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0921:公務員兼業作家の叫びを聞いた

徳島県職員でもあるプロBL作家・月夜さんが、県庁の兼業許可を巡るトラブルについてTwitterに書き込んでいるのが目に止まった。知らない作家さん、Twitterの記事を読んだのも今日が初めてだ。トラブルについては昨年末から書いておられるが、自分が公務員(徳島県職員)であることは昨夜始めて明らかにされたようだ。

発端はどうやら2016年に遡る。小説出版の話が持ち上がり、兼業許可を求めて所属長に申請するが、可否を決めないまま放置され、許可を得ないままの作家活動が続き、6年以上が経過したこの3月に許可が出たものらしい。この件を巡っては昨年から人事課ともバトルが続いているとのことだ。

公務員が作家活動を含む収益活動を行う場合に任命権者の許可が必要だという話は、以前に記事に書いた。この時は高知県の教員が無許可の同人活動を咎められた事件が起きていた。徳島県から見れば隣県のことで、月夜さんもさぞや気を揉んだことだろう。

この記事でも書いたが、私も若い頃から文章を書いてきたので、県職員時代にも原稿仕事はちらほらあった。申請から許可の流れは概ね次のようなものだ。まず、月夜さんがツイートに載せている徳島県様式と大筋同じ書類を書いて、まずは直属の上司経由で所属長(課長)まで「所属長の意見」の記載を求める。内容に問題(公務への支障)がなければ1~2日で「支障なしと認める」の意見が付与され公印を押されたものが帰ってくる。その書類を人事課に送付すると、2~3日で許可が下りる。私は27年間の公務員生活で10回弱このやりとりをしたが、全てスムースに許可された。一度だけ、第一法規のウェブマガジンに1年間の連載を持つことになった時に「どういう経緯で連載することになったの?」ということを聴かれて、経緯を説明するペーパーを作成し追加提出したくらいだ(それ以降は最初から経緯説明ペーパーを別途付けるようにした)。

なので、今回月夜さんが書いておられる経緯を読んで、目を疑った。「所属長の意見」の段階(当時は徳島県は所属長の許可だった?)で、当の所属長が許可するともしないとも判断を下さず放置をしたというのだ。状況から、BLという執筆物の当否判断を避けたものと窺える。形式的には公務への支障があろう筈もない、実際公務員と二足のわらじのプロ作家は何人もいる。形式面ではなく性質面から首を縦に振ることを躊躇わせた、といって横に振ることも人権問題に関わるからできなかった。だから、の放置であったと読み取れる。

しかしこれでは、月夜さんはたまらない。地方公務員法に違反する状態で何年も据え置かれてしまったのだから。

申請に対する意図的な不作為は、通常は怠業であって、あり得ない。おそらくその所属長は当時から人事課とも相談していて、人事課ぐるみで放置されたのではないかと、私は推測する。それがその後の人事課の曖昧模糊な対応にも繋がっているのではないだろうか。民間人と行政機関の間であれば、申請に対する不作為は行政不服審査法第3条に基づく審査請求の対象になるが、人事(内部管理)の場合はどうなのだろう。識者の教えを請いたい。

月夜さんのツイートを遡って昨秋分くらいまで目を通した。私的にもいくつかの出来事が重なって、昨夜の叫びに繋がったことが、ひしひしと伝わってくる。作品も読んで見たいと思った(BLはあまり免疫ないけど)。

これで思い出すのは、やはり先日の広島県職員の実名内部告発だ。それを取り上げた記事で、私は次のように書いている。

0903:「覚悟の内部告発」より

月夜さんの事例からも同様の状況が窺えた。月夜さん御自身がツイートで「山火事は、小火の内に消し止めろ」と書いている。そのとおりなのだ。下手に目前の難問から逃げてしまうと、事態は取り返しのつかないほど大きなものとなる。

人事課なり財政課なり管理部門は、庁内に対して絶大な権力を持っている。権力とは他人を自分の意に従わせる力だ。だから、難問を突きつけられても「知らん」と突っぱねれば、多くの場合、どうにかなる。その経験を繰り返せば、それこそが管理能力と錯覚する。違うのだ。突っぱねるべき場面はある。しかし、それが正当な場面と、そうでない場面を正しく見極めて、適切な総合的管理を行う能力が求められるのだ。

この件もしばらく展開を注視したい。こうした出来事から感じ考えることが、エンターテインメント公務員小説「やくみん! お役所民族誌」の土台を豊かで強固なものにしてくれる筈だ。

--------以下noteの平常日記要素

■本日のやくみん進捗
フィールドワークの泥縄勉強が追いつかず、今日は第一話本編最終回(51)の公開見送り。恐らくドラフトから一~二文の追記程度になると思うけど、もうちょい勉強しときたい。

■本日の司法書士試験勉強ラーニングログ
【累積327h35m/合格目安3,000時間まであと2,673時間】
講義動画流し聴き、勉強時間に含めず。

■本日摂取したオタク成分
『照柿』最終話、うん、凄かった。ちゃんと観られなかったけれど、名作の域かも。作品冒頭から印象的な夕焼け。工場の熱処理の色温度。子供の頃に見た火事。幼馴染みに教えられた色の名前「照柿」。悪魔の囁きで殺したという青年、その心情を理解する刑事、終盤での殺人。魔性の田中裕子(おい)。『マイホームヒーロー』第3話、陰惨なリンチが続く回だったがラストでの巧妙まで息もつかせぬ丁寧な展開だ。『もういっぽん!』第12~最終話、爽やかに終わったあ。これ、二期あるよね?

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