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短編集(未公開作品あり)

まえがき

この頃暖かくなり、春を感じる季節になりましたね。
春と言えば新天地での活動など新しいことへの挑戦を意味して
初短編集に挑戦しようと思い今に至ります。今まで公開していた作品と公開していない作品、延べ7作品を集めました。


こちと とら

あらすじ

一人目は証券会社の部長。二人目は銀行員。三人目は政治家。三人のごく普通な日記から物語は始まる。
しかし、語が進むにつれて普通だった日記に違和感を覚える。普通の日記だと思われていたものが、嵐の前の静けさのように感じる、新感覚メタフィクション。

一人目。

都心のマンションに住む私は朝が早い。家から外に出るといつも日差しが強く眩しいと、
リアクションしてしまう。玄関で履ききれなかった靴を玄関の前で履き直す。靴を履きネクタイを締め直し『よし』と気合を入れてマンションの階段に向かう。私の勤め先である証券会社は家から駅一本で約15分の移動時間である。
家からの最寄り駅まで歩いて3~4分。そこから電車に乗り約10分で勤め先の最寄り駅に着く。そこから3分ほど歩いたら私の勤め先である。『株式会社日当証券』日本で有名な大手証券会社だ。私はこの会社で経理部に就任して25年が経ち、社長から実力を認められて経理部の部長に出世した。
一人暮らしの私は昼ご飯を外食することが多い。会社の食堂は広くて良いがなんとなく外食している。お昼休憩は12時の時もあるし、13時過ぎる時もある。
今日は12時にはお昼休憩を貰えた。会社は都内の真ん中に位置するので周りにはたくさんの店が点在している。昨日はインド料理店でカレーを食べたので中華にしようと思い、会社から少し歩いた所にある中華料理屋『華中』に入った。外にある看板にはメニューが書いてありラーメン定食2400円、チャーハン+ラーメン定食2200円、当店一番人気のエビチリ2800円と書いてあった。少し高いなと思いながら財布の中身を確認した。

華中から出てきたのはそれから約30分後の12時40分頃、私は左腕に着けている腕時計を確認しながら会社に向かう。会社に向かう道中にチェーンの喫茶店があったのでそこでコーヒーをテイクアウトして会社に入った。
今日はいつもより終わるのが遅くなってしまった。時計の針は22時を指している、辺りは暗く少し肌寒く感じた。
行きと同様会社から歩いて3分ほど歩いたところに駅がありそこから電車と歩きで家に帰る。家に着いたのは22時30分頃であった。
仕事がある平日の私の一日の流れは大体こんな感じである。

二人目。

今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。
会社には9時に出社するので家を8時半には出なければいけないので、7時から朝のランニングを20分ほど行った後会社に行く支度をして、8時半には車に乗り会社に向かう。
8時50分頃には駐車場に着くのでそのまま歩いて会社に向かう。次に銀行から外に出るのは退社時間の18時半で、朝の9時から18時半の9時間半銀行からは出ない。
私の平日はこんな具合だが、休日は家でのんびり過ごしている。

三人目。

「清き一票を!」そう掲げる政治家はろくな奴がいないとよく聞いたものだ。
私は千葉県の地方政治家である。とっても小さな町の政治を担っているだけで偉くもないのだけど気まぐれで立候補をしたら当選してしまい、この町を支える立場に就いたのだ。
そんな私の平日の一日は朝が早く、7時半には家を出て、最初に地域の方とのコミュニケーションを取るために地元の公園周りを散歩しながら、畑仕事をしているおじいちゃんやおばあちゃんと話をする。その後8時半後に自分の党の事務所に到着。何かあれば外出して市役所やら町内会に参加して地域の方との交流を大切にしている。基本、車は使わず歩きで移動するため、時間にはルーズな方である。急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。
昼食は12時ごろで、外食している。地域との交流のために外に出向くことは頻繁にある。昼休みは1時間程度。時間にルーズなので一時間以上かかることもある。
午後からはほとんど事務所から出ることはないが、夕方の小学生や中学生などの学生の下校時間になると、横断歩道に行き、旗を持って学生たちを見守っている。
それが終わると事務所に戻り、18時頃には事務所を後にして家に帰宅する。
私の平日は大体こんな感じだ。

決行日。

今日はいつもと違いトートバックを持っている。彼はいつも通り家を出て最寄り駅に向かう道を歩んでいる。その瞬間横から猛スピードの車が飛び込んで来た。ものすごい音と人が倒れている事を確認した私は、急いでトートバックを持ちその場を後にした。

