見出し画像

VRによる精神療法(VRセラピー)の現状まとめ

バーチャル研究員のなるです。
これから、私の思い浮かべる「バーチャルアバターによる精神療法の未来」を提示する前に、まず現状のVR精神療法がどの程度進んでいるかを調査しました。

総評

・現状、実用化には至っていない。PTSDへの実験は進んでいるものの、他は停滞、及び停止状態。
・「VRセラピーを行える人間が居ない」「副作用の責任を取れる人間が居ない」という最大の問題点の解決が困難。

VRセラピー研究の概要

現実の精神療法をVR上にとりあえず使用したパターンが殆どです。
確かにVRは仮想空間の実体感を抱きやすいという長所があり、PTSDは実験段階ではそれなりに成功しているそうです。(正直、臨床結果は頑張ればいくらでもごまかせるので結果にあまり興味はありません)。
しかし、いくら実体感を抱こうがさほど影響しないうつ病治療には失敗した模様で、近頃は話題にすら登りません。VR上で認知行動療法(うつ病などに使われる治療)プログラムを実行した実験はありましたが、別にVRでなくても構わないのでどうでもいいですね。

自閉症は最新の研究はは見つけましたが、全体的に論文数が少なく、停滞しているようです。

VRセラピー研究の問題点

2つの問題点が見受けられます。
・精神療法系の研究者がVRについての理解に浅く、「とりあえず現状あるソフトウェア/手法をVRに適応させればいい」という考えでしか動けていない為、対PTSDに対しては強力なものの。対うつ病の精神療法のような異なる発想が求められるジャンルにおいては無力
・VRセラピーを行える人間が居ない
前者も大きな問題点ですが、後者と比べると些細な問題です。

VRセラピストの圧倒的な不足

VR精神療法はある程度の研究には成功したものの、VRセラピストが圧倒的に足りないという問題点に直面しています。(今の所、施せるのはVR関連の一部研究者程度で、現実の精神的問題を解決するにはあまりにも少なすぎる)
理由は単純で、実験当初はVRがここまで普及すると思わず(研究室でしか使わないような代物だと判断していたのでしょう)育成を後回しにしている上に、誰も思わぬ副作用や育成の誤ちによる責任を取りたくないからです。

誰が誤った精神療法の副作用の責任を取れるか

現状、VRセラピーの発見されていない副作用は誰も予想することが出来ません。
警戒しすぎと言われればその通りなのですが、現に米国では誤った精神療法により莫大な被害を与えてしまった過去がある為、慎重にならざるを得ないのでしょう。

誤った精神療法による被害の一例

最も有名なものは、所謂「虚偽記憶に関する一連の問題」です。
つまり、「クライエント(所謂患者)に、「貴方は両親/保育所に性的暴行を受けた」という虚偽の記憶を誤った精神療法により植え付けた結果、生じてしまった一連の問題」です。
集団セラピーで徐々に嘘っぱちの性的暴行の記憶を言わない雰囲気へと追い込んだり、偽りの記憶を否定するクライエントを否定したり、なかなか面白い事件ですが、長々と話すと1記事埋まるのでこの程度にします。

虚偽記憶に関連する事件は多々あり、今でも基礎心理の世界では語り継がれています。(残念なことに精神医学では無視されつつあるのですが)。

もし興味がある場合、こちらの項目を見て頂けると幸いです。

どのように誤ちを発見するか

予想出来ない以上は、実験により求める他ないでしょう。
例として、単純な実験から行い、徐々に範囲を広げていくといったアプローチを考えられます。
以下の手順です。
1. それなりの数のVRセラピストを育成する。
2. 彼らにさほど精神的な副作用が及ぼなさそうな項目(所謂簡単な悩みの解決など)を試験的に運用してもらう。
3. 利用者に何らかの精神的な異常は認められなかったと確認するなど。
4. 異常が認められない場合、徐々に適応化させ、新たな項目(より高度な問題の解決法)へ取り込む。
こちらの手順でしたら恐らく可能でしょうが、「そもそも誰がマニュアルを作るのか、育成するのか」という問題の答えにはなりません。
マニュアルを作り育成する人が居なければ、いくら経っても実用化出来ないでしょうが、知識のある人は危険性を恐れ誰かがやる事を祈り、知識のない人は新しいデバイスに手出しをしようとしない。
そんな均衡(?)により、VRセラピストの不足が成立している、と私は考えました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?