17-4小学校

廃校した小学校の意外な使われ方――山形県最上町にて

気仙沼ニッティング「東北探検隊」18日目は山形県の最上町へ。
日本海岸沿いの酒田市から最上町には、クルマで約70キロ。最上川沿いを上っていく道は景色が素晴らしい。酒田の人が「最上に行くなら、秋の紅葉すごいよ」と仰っていたのがよくわかりました。
新庄市を過ぎると完全に山間を走ることになります。そんな集落もまばらな道沿いに「Café」の看板が目に飛び込んできました。Uターンして看板に従って道を降りていくと、そこは廃校になった小学校でした。

3階建ての小学校の1階に「珈琲舎きまぐれCafé」があり、もともとは職員室でした。この店を営んでいるのは、斎藤則子さん・貴義さんご夫妻。小学校のお向かいにお住まいだそうです。6年前、奥さまもそしてお子さんも卒業された小学校が136年の幕を下ろしました。卒業した学校がなくなるのは何とも寂しいものです。なんとか校舎だけでも利用できないものか。また恩返しもしたいと思っていた奥さまが「Caféをやろう」と言い出したそうです。ご主人もそれに同調し、役場に掛け合って、この場所を借りて営業されています。

「私たち二人とも役場の職員だったんです。だから話しも早くて」。定年退職をして時間ができたことも大きかったようです。場所は、瀬見温泉駅のそば、温泉客や、近くを流れる川が鮎釣りの名所であることから、釣り客も訪れてこられるそうです。
実際のカフェは、裏に最上小国川が流れていて、川のせせらぎが心地よく、気持ちのいい風が入ってきます。川沿いに向いたカウンター席で飲む珈琲は、贅沢であり、こんな気持ちのいい場所でCaféを開きたい人はきっとたくさんいるに違いありません。「新緑の季節はまた格別なんです」と。椅子も小学校で使用されていたものを使い、センターテーブルは校長室に置かれていたものだそうです。


お店のロゴは、デザイン会社に勤める娘さんがデザインして下ったそうです。店内には、奥さまがこのカフェを始めるにあたって揃えたスヌーピーの人形などがおかれています。奥さま自身にとって居心地のいい場所を作られたようで、それが、取っ手つけた感がなく、オーナーの好みを反映した雰囲気につながっています。

店名通り、お店を開けるのは「きまぐれ」と言いつつ、毎月3回の土日に営業されているそうで、そろそろ「きまぐれ」が許されない状況という、嬉しい悩みがきそうです。

お二人が口を合わせて仰るのは「お店をやっていると、いろんな人に会えるのが楽しい」ということです。この日も、仙台から一人で来たという女性が、川を眺めながら静かに珈琲を味わっておられました。2年前にはじめたCaféも、東北ではテレビで紹介されるなど次第に知られる存在となり、いまでは仙台や福島からもお客さんが来られるようです。「地元の人も来てくれるし、こうやってフラッと立ち寄ってくださる方もいて」と僕のような珍客?が来るのを楽しみにしておられるようです。 

この小学校は、現在、一部を公民館として利用しているほか、体育館も貸し出しています。そして3階には、ミニ四駆のレース場があるというので、上がってみました。この日は隣町の新庄市から来ているという常連の男性と、小学生ふたりが一緒になって「本気の」レースをしていました。はじめてミニ四駆が走るところを見ましたが想像以上に早く、勝負はあっという間につきます。下のCaféがオープンしている時間帯のみこちらも営業で、1日100円で使うことができます。この常連さんに聞くと「普通の場所だと1時間200円はするので格安です」とのこと。管理人がいるわけではないので、常連さんが定期的にコースの修理などをして使っているようです。しかも、これだけ広いコースは東北でも仙台に一つあるかないかくらいの規模だそうで、東北中からミニ四駆のマニアが集まる、知られた場所になっているそうです。

カフェも、ミニ四駆のコースも、使われなくなった行政の建物を、地元の人たちが主体となって、しかも楽しみながら有効活用されているのが印象的でした。


***この日見た風景から(山形県最上町)***

最上町。川沿いに走る国道は飽きない。川には鮎釣りの人も。

最上町の田園風景。

最上町の夕方。

最上町のローソンは三角屋根。全国でも珍しいとか。看板にはお魚も泳ぐ。

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