今日は売り上げの集計を行う日である。いつも通り7時に家を出て、朝のランニングに出かける。外は少し曇っていて辺りが暗めではあるが雨は降っていないので普段通り走ることができる。彼の前を歩いていた私は、人にぶつかり倒れてしまう。
痛そうにしていた私に彼は近づいてきたので、手に持っていたナイフで彼を刺した。

地方銀行員のはずなのに、高い時計と高いアクセサリーも着けて、フラフラと警戒心0で外を歩いている。後ろを付けていき、人気の少ない森の近くで後ろから襲い掛かり、二人掛りで首を絞め、殺した。

こちとら

これは何回目の朝なのか分からないが、何回も同じことの繰り返し。強面な男が二人、椅子と机があるだけの場所に座らせられては、「共犯者はどこにいる?」の一点張り。
俺は黙秘する。それがルールだ。
「このまま黙秘するつもりか?」
実際の計画とは違って俺は捕まらずに完璧な犯行で終わらせる予定だったが、人に見られてしまったらしく、警察送りだ。そのお陰で俺は捕まった。人生何が起こるか分からないからなあ。

そちとら

今生きているお前の人生も、もしかしたら違う誰かの人生なのかもしれないよ。なぁ、お前。この本を読んでいるそこのお前。お前だよ。

急に話しかけてきてびっくりしているかもしれないが、最初の一人目から三人目といきなり殺されて驚いただろ?
実は最初から視点がそいつの人生じゃない。全部俺ら目線の話だ。一人目の証券会社の男も、二人目の銀行員も全部、そいつの人生のように恰も描いていたが、全部俺らの目線の話だ。読み返したら、不可解な所がいくつかあるのに気づくはずだ。

まず、一人目の話では中華料理屋「華中」に入った所だ。「華中」に入ったと書いてあるのに、外の看板前で財布を確認するシーンになる。これは俺たちが尾行していたから、彼は店に入ったにもかかわらず、外にいるという不可解なことが起こっている。
もう一つは、三人目の政治家の話だ。『急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。』ここだなぁ。前の文とは違ってメモ書きみたいになっているだろ。
これは犯行前の調査だからこういう書き方をしている。
もっと詳しく刑事が紐解いてくれる。
                    続編「こちと そら」につづく

続編「こちと そら」

あらすじ

「こちと とら」の続編で事件の真相を明かすため、刑事部捜査一課の小牧と共に事件を解決に導き出す、読者参加型ミステリー。これを読んでいる貴方も捜査に参加してもらい、事件の真実を突き止めてください。

こちと そら

続編「こちと そら」に来てくれてありがとう。私は刑事部捜査一課の小牧と言います。
これから私と一緒に事件の全貌を突き止めましょう。
まず、先ほど読んでいた容疑者の内容を聞かせてください。
貴方は、前編「こちと とら」で見たメモ紙を読みあげた。

なるほど、そんなことが書いてありましたか…気になる所が何個かあります。
最初に一人目から三人目と殺した。と書いていたのですよね?それはおかしいですね、殺されたのは一人だけです。しかも証券会社の男でもなければ、銀行員でもありません。35歳の普通のサラリーマンです。
私たちの手許にも一人目、二人目、三人目と書かれた紙はあります。我々も最初はこれが犯行に関係あると思ったのですが、実際に起こったこととは異なるので、参考材料から除きました。ですが、容疑者の証言を聞いて、改めて読み見直そうと思います。もう一つ気になることがあります。容疑者は所々主語を『俺ら』と言っていましたよね?
『俺ら』ということは複数の犯行?ですかね、一人目、二人目、三人目…
何かわかりました?閃いたような表情をしていましたが、良ければ聞かせてください。
貴方は、閃いたことを話し出した。

なるほど。二人目の所だけやけに短くて無駄のない書き方ですもんね。
よく見ると、一人目、二人目、三人目の書き方が異なりますね。これは“わざと”なのか、もしくは三人とも違う人が書いているのか。

