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2. どっちもショック・・ Sportsman calendar 17 ('63)

こんにちは。
おやじの左手(略してFLH)です。
趣味のひとつとして、1960年代の国産手巻き実用腕時計を集めてはこつこつと修理をしています。
記事の趣旨は、「自己紹介」をお読みください。

先週は初めての投稿、お読みいただき、♡までいただき、ありがとうございます。
週末の週一投稿が続けられればと思っています、よろしくお願いします。


①    SEIKO  Sportsman calendar 17

型番:14112  Cal:957  17石 5振動(毎時18,000振動)
ケース径:36mm(リューズ含まず) ラグ幅:18mm
1963年12月製造(S/Nおよび製造年より推測)

まずは、トンボ本の言葉を引用させてください。

スポーツマン17
セイコー製手巻き式腕時計の普及機の代表格として最も意義のある製品です。国産腕時計の主流は「グランドセイコー」などの高級品ではありません。庶民の生活の中で日常的に使用される、まさに実用品としての存在こそ国産腕時計の本来の姿ではないでしょうか。
合理化された設計に基づく製造の容易さや安定した性能、またそのことによる低廉な価格等いずれの面においてもこの「スポーツマン17」は国産腕時計の銘機といえるでしょう。

(出典:トンボ出版 国産腕時計⑦ セイコー、マーベル)

まさに自分の思い描いている腕時計。
セイコーの実用時計の代表格としてチャンピオンと双璧を成していましたが、スポーツマンの方が学生から社会人まで、より庶民に根付いていたように思います。

②    正面

仕入れ当時は、風防に大きな割れがあり、針は曲がり、文字盤もキズがありました。
プラスチック風防なので割れやすいのは仕方なく、落としたか、ぶつけたか、相当のショックを与えたものと思います。
後述しますが、このショックがムーブメントにも影響があったようです。

風防の割れやヒビは修復することができず、磨いたストック品と交換。
文字盤も同じ14112のストックの文字盤と交換、合わせ針も交換しました。

③    左右側面

腐食は無く、洗剤で汚れを落とし、超音波洗浄、ペースト研磨剤で丁寧に磨き輝きを取り戻しました。
細かいキズはありますが、ケースは難を逃れていました。

④    背面

この時計の気になるところに、裏蓋の裏にあるS/Nが製造月からで製造年の刻印がありませんでした。
今までの所見で、スポーツマン17に限らず初年度製造時計は製造年が省略されているS/Nがあり、これにあたりそうです。
14112は1963年デビューにより、1963年製と推測しています。

防水を意味する、タツノオトシゴがかわいいです。

⑤    ムーブメント

ゼンマイを巻いて針は動いたのですが、進みが早く1分あたり10秒以上早く進みました。
テンプの振り角が弱い状態、テンプ自体もしくは輪列に何らかの要因がありそう。
部品洗浄と合わせ、歯車軸、軸受けなどをルーペで観察したところ、テンプの耐震軸受けが何となく黒く、テンプを交換したら復旧しました。

NGと思われるテンプの耐震機構を調べようとバラした時に、子部品を飛ばしてしまい行方不明、テンプの調査は断念。。
時計修理は、どの部品も一度見失うとそこでゲームセットになります(笑)。


やはり、風防が大きく割れるくらいのショックを与えてしまったら、壊れるでしょうね。
セイコーはDiashock、シチズンはParashockとして耐震性を強化していますが、当時の時計はまだまだ発展途上、G-SHOCKの開発は1970年代になってから、G-SHOCKの出現が腕時計の飛躍に多大な貢献をしたことも頷けます。

持ち主だったおやじさん、壊してしまったとき、スポーツマンが受けたショック以上にショックを受けたことでしょう(笑)。

⑥    実用腕時計の宿命

あらゆる場面で使われる時計であり、注意はすれど、ぶつけたり、落としたりは避けられません。
このような被害は、ある意味、実用腕時計の宿命かと。
ただ、今の実用時計と違うのは、それが捨てられなかったということ。
風防が大きく割れ、時間も狂ってしまった時計が、よく捨てられなかったなあと思います。

高級時計ならまだしも、1970年代も中盤に入ればクオーツや先のG-SHOCKが台頭し、正確で頑丈な時計が市場にあふれ、壊れてしまった手巻き時計などあきらめてしまうのも容易、80年代になれば、なおさらのこと大量消費の時代に突入します。

1960年代という時代が、まだ、モノを捨てるという意識をいい意味で否定していたんだと思います。
きっと、壊してしまったおやじさんも「直して使うか」と思い、引き出しにしまい、そのまま忘れてしまったんじゃないかと。


スポーツマン17、完全復活です、あの痛々しい姿など微塵もありません。
突然の出来事で、腕時計として不完全燃焼だったでしょう。
もう、壊すようなことはしないので、思う存分、針を回して欲しいと思います。


*****

記事にする時計たち、これからも左手で活躍して欲しく、骨董市やマルシェで出品しようと思っています。
出店など決まりましたら、この場を持って案内をいたします。
そのときは、お声がけなどいただけるとうれしいです。

「バースディウォッチ」という言葉をご存じですか?
お生まれ年に作られた時計を時計好き界隈で「バースディウォッチ」と呼んでいます。
自分が過ごした歳月を感じられる腕時計と、ともに過ごすなんて素敵かも。
1965年(昭和40年)生まれの私、懸命に針を動かしている同世代の腕時計たちにいつも励まされています(笑)。

⑦    1963年の出来事、流行(ネットより抜粋)

・鉄腕アトム、鉄人28号、エイトマン放送開始
・新千円札(聖徳太子→伊藤博文)発行
・日米初のテレビ中継実験成功
・ケネディ大統領暗殺事件、力道山刺され死亡
・流行歌
こんにちは赤ちゃん(梓みちよ)、高校三年生(舟木一夫)、見上げてごらん夜の星を(坂本九)
・映画
アラビアのロレンス、大脱走、シャレード
・ヒット商品
サインペン、エースコックワンタンメン、ボーイッシュルック、ブーツ流行
・おおよその大学卒初任給  15,700円
・物価
映画:250円、ラーメン50円、週刊誌:40円、牛乳:16円、かけそば:40円

FLH
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