて受け入れる心境でお願いすることだ。その受け入れる覚悟がなければ、中途半端に依頼すべきではない。

その8:感謝の気持ちを伝える。完成の際にはお礼の言葉をできるだけ具体的に伝える。あなたにお願いしたことで、何がよかったか。どこが素晴らしかったか。こちらがどれだけ助かったか。頼まれた人の労力が誰かのためになったことを伝える。

その9:フィードバックをする。お願いした仕事が、その後、どうなったかを伝える。仕上がったら終わりではなく、それが使われてどうなったか。それらを踏まえ、次にもし同じような仕事をお願いする際にはどうしようと思っているかも伝える。

仕事を依頼する作法がうまくなると、仕事の進捗が劇的に改善する。それ以上に大きなことは、お願いの仕方如何で、発揮される相手の力が格段に違うことである。こちらの予想をはるかに超えたものを出してくれて、結果として想像以上のものが出来上がることがある。そして、引き受けてよかったと思ってくれたなら、次にあなたが仕事をお願いした際にも、快く検討してくれるだろう。

そして、最後にもっとも重要なことは、面白い仕事を企画して依頼することである。人は、面白いと思った仕事がやりたいものだし、かつ自然と力が発揮される。面白さとは、挑戦的な課題であったり、社会や誰かのためになることが想像しやすかったり、あるいはそういうものが社会にあればいいと思えたりするものである。この「面白い仕事」をつくれれば、お願いする力以上のものを発揮する。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

243

岩佐 文夫

#編集 #ライター 記事まとめ

編集、ライター、コンテンツ、メディアなどに関する記事をまとめていきます。
6つのマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。