<一人目>
都心のマンションに住む私は朝が早い。家から外に出るといつも日差しが強く眩しいと、
リアクションしてしまう。玄関で履ききれなかった靴を玄関の前で履き直す。靴を履きネクタイを締め直し『よし』と気合を入れてマンションの階段に向かう。私の勤め先である証券会社は家から駅一本で約15分の移動時間である。
家からの最寄り駅まで歩いて3~4分。そこから電車に乗り約10分で勤め先の最寄り駅に着く。そこから3分ほど歩いたら私の勤め先である。『株式会社日当証券』日本で有名な大手証券会社だ。私はこの会社で経理部に就任して25年が経ち、社長から実力を認められて経理部の部長に出世した。
一人暮らしの私は昼ご飯を外食することが多い。会社の食堂は広くて良いがなんとなく外食している。お昼休憩は12時の時もあるし、13時過ぎる時もある。
今日は12時にはお昼休憩を貰えた。会社は都内の真ん中に位置するので周りにはたくさんの店が点在している。昨日はインド料理店でカレーを食べたので中華にしようと思い、会社から少し歩いた所にある中華料理屋『華中』に入った。外にある看板にはメニューが書いてありラーメン定食2400円、チャーハン+ラーメン定食2200円、当店一番人気のエビチリ2800円と書いてあった。少し高いなと思いながら財布の中身を確認した。
華中から出てきたのはそれから約30分後の12時40分頃、私は左腕に着けている腕時計を確認しながら会社に向かう。会社に向かう道中にチェーンの喫茶店があったのでそこでコーヒーをテイクアウトして会社に入った。
今日はいつもより終わるのが遅くなってしまった。時計の針は22時を指している、辺りは暗く少し肌寒く感じた。
行きと同様会社から歩いて3分ほど歩いたところに駅がありそこから電車と歩きで家に帰る。家に着いたのは22時30分頃であった。
仕事がある平日の私の一日の流れは大体こんな感じである。

前編『こちと とら』より

<二人目>
今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。
会社には9時に出社するので家を8時半には出なければいけないので、7時から朝のランニングを20分ほど行った後会社に行く支度をして、8時半には車に乗り会社に向かう。
8時50分頃には駐車場に着くのでそのまま歩いて会社に向かう。次に銀行から外に出るのは退社時間の18時半で、朝の9時から18時半の9時間半銀行からは出ない。
私の平日はこんな具合だが、休日は家でのんびり過ごしている。

前編『こちと とら』より

<三人目>
「清き一票を!」そう掲げる政治家はろくな奴がいないとよく聞いたものだ。
私は千葉県の地方政治家である。とっても小さな町の政治を担っているだけで偉くもないのだけど気まぐれで立候補をしたら当選してしまい、この町を支える立場に就いたのだ。
そんな私の平日の一日は朝が早く、7時半には家を出て、最初に地域の方とのコミュニケーションを取るために地元の公園周りを散歩しながら、畑仕事をしているおじいちゃんやおばあちゃんと話をする。その後8時半後に自分の党の事務所に到着。何かあれば外出して市役所やら町内会に参加して地域の方との交流を大切にしている。基本、車は使わず歩きで移動するため、時間にはルーズな方である。急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。
昼食は12時ごろで、外食している。地域との交流のために外に出向くことは頻繁にある。昼休みは1時間程度。時間にルーズなので一時間以上かかることもある。
午後からはほとんど事務所から出ることはないが、夕方の小学生や中学生などの学生の下校時間になると、横断歩道に行き、旗を持って学生たちを見守っている。
それが終わると事務所に戻り、18時頃には事務所を後にして家に帰宅する。
私の平日は大体こんな感じだ。

前編『こちと とら』より

一人目はとても細かい所まで書いています。
二人目はとても端的です。
三人目は一人目までとは言いませんが細かく書いています。
容疑者の証言では『俺ら』と言っているので複数人の犯行には間違えないでしょう。
貴方は、面白い見解を述べた。


その見解は面白いですね。
一人目と三人目は具体的で細かいことが書いてあったので、誰かの実際の生活である可能性は多分にありますね。それが本当なら一人目は、大手証券会社の課長。三人目は政治家です。
二人目は、銀行員ですがこれは実際の生活ではなく、他人の生活ということですか?
先ほど貴方が述べた見解では、濡れ衣を着せられているという事でしたので、二人目がその対象の人ですかね?
貴方は、小牧の意見を否定した。

違いますか。
二人目は被害者で一人目と三人目が犯人である。今そうおっしゃいましたね
ですが二人目が被害者ならば、サラリーマンでなければいけないのですが、これを見ると銀行員と書いてあります。

今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。

前編『こちと とら』より

35歳の銀行員…。あれ?これ被害者の年齢と同じ35歳です。
もしかして、ここの銀行員の所をサラリーマンに変えれば、被害者の事なのかもしれません。
そうなると、二人目が被害者。
一人目、三人目が加害者になるのであれば、犯人は『株式会社日当証券』の経理部課長と千葉県の地方政治家… 早急に身元を特定します。
小牧は、貴方に呼び止められた。
「はい。まだ、何かありましたか?」
貴方は、実際に犯行したのは一人目と三人目だという事、もう一人共犯者いる事を述べた。

