最近やっと音楽が聴けるようになったので、良かった曲を挙げ連ねてみる
前にも書いたかもしれないけど、昨年住んでいたニューヨークでロックダウンが始まったとき「音楽を聴く時間がたっぷりできたかもな」なんて思っていたら、裏腹にどんどん音楽が聴けなくなった。具体的には、音楽を流しても違いがよくわからずどれも同じに聴こえてしまう、あるいは少しうるさく感じて止めてしまう、という状態になった。
それからずいぶん経ったけど、今年になってようやく音楽がまた楽しく聴けるようになってきたので、最近感動した楽曲を新旧問わずに挙げ連ねていきたい。
『CITY』 - Ryozo Band
(画像はSpotifyから引用しました)
1月20日にリリースされたこれは新譜の中でも抜群に好き。
バンドリーダーのRyozo Obayashiくんは、King of Diggin' MURO氏のプロデュースで7インチ「Many Troubles In The City」でデビュー(私もそのときに初めて知りました)、その後もSANABAGUN.ってバンドで弾く傍らRyozo Bandとしても「Gerb」や「Get Lost」など精力的にリリースしてきた。
今作は「架空のブラックスプロイテーション映画のサウンドトラック」というコンセプトをもっていて、ジャケからしてもうニヤニヤせずにはいられない。
ブラックスプロイテーションっていうのは簡単に説明すると、主に70年代に公開されたアフリカ系アメリカ人を主人公にした映画のことで、ソウルやファンク音楽、ファッション、ドラッグ、ギャング、インナーシティ、エロ、車、ドンパチ、カンフーなど、みんな大好き要素が丼からはみ出るほどメガ盛りされているのが特徴。
アフリカ系アメリカ人の観客動員を狙ったモロ商業主義な映画なので「ブラック(黒人)+エクスプロイテーション(搾取)=ブラックスプロイテーションムービー」と呼ばれる。
1曲め「City Of The Memory」というから、主人公が長いこと離れてた古巣の街に戻ってきたとこから映画が始まるんやなあ、刑務所行ってたんかなあ〜。主人公の職業は探偵かなあ? ジャケから察するにギャングではなさそう…などと、妄想が広がっていく。
「THE BAR」やはり場面が動くのはBAR。敵組織のボスの愛人である女性と出会うのか、マスターから情報収集してたら後ろでビリヤードやってるチンピラに絡まれるのか。
「Elevator」も最高。70年代だとガラス張りの夜景の見えるエレベーターってことはないかなあ、薄暗くて汚くて狭い感じか。ボスの愛人に最上階まで案内されてるのかな、それとも一人で乗り込んでるのかな。曲の感じだとエレベーターの中で銃撃とかはなさそうだなあ。
「Chase The Boss」「The Boss's Dead」クライマックス。この足早ファンクは映画ならでは。建物の裏階段を駆け下りて逃げるボスを追っかけるのだろうか、いや降りるより屋上に行くかな? それともカーチェイスだろうか。
……なあんて妄想が捗るつくりになっていて面白い。冒頭の写真はこないだ行われたライブを観に行ったときのもの。音源もいいが、ライブも大変素晴らしかった。
Cory Henry & The Funk Apostles
NPR Musicの名物企画「Tiny Desk Concert」シリーズに、オルガン奏者コリー・ヘンリーが彼のバンド「アポストルズ」と出演したときの映像。
わずか23分のライブなんだけど、オルガンとベース(シャレイ・リード)のグルーヴで下半身がジンジンして治まらない。とくに最高なのは動画の8分めくらいからで、本人の歌声もさることながら右手の女性コーラス2人によるゴスペル的ハーモニーが、部屋中で渦巻くようなファンクのうねりを生み出してて高揚感が抑えられなくなる。悶絶昇天確定奏。
この動画が公開されたのは2年前で、2020年3月には来日公園も行われていた(私は行けなかったけど……)。ここでライブレポートも読めるので、興味ある方はぜひ。
ちなみにコリー・ヘンリーはスナーキー・パピーというプロジェクトにも参画していて、これもめっちゃかっこいいので併せて。
『Love.Life.Live』- Isaiah Sharkey
アイザイア・シャーキーと読む。ギタリストで、ディアンジェロの2015年のアルバム「Black Messiah」に参加していた人だ。
で、このアルバムは2017年。実は2019年にも慈愛に満ちたアルバムをリリースしているけど、私はこっちのほうが好き。ディアンジェロから来た人なら「あっ、ディアンジェロの感じだ」って思うだろう。
ソウル評論家の吉岡正晴さんがブログでアイザイアのインタビュー記録を公開している。なんか素朴ですごく心がホワリとなる記事なので、ぜひ。
『I Told You So』- Delvon Lamarr Organ Trio
ジャズ評論家の柳樂光隆さんが紹介されていて知ったバンド。オルガントリオっていう名前からしてジャズバンドだよなあなんて思ったけど、このアルバムに関してはゴリゴリにファンクで大変興奮した。
やっぱりケンドリック・ラマーの「To Pimp A Butterfly」みたいな塩梅でファンクとジャズがヒップホップで消化されてるのが好きなんでしょうかね。そういう面影が伺える楽曲が好きですね。
『The Jet Leg feat.中田 亮』- Q.A.S.B.
そうだ、昨年のだけど、これもバチクソに良かった。アメリカから7インチを買ったほど良くて、帰国後に実家に戻ったら無事に届いていた(当たり前ですが)。
こういうタイトなファンクは大好き。タイトなリズム。これはビシッとしてて最高だった。
海外現行ファンクでも有名なバンドからはあんまりこのタイトさが感じられない。よく耳にするブルックリンのLettuceとかUKのThe New Master Soundsとかも、かっこいいけどヒリつくような緊張感はない。
あの緊張感ってバンドを軍隊のように厳しく統率することから生まれたものだからか、もっとリラックスして音楽を本来的に楽しもうぜ〜ってなると消えてしまうのかもしれない。意識しないと作れないフィール。そういう意味では技術の昇華追求意識の高いジャズ・ミュージシャンのほうが近い領域に迫れるのかもしれないな。ストイックという点で。
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