スタメン

「手探りと手応え」2020.3.23 J2第1節 ファジアーノ岡山×ツエーゲン金沢 レビュー

スタメンはこんな感じ

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 岡山は前半風下、後半は風上となっている。

前半-金沢の攻撃(岡山の守備)

 ビルドアップの形はそれほど作りこんでいるというものではなさそうでDFライン4枚+CH2枚。
 これに対して岡山は前からは行かず、FWがCHのコースを、SHがやや内よりのSHの前に立つことでサイドへと誘導していた。

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 しかしこの守り方ではSBへのプレスがかかりづらく、パスが出てからSHが対応することとなるためフリーの状態で蹴られることも多かった。

 その後の攻撃の形としてフリーなSBからの斜めのパスが狙いとしてあるように思えた。
19'40からの攻撃はRSBの選手がフリーな状態でボールを持つとRSH#14の選手は斜め横方向。FWの加藤は下りる動きを飛び越えたパスをルカオへ。 
 SHとFWの一連の動きはルカオへのパスコースを作るためのフリーランとなった。この場面ではSHへ対応していた徳元は外側へ、加藤についていった田中を前へと動かすことで一時的にルカオの周辺にスペースを作り出した。この場面ではルカオが背負った状態ではあるものの濱田と1vs1となり最終的に強引にシュートまで持ち込んだ。

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前半-岡山の攻撃

 風下となった岡山を押し込めるように金沢は前からプレスをかけてきた。その圧力に屈することとなった岡山は、自陣からのビルドアップではなく長いパスが増えることとなった。
 ある程度ラフなボールも収められるFWの2人ではあるものの、金沢のプレスを受け蹴らされる形のボールは最終ラインとの距離が遠く2次攻撃へと繋がる場面も少なかった。

 そんな中でも金沢の守備を逆手に取った攻撃の形が見られた。それがSBが食い付いた裏のスペースへとFWが走りこむ形だ。
 プレビューでも少し触れたがこの試合はミラーゲームとなり対峙する相手がハッキリとしている。そこにマンマークでつくことが金沢の守備のルールであったのではと思う。

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 この時、プレスのスイッチはSHの選手がSBへとプレスをかけるところから始まる。SHは縦へのパスを切りCHも連動して目の前の選手を捕まえに来ていた。
 この時岡山の右サイドの三村へと出たパスを厳しく潰しに来ており、縦方向に仕掛けられない三村が試合にうまく入れないこととなった。その影響もあってか20'45の金沢のCKの後から5分間SHの左右を入れ替えている。

後半ー岡山の攻撃

 金沢のプレス強度の低下、風上ということもありDFラインから蹴らされる形でのロングボールを減らすことに成功した。

 おそらく今季もFWをスペースへ走りこませてロングパスからの攻撃の形が多くなることが予想される。前半のように自分たちが意図しないタイミングでロングパスを出してしまうと全体的に選手間の距離が遠くなりFWが収めたボール、またはセカンドボールをSH、CHが拾えなくなる。
 ヨンジェと山本は簡単にDFに競り負けないことからも強力な攻撃の形となりそうだ。また狙いを持ったロングパスを蹴ることができるようになれば、FWが落としたパスをSH、CHが前向きで受ける形も増え迫力ある2次攻撃を仕掛けられそうだ。

後半ー金沢の攻撃

 風の影響で思うようにルカオに届けられないことから攻撃の形を変えてきた。
 前進する際にSBが高い位置をとり、SBのいたスペースにCHが入ることで岡山の守備の基準をズラす。この時岡山のSHは上がってきたSBを見るために下がるのか、ボールホルダーにプレスに行くのかという2択を突き付けられることになった。
 中途半端にボールホルダーにチャレンジするが後手の対応となった岡山のSBは、SHを捨てて出てから対応することとなり、その後の対応も出てから対応→ズラされるという後手を踏むこととなった。

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岡山ー三村の可能性

 この試合、特に立ち上がりから右サイドでのロストが目立った。約5分間の左右の入れ替えは基準をズラす、左サイドのタッチライン上で受けられるようにしたりといった狙いだっただろうか。
 細かいステップ、キレのあるドリブルを武器とする選手であるが岡山のSHでの役割はやや内よりの位置にポジションをとることが多い。三村自身のパスを受けるときの体の向きが自陣方向に向いているため相手が潰しに来やすいという点もあったかもしれない。
 そんな中でもこの試合で彼の良さが光ったのが交代直前となった73'00のプレーだ。なぜこの場面では相手を剥がすことができたのか少し考えたい。

 前半ロストした場面に見られたのが縦方向からは相手SBがプレスに、横方向にはCHが近い距離にいたことだろう。
 SBが躊躇なくプレスに来たのは相手の守備のやり方、三村にパスが入るまでにすでに誘導されていた、三村がパスを受ける準備が整っていなかったといった点を仮定する。

 対して相手を剥がせたこのシーンではCBから直接縦パスが入っている。このシーンでは白井が相手SHを引き付けることで濱田と三村の縦のコースを空けている。(指で三村を指している)
 後ろ向きで受けることとなったが相手CHと1vs1、広大なスペース、大外には増谷、斜め後ろには上田とサポートも十分。外へのフェイントで相手を交わしスルーパスと、恐らくチームで求められる役割をこのワンプレーは実践してみせた。

 昨年の終盤、この試合を観てSHの三村はどうかなと思う方もいるかもしれないが、ロストの何割かは周りとの関係性も影響しているように感じる。相手を交わしたシーンでは金沢の守備のルールを逆手に取るものではあるがSBからの単調なパスだけでなくCBから足元へと入る形によって内寄りでのプレーも十分可能だと示したワンプレーだったように思う。

まとめ

 新戦力の選手たちはそれぞれの良さを出そうとする中で特に目を引いたのが白井の飛び出し、徳元のカバーリングだ。
 白井は中盤でのフィルターとして振舞えるだけでなく、豊富な運動量を活かしFWやSHとの関係に参加する飛び出しも見せていた。また風上となった後半はミドルシュートも積極的に打つなど攻守ともに絡むプレーを見せていた。
 徳元はこの試合では攻撃参加が目立つよりも空いたスペースを埋める、1vs1で相手の足を止める守備能力の高さでチームを助けていたように思う。CHがボールサイドに寄った時には左サイドを捨てて中央を埋めるプレーは地味ではあるがチームとしては助かる働きであると思う。
 上門はスペースが大好物のアタッカーという印象。カウンター時にFW2枚が走り出すとロングパスを狙う、自分が前向きならドリブルで仕掛けるなどのプレーは随所に見られた。

 昨季は怪我人なども重なりチームとしての総合力に不安を抱え続けたシーズンであった。今後いつ再開できるか、延期分をどこに挟むかなどまだまだ不確定要素が多い中ではあるが今季の陣容、そして開幕戦の戦いぶりを見ると贔屓目を差し引いても、総力戦となっても十分にやり切れる力を兼ね備えていると期待できるのではなかろうか。中断期間により連携が深まれば、怪我人が復帰すれば。まだまだこのチームは伸びしろだらけだ。


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