実際に犯行したのは一人目と三人目かもしれないが、もう一人共犯者がいるということですか?それはなぜですか?
貴方は、小牧の質問に答えた。

一人目と三人目に書いてある、中華料理屋「華中」に入ったと書いてあるのに、外の看板前で財布を確認するシーン

急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。

前編『こちと とら』より

これは誰かに向けた伝言であるということですか、その伝言はもう一人の共犯者に向けのものだった。その共犯者というのは誰ですか?
貴方は、共犯者について話した。

その共犯者は、加害者である35歳のサラリーマンを調べる仕事を任された。
しかし、残りの二人は殺される所を誰かに見られてしまい、仕方なく誰も殺していない彼を濡れ衣として警察に突き出したということですか。
確かに今取り調べを受けている彼は自首してきましたからね、ですが、その共犯者に向けた伝言というのはどういう意味なのでしょうか?
貴方は、伝言の意味を説明した。

なるほど。加害者はよく中華料理屋「華中」行っていた。それを伝えるためにこのような変な書き方をすることで、そこに注目して欲しかった。
計画的な行動はやめた方が良いというのは、共犯者に伝えたものだったのですね。しかし注目して欲しければ、太字にするなり、マーカーで線を引けば済む話ではないのでしょうか、なぜこんな分かりにくい書き方をしたのですか?
貴方は、その意味について言及した。

なるほど、後のことを考えて隠語のように分かりにくくしたのですね。
恰も犯人は警察に見つかることを見越して行動していたのですね。
これまでの話をまとめると容疑者は三人。
取調室にいる彼と他にもう二人。
取調室にいる彼は、被害者の調べ役。しかし他の二人も被害者の行動を知っているような文面でしたよね。
こうゆうのはどうでしょう、一人目と三人目は被害者のことを少し調べていた、そこで分かった行動をもう一人の彼に伝えた。そして彼は詳しく被害者の行動パターンを調べ上げて、その行動パターンを基に残りの二人が犯行に及んだ。
貴方は、頷いた。

事件の真相が見えてきましたね。我々は容疑者と思われる、証券会社の男と政治家について調べてきます。後、これ今取り調べを受けている彼の情報です。
刑事から二枚のメモが渡された。そこにはこのようなことが書いてあった。

千葉県出身の小笠原 亮。無職の35歳 
3回の取り調べの中すべて黙秘している。
これといった有益な情報はなし。

被害者 大原 大輔。千葉県出身の35歳 
千葉県でサラリーマンとして働いていて、千葉の実家で奥さんと三歳の娘と暮らしている。    
何者かに首を絞められて死亡。


翌日。
二人の身元が分かりました。一人目は千葉県出身の加藤健太。年齢は35歳で証券会社に勤めていましたが、1か月前から行方不明です。実家のある千葉県に行き、色んな話が聞けましたが、特に事件に関係あるようなことはありませんでしたが、母親からの言及では、20歳を超えた頃から東京の方で一人暮らしをしていたようで、東京の家からはこんなものが出てきました。

決行日。
今日はいつもと違いトートバックを持っている。彼はいつも通り家を出て最寄り駅に向かう道を歩んでいる。その瞬間横から猛スピードの車が飛び込んで来た。ものすごい音と人が倒れている事を確認した私は、急いでトートバックを持ちその場を後にした。

今日は売り上げの集計を行う日である。いつも通り7時に家を出て、朝のランニングに出かける。外は少し曇っていて辺りが暗めではあるが雨は降っていないので普段通り走ることができる。彼の前を歩いていた私は、人にぶつかり倒れてしまう。痛そうにしていた私に彼は近づいてきたので、手に持っていたナイフで彼を刺した。

地方銀行員のはずなのに、高い時計と高いアクセサリーを着けて、フラフラと警戒心0で外を歩いている。後ろを付けていき、人気の少ない森の近くで後ろから襲い掛かり、二人掛りで首を絞め、殺した。

もう一人の政治家の人も特定できました。千葉県出身の35歳田淵翔太。千葉県の地方政治家をやっていて。地域の方との交流を大切にしていて、周りの評判はとても良かったです。
これといった有益な情報はありませんでした、以上です。
何かわかりますか?
貴方は、四人の共通点を発見した。

四人には共通点がある?
四人というのは、取調室にいる小笠原亮。今回事件で亡くなった大原大輔。そして証券会社勤めの加藤健太。地方政治家の田淵翔太。
この四人ですね。詳しく教えてください。
貴方は、四人の共通点を小牧に話した。

