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在留資格から考える外国人材の雇用

 わたしたちがこれまで支援してきたホテル業界や農業法人では、最早、外国人材の活躍なしに仕事が回りそうにありません。運輸業界を専門とする友人の社会保険労務士は、2024年を目前に、自らのクライアントを見渡して、外国人材雇用への対応は喫緊の課題だと云います。

 弊社が、行政書士事務所の併設を決めたのは、当事者としてこの問題に真正面から取り組もうと考えたためです。

 行政書士の業務には、「国際業務」と呼ばれるものがあります。外国人が日本で働くために必要となる在留資格に関わる入管業務がそれです。

 在留資格の手続きは、外国人本人によって行うことが原則ですが(例外として法定代理人が申請するケースも定められている)、少々複雑であるため、外国人材の受け入れ機関や公益法人の職員、あるいは届け出のある弁護士並びに行政書士などがその申請を取り次ぐことを認められています。

 在留資格は、外国人が日本に入国して在留することを認める資格で、日本で従事できる活動などを類型化し、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)に基づいて定められています。その資格は、大きく「活動(含む、就労)資格」「身分資格」の2つに分けられ、内容や目的によって29種類に分類されています。活動資格うち就労系の在留資格には、「高度専門職」、「技術・人文知識・国際業務(以下、技・人・国)」、「介護」、「特定技能」などがあって、それぞれの資格には認定や取得のための細かい基準が定められています。

 たとえば、就労系の在留資格で比較的割合の多い「技・人・国」に認められた活動は、「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(入管法別表第一の一の表の教授、芸術、報道の項に掲げる活動、二の表の経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の項に掲げる活動を除く。)」とされています。

 一般の方が読んでもピンとこないかもしれませんが、この基準によれば、「技・人・国」の資格で技術者として雇用(活動)していた外国人を、人手が足りないからと云って安易に工場のラインの作業(活動)に就かせたりすれば、外国人本人は不法就労罪に問われ、在留期間更新の許可が下りずに就労を継続できなくなってしまったり、雇用主である企業は不法就労助長罪に問われたりすることもあります。そうした事態に陥らぬためにも、外国人を雇用する企業側は、入管関連法令や内部審査基準、さらには入管業務の実務上の運用ルールまで、しっかり把握しておかなければなりません。

 そのようなこともあってわたしたちのような専門家が存在するわけです。

 このように、就労系の在留資格では、資格に対応する所定の就労活動に限り活動が許されます。また、これらの資格には、現場での単純作業のみを想定した資格はありません。現場作業を想定した「特定技能」であっても、相当程度の知識や経験を必要とする技能を有する業務に従事させるものであって、補助的な作業を想定してはいないのです。在留資格制度の特徴を見てみると、外国人材の雇用に乗り出そうと考える企業は、自社の雇用のありかたを、今一度、見直しておく必要がありそうです。

 外国人材の雇用のあり方を考える際に、先般、視聴した東京都行政書士会主催の外国人材雇用に関するオンライン研修会での杉田弁護士の解説はとてもわかりやすいものでした。氏は当該分野の一人者です。その中で、氏は、外国人材の雇用においてはジョブ型雇用が非常に親和性の高い方法だと主張します。

 ジョブ型雇用とは、仕事(ジョブ)に人を付けるという考え方に基づく雇用形態で、必要な職務内容に対して、その職務に適したスキルや経験を持った人を採用する雇用方法をいい、主に欧米の企業で主流の雇用方法です。これに対して、採用の時点では職種を限定せず、入社してから適性などを判断して担当職務を決定する雇用方法をメンバーシップ型雇用といい、日本の新卒採用などがその典型例です。

 氏は、制度の特徴を考慮すれば、外国人材の雇用においては、自社の求める職種とその職種に欠かせない職能を決めて、該当の在留資格を確認した上で、それ相応の知識やスキルのある外国人材を探すという考え方に立つのが肝要だというのです。氏も指摘する通り、日本の雇用慣行に馴染んだ人事担当の方には多少戸惑うところがあるかもしれませんが、外国人材の雇用では、このジョブ型雇用の視点に立って人事戦略を立て直すべきとわたしも強く実感しています。

 氏の述べるジョブ型雇用に則した外国人材の雇用ステップの概念を図に示すと概ね以下のような流れとなります。

外国人材の雇用ステップ

 外国人材の雇用は、自社の人材ニーズの把握から始まります。そのためには、「なぜ今・自社に・敢えて・外国人材の力・が必要なのか」を突き詰めて考えておきたいところです。

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