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杖のふたり

どこへゆくにも、ああちゃんとすうちゃんはいっしょでした。
ふたりとも杖をつき、ささえあってあるきます。
足のわるいああちゃんは、杖とすうちゃんなしにはあるけません。
目のわるいすうちゃんは、杖とああちゃんなしにはあるけません。
「根っこがでっぱってるから、つまづかないでね」
ああちゃんがすうちゃんに教えてあげたり、
「坂になってきたから、しっかりつかまってるといいよ」
すうちゃんがああちゃんをはげましたり。
時間がかかっても、みんなに追いぬかれても、いっしょけんめい、足をからませるようにして、ふたりはあるいてゆきました。
つかれてくると立ちどまり、ああちゃんとすうちゃんは、たがいの肩に顔をうずめ、おいのりをささげます。
――すうちゃんの目に光と色が明るくあざやかにとどきますように
――ああちゃんの足が高い丘までもかけのぼってゆけますように
「ありがとう」
ふたりの声があわさります。
こころがうつくしくなったので、ああちゃんの足はかるげに動きだしました。すうちゃんの目には、道のべの花の色がうるわしくうつりました。
ふたりは、どんなふしぎがうまれようと、おどろかない気持でした。
もっとふしぎがうまれたらいいなと思いました。
道は光にぬれて、いま、ここで、ふたりを待っていました。

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