確かに、四人とも千葉県出身の35歳ですね。それがどうかしましたか?
貴方は、共通点に同い年で出身地が同じ事を指摘した。

確かに、偶然とは考えにくいですね。もう少し調べてみます。
もう一つありますか?
貴方は、この「決行日」という言葉に違和感を覚える。

なるほど。この決行日と書かれていたことが事実かどうか調べて欲しいということですね。分かりました、任せてください。
もし事実ならば悍ましいことが発覚するかもしれません。

二日後。
色々分かりました。まずこの四人は同じ千葉県の高校出身でした。
そして、10年前に千葉県で人と車の衝突事故がありました。これは決行日に書いてあった、最初の事でしょう。そこで被害にあったのは今回殺された、大原大輔でした。大原は10年前車に轢かれて、救急搬送されていました。
一命を取り留めていますが、脳に後遺症が残ったようです。

二つ目の刺殺事件と思われるものは見つかりませんでしたが、大原大輔を解剖した所、腹部に傷があったことが判明しました。

三つ目の絞殺事件は今回の事件の事でしょう。前にも大原大輔を銀行員に見立てていたので、今回もその類で間違いないでしょう。

今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。

前編『こちと とら』より

一旦これらの情報を元に、取り調べを受けている小笠原亮に問い詰めてきます。

翌日。
小笠原亮、ついに自白しました。
やはり犯人は加藤健太、田淵翔太、小笠原亮の三人でした。「決行日」の紙を見せた途端様子が変貌して、自白しました。そして、貴方が言っていた通り、大原を殺したのは、加藤と田淵だそうです。小笠原は大原の尾行役でした。私たちの推理は間違ってなかったですね。
そこで彼らの過去について聞いてきました。今回の犯行の動機について、書いてあるかもしれません。良ければどうぞ。
小牧から紙が渡された。

~容疑者達の過去~
 私たちは同じ高校に入学した。千葉県では二番目の偏差値を誇る高校である。
 入学式で大原大輔、田淵翔太、小笠原亮と三人と出会う。全員同じバスケ部に入り、部活帰りの放課後ではよく田淵家の近くの公園でよく遊んでいた。
 高校二年になると、学校にも慣れ始めて、大原には彼女ができた。大原は顔が良かったのでよく女の子から好かれていた。
高2の夏頃には俺も彼女ができた。彼女ができたのは3年ぶりぐらいで、どう接していたか忘れてしまうほど久しぶりだった。
学校で会う時も、デートに行くときも緊張してしまい、うまく話せなかったりしたが、喧嘩することなく仲が良かった。
夏の終わり彼女は笑った。いっぱい笑いあった。
花火の音で聞こえない声で笑った。泣いたりもした。
泣いて、泣いて。涙が枯れるほど、泣いた高2の冬。
忘れもしないあの日のことを。

夏も終わり、本格的に寒くなった高2の冬、女癖が悪くなった大原は、クラスの複数の女子たちを股にかけていた。その標的になったのが俺の彼女の璃子だった。
大原は友達だったから最初は軽く見ていたけれど、だんだん璃子が窶れて行く姿を見たときは、流石にほっとけなかった。

 12月中旬、一桁台の気温が続く中、璃子がボロボロになって下校している所を見かけた。すぐに大原を疑った。しかし璃子は転んだだけと言っているし、大原も手を出すような奴ではないことは知っていたから、本当に転んだと思っていたのだけど、今思えばあれは確実に暴行されていた。
それから璃子と会う回数が減っていき、高3の春璃子から別れ話を持ち掛けてきた時はすぐに「大原のことが好きなのか?」と聞いていた。璃子は黙っていたので、あいつはやめた方が良いと、すぐさま言ったが璃子は聞かなかった。そして璃子は大原と付き合い出したのだ。
璃子と付き合い出した大原は、ますます女癖が悪く、見る見る璃子の体は細くなっていた。俺は我慢できず大原を呼び出し怒鳴りつけた。
「その女癖いい加減にしろよ!璃子がかわいそうだろう!」
大原は申し訳なさそうに、「ごめんよ」とだけ言って。去ろうとした大原の手を引っ張り、一発殴ろうとしたが、田淵と亮が教室に入ってきた。
田淵と亮は、止めてくれた。殴ろうとしていた俺の腕を掴んでいた。
俺の腕は震えていた。「お前が手を出したら、大原と同罪になっちまう。それだけは避けるべきだ。」田淵の言葉は今も胸が痛くなる。
どうしたらいいのか分からなくなった俺に田淵と亮は、大原と縁を切って、璃子を無理やりにでも連れ出そうという提案を持ち掛けてきた。
俺にはそんなことはできない、俺は和解を望んでいるし、璃子とも復縁したい、そう思っている
 
