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田んぼの真ん中にカフェをつくったスロバキアのご主人――秋田県大仙市にて

気仙沼ニッティング「東北探検隊」14日目は秋田県の阿仁から大仙市へ。
阿仁という山村から角館に向けてクルマで走っていたら、美味しそうなパン屋さんを発見。クルマをUターンさせてお店に入りました。「パンドコロ TOSSI(とっし)」というこの店は、兵庫県の「ビゴの店」で修業されたご主人が焼くパン屋さんで、クロワッサンを購入。「パンとコーヒーが好きで」とお話しすると、近くにこのパン屋さんのパンを使っているカフェのコーヒーが「美味しいですよ」と教えてもらいました。ちなみに、店を出たあと食べたクロワッサンが本当に美味しい。パンもまた食べたくなり、そのカフェへ行くことにしました。

教えてもらったカフェは、田んぼのど真ん中にありました。それが凄く居心地のいい空間です。木を使った店内は自然な温かさがあり、大きな窓から見える田んぼが、まるで絵画のようでした。このカフェ「CAFÉ Lopo」のご主人は、スロバキア人のマイケル・ピクナーさん。旅行好きのマイケルさんは、シェフやバリスタの仕事をしながら世界各地を旅行されてきました。オーストラリアでは、寿司をはじめて食べ、それから日本のことが好きになったそうです。そこではもう一つ、奥さまとも出会い、ご結婚されました。

奥さんの実家はここ大仙市でお米やアスパラガスをつくる農家でした。ここに住み始めたマイケルさんは、地元の飲食店で働き始めました。ですが自分の店を持ちたいという思いが強く、実家の車庫を改造させてもらい、いまのお店を昨年3月にオープンさせました。
改造は、すべてマイケルさん自身がやったそうです。書庫で使われていた木材を活かし、それらを床や壁、そしてテーブルにも使いました。むき出しの天井の木材にもすべてやすりを掛けてきれいにしました。仕事をしながらの改造には半年近くかかったそうですが、マイケルさんが作りたかったのは、古い木を利用した欧州風のカフェ。それを自分の手で実現させたのです。

メニューも本格的でエスプレッソ、マキアートなども。フード類には、サンドイッチ類とともに、スロバキア風ビーフシチューがあったので、早速注文しました。これは牛肉は柔らかく、コクと酸味が絶妙で実に美味しい。「牛肉は8時間煮込んでいる。ソースにはトマトは使わず、パプリカを使う。これがスロバキア風なの」と。コーヒーはこの日はグアテマラで、穏やかな気持ちになれる一杯でした。田園を見ながらのコーヒーは時間が経つのを忘れてしまいます。家の近くにこんな空間でこんな食事やコーヒーを出してくれる店があったら絶対に通うでしょう。

日本の農家に来て違和感はなかったのでしょうか。ここに住む前、マイケルさんは5か月間かけて、北海道から沖縄まで旅行されたそうです。そこで日本人の親切さを実感された。この大仙市に来ても「みんな優しいよ」と居心地がよさそう。日本語は大仙市に来てから「スピードラーニングしてるね」(笑)。「何より、ここは景色はすごくいいよ。田植えの時期の田んぼは水があり、夜になるとそこに月が反射してとてもきれい。それに晴れていたら鳥海山もきれいに見える。ここは本当にいいところよ」と、大仙市の自慢話をスロバキアの方から聞かされることになりました。店名について伺うと、「Lopoは僕のお母さんのニックネームで、スロバキア語で『ふき』という意味。こっちにきてふきが沢山あって、お母さんのニックネーム思い出して、店の名前にしたの」と。よく見ると店内には、お母さんが子どもだった時代の写真がいくつか貼ってあります。「故郷のお母さんに会いたいんじゃない?」とちょっと意地悪なことを聞いてみたら「大丈夫。10月に家族でスロバキアに帰るから」と。今年の1月に生まれたお子さんも連れて帰られるそうです。

お店には1時間以上長居してしまい、帰り際「旅行、頑張ってね」と何度も言って送り出してくれました。さすがに旅人の心情もわかっている方でした。

***この日見た風景から(秋田県仙北市)***

CAFE Lopoを紹介くださったベーカリー「パンドコロ TOSSI(とっし)」(仙北市)。本格的なパンが食べられる。

仙北市角館の武家屋敷通り。

角館の武家屋敷、その一。木々との調和が見事。

角館の武家屋敷、その二。各屋敷の前には概要が書かれている。

角館の武家屋敷、その三。外から覗く。

角館の武家屋敷、その四。屋根の上の草に惹かれて。

角館は近くに流れる川沿いもきれい。

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