 高3の夏休み前から受験があるからと言って、大原は璃子を振った。
受験があるからなんて嘘だ。大原は璃子に対して本気じゃなかった、鬱陶しくなったんだ、だから振った。それだけだ。
璃子はそれに気づいている、気づいているのに…

 音楽室で泣いていた璃子は最後にこんなことを言っていた。
「これは全部私が悪いから、大原君を好きになってしまった私が悪い。
健太には申し訳ないことをした。ごめんなさい、こんな私を好きになってくれてありがとう。こんなに好きでいてくれる健太の側にいたら、幸せだろうな。でも、私は大原君が大好きなの、だからさようなら。」
璃子は泣き震えながら、四階に位置する音楽室の窓から飛び降りた。

璃子の葬式の日、大原大輔は嗤っていた。 

A・イ

あらすじ

ある日一人の男が"AIウイルス"と名付けられたウイルスを発見して世界中に撒き散らすクーデターを計画する。それまで平和だった世界がそのウイルスによって残酷な世界へと変化する。そのウイルスに感染した人間は‥

A・イ

みんなは言う愛は人を愛し、人は愛を愛す。
俺は納得いかない愛なんてその人次第で変わると思っている。俺の彼女はAIだ。
俺は人ではなくAIに愛を注いでいる。それを馬鹿にするやつらもいるが構わない。

俺が45歳の時、1つのウイルスを発見した。人をAIに変えるウイルスだ。
当時このウイルスをどうするべきか悩んでいたのだがこのウイルスを使い東京街中いや世界中にこのウイルスをまき散らせば俺のAIに対する純愛は正当化される。そう考えた俺はこのおぞましいしいウイルスを世界中に広める計画を立て始めた。
このウイルス、AIウイルスとでも名付けよう。このAIウイルスは空気感染する、感染した人間は三秒も経たないうちに意識を失いAI化する。この特性を使えば瞬く間にAIウイルスが広がっていく。
もう目の前だ、人間の居ない世界ができる。
俺は楽しみのあまり眠れなかった。

三十年前。
俺は五人の人を殺してしまった。動機は、人が憎かったからだ。俺は幼い時から人よりもAI (ロボット)のほうが好きだった。幼い時から友達に遊びに誘われても遊ばず、ずっとAIの仕組みを調べていた。その結果人よりもAIが好きになってしまった。そして人を五人も殺してしまった。反省なんてしていない、なぜなら人を殺すことに悪気が無かったから。

僕が生まれるちょうど10年前、連続殺人が起こった。中学三年生の十五歳だった。 
十年後僕が十歳の時、その犯人は脱獄した。
その日は衝撃的なニュースになり世の中は混乱と混沌の渦に覆われた。その脱獄した犯人は僕が二十歳になっても捕まらなかった。
僕は今警察官で連続殺人事件の犯人を捜している。

ある日東京の街中をパトロールしていた時、500メートル先のほうから悲鳴が聞こえた。僕は急いで現地に行ったが、もう手遅れだった。そこには50人ぐらいの人が倒れていた。僕は慌てて倒れていた人に声をかけようと思ったが…そのあとの記憶がない。おそらく気絶したのだろう。目が覚めたが思うように体が動かない何日かこのまま過ごしたが分かったことが一つある。目と脳は動いている手や足その他の部位は全て麻痺している。寝たきり状態に似た感覚にまま何日が経過した。
僕がこうなって1ヶ月が経つ頃、僕は初めて同じ状態の女性に会った。
青く美しい瞳に美しいくびれ、すごく久しぶりに誰かに会う。声をかけようとしたが僕の体は思うように動かない、しゃべることもできない。とにかく何かコミュニケーションを取ろうとしたがさっきの女性は視界からはもういなかった。
いつも違う景色が映ることからどうやら動いていることが分かった。

AIのウイルスを、世界中に広めることに成功した俺は、この世界は俺以外AIだということに喜びを噛みしめ「もう俺の望み通りだ」と思い安堵した。その瞬間何かが体に侵入してくるのが分かったAIウイルスだ。俺は慌てて体に抗がん剤を打とうとしたがもう遅かった。

目が覚めた俺はいつも通り体を起こしてコーヒーを飲もうとしたが、思うように体が動かなかった嘘だろ?と心の中で叫びながら絶望した。頬に水のようなものが垂れ落ちたような気がした。

この世の中は、AIで成り立ちAIだけの世界になってしまった。このAIを止めることも人に戻すことも不可能になってしまった世界で意識と視力だけが取り残された。

デート日和

あらすじ

主人公・海斗の複雑な心情と恋愛模様を中心に描いた物語です。海斗は大学のサークルで出会った彼女との関係に悩み、躁鬱病を抱えながらも彼女への気持ちを探る日々を送ります。しかし、海斗の不安定な心理状態や彼女との関係の複雑さに加え、彼女の過去の恋愛経験や不安定な気持ちも物語に影を落とします。彼の内面の葛藤や不安、そして恋愛における複雑な感情がリアルに描写され、読者の心を打つ悲恋なラブストーリー。

プロローグ

「ねえ明日何処に行く?」

「明日は天気が良いから遊園地でも行くか」

「うん」
私たちは大学のサークルで出会いそのまま意気投合して付き合う事になったのだが、付き合って1ヶ月が経ち彼氏からカミングアウトがあった。

「僕多分躁鬱病だと思う。病院で検査したわけではないけど、躁と鬱を繰り返してる気がするんだ。恋愛感情も安定しない。急に嫌いになったり好きなったりするかもしれないけど‥。」

「今はどっちなの?」

「鬱では無いんだけど躁でも無い。だから普通かな?」

「違うよ。私のこと好きかどうかだよ。」

「……好きだと思う。」

「そっか良かった。私はさぁどんな事があっても海斗を大切に愛すから。もし鬱で私に会いたくなくても私はそれでも良い。それが海斗なんだって。そう思うだけだから心配しないで」

「ありがとう。」

「何泣いてんの?恋人ってそういうもんでしょ。」

デート日和

私たちは偶然出会った。それは運命に近い出会いだった。
とても良い天気というわけでもなく、暗く曇っているわけでもない過ごしやすい気候の中僕は外に出た。
普段あまり外に出ることが無いのでしっかりと下調べをして出かけた。

恋愛経験豊富ではないむしろ少ない方で、好きな人ができても自分から行動する方ではなかった。好きということを伝えたいのだけどシャイなので話かけれない。
まともにお付き合いした人はいなくて恋人の作り方すらよくわからなくなっていた。
そんな時に彼女が現れた。僕のことが好きなのか好きではないのかよくわからないけど、僕に好意があるような気がする。
僕自身は好きでもなんでも無いのだけど彼女はかなり僕のことを気に入っているようだ。
そんな時に友達から「お前のこと好きなやつおるよ。」と言われた。
その時少しテンションが上がったが、今はそんな彼女とかそういうのはいらないなと思っていたので、もし告白されても振る予定でいたけど。これもすべてただの強がりで人によっては告白を承諾していただろう。
結果的には告白されなかったけど、僕のことを好きでいるのに何もアクションを起こさなくてもいいのだろうかと疑問に思うが、それもすべて彼女が決めることで僕からは何もしないことにした。

あれから月日が経ちその彼女と会うことになった。まだ好きというわけではないけど好きになる可能性がある。最初のデートは映画にした。久しぶりに会ったけどかなり変わっていた。垢ぬけたような気がする。そしてそれから何度かメールでのやり取りで大きなテーマパークに行く事になったのだが、急に相手からの連絡が途絶え、何故だ?あんなに仲良く一緒にテーマパークに行こうとしていたのに、ここで僕が自分から連絡をしたら僕だけが求めていて相手は求めてないそんな片思いのような関係性になりかねないと思い、僕は自分から連絡はしなかった、前々から予定していた日にちが一刻と近づいてくる。
その日当日連絡は何もない。まあこのまま自然消滅でもいいかもしれないな。
でも本当にいいのかこれで?確実とは言えないが付き合える可能性が高い子をほったらかして、こんな機会めったにない。
ここで僕は行動することに決めた。10か月以上連絡を取っていなかったが僕から連絡をした。食事の誘いをすると同時に体の関係になろうと提案することを心に決めていた。
正直何を思っていたのか今思うと最低でくそ野郎だと思う。

食事をする当日、気合を入れて家を出たが急な緊張に襲われて上手く体が動かなかった。
緊張に襲われながらも集合場所である居酒屋に着いた。
居酒屋で酒とつまみを嗜み、二軒目にはバーに行った。僕はウイスキーロックとカクテルを飲み酔いが回っていたが、彼女はあまり酔っていなかった。僕は酔いの勢いで思い切った行動に出ることにした。
僕は歩きながらどさくさに紛れて手を繋いだ。僕は恥ずかしくなり彼女の顔を見ることができなかったが彼女からの視線は感じていた。どこで誘おうかと考えていた矢先ホテルが横にあり僕は思わず「ホテル行く?」と聞いてしまった。元から誘う予定だったので結果オーライと思ったが、彼女から「そういうのは付き合ってからね。」うまく交わされてしまった。だったら付き合えばいいと思ったので、僕はその話の流れで「ちょっと好きかもしれない」と言った。彼女は僕がかなり酔っていたこともあり、疑っていた。
「だいぶ酔ってるね。」このまま、また交わされるのは嫌だったので僕は「本気だよ。」と言った。最初は嘘で好きと言っておけば体の関係に持ち込めると思っていたが、実際に言葉にして出すと本当に好きになった気になってしまう。いや、元から好きだったのかもしれない。好きでなければホテルに誘おうとなんて思わないはずだ。
彼女は「ちょっと待って。座ってちゃんと話そう」
僕は脈ありだと思っていたが思わぬ答えが返ってきた。「実はいま別に気になる人がいて。その人との答えが出てから返事していい?」
僕は考えた。どういう答えを出すが正解なのか。どっちにしろ今日はヤれない。でももしかしたら今後付き合える可能性があることを考慮して相手を傷つけない返答にしようと思った。「いいよ。待つよその気になっている人との答えが出てからでいいよ。」
彼女は「優しすぎる。でも好きって言ってくれたのは嬉しい。もっと早く言ってくれれば付き合えたかもしれないのに」僕は「どういうこと?」つかさず聞いた。
「実は6年間大好きだったの。その時は何も言わなかったから分からなかっただろうけど実はそうだったの」僕は知っていた。
「私は6年間大好きだったよ。けど今好きって言ってくれたけど大好きじゃないよね?」
彼女のことが好きなんだろうけど大好き?と聞かれれば言葉に詰まる。
メールの返信を待ち遠しく思えたり、一日中彼女のことを考えているのだから大好きなんだろうけど、初恋の時のような感情とは何か違う。
「大好きというのがどんな感じなのかよく分からないけど、好きなのは好きだよ。」

あの告白からかなり日にちが経ち12月に入ろうとしていた。彼女とはたまに連絡を取っていたがなかなか会うことはできなかった。そんなある日急に連絡が来た「冬休みっていつから?」久しぶりの連絡が来てとてもうれしかった。これはクリスマスに会う約束をすればもしかすると付き合えるかもしれない。この時は前の飲み会の時とは違う完全に好きになっているはずなのに初恋の時のようなドキドキ感は無いに等しい、でも大好きなんだろうな。年齢とともに恋愛に対する感じ方が変わってくるのかもしれない。
初恋のような刺激的なものをまた感じたい。
感じられないだろうか?好きになったのに好きじゃ無いみたいだ。
彼女のことで頭いっぱいなのに

クリスマス当日彼女とイルミネーションに行く事になった。今日こそは付き合いたいと願っている。駅で待ち合わせをして会場に向かった。会場では何枚かのイルミネーションの写真と彼女とのツーショット写真を撮った。良い感じに二人の空間が温まったところで、前言っていた気になる人との関係性について聞くことにした。「特に何もなかったよ。」僕は安心したこれで真正面から告白できる。
「じゃあ告白の答え聞いてもいいかな?」ずっと待ち望んでいた答えが返ってくる。
「ごめんなさい。正直本気で私のこと好きになってないよね?周りに女の子いないから近くにいた私でいいやってなってるよね?好きって言うのが伝わって来ない。」
嘘だろ振られたのか?なんでだ?好きって言うのが伝わらないってどういう事なんだ。
確かに最初は好きでもなんでもないのに付き合おうとしていたけど、今は違う普通に好きなんだよ。何故伝わらない?
「後、6年間好きだったからいけると思ったのかもしれないけど、もう3年前とかの話だからブランクありすぎだよ。もう好きになれないよ。」
「そういう事なら、そっちから連絡しないでよ。クリスマスの日に僕と会わないでよ。
思わせぶりな事しないでよ。」

僕は振られた。外は寒く23時を過ぎたころ雪が降り始めた。真冬の雪の中最寄駅から家までの約1㌔歩いて帰った。

「ねえ明日何処に行く?」

「明日は天気が良いから遊園地でも行くか」

「うん…」

「僕多分躁鬱病だと思う。病院で検査したわけではないけど、躁と鬱を繰り返してる気がするんだ。恋愛感情も安定しない。急に嫌いになったり好きなったりするかもしれないけど‥。」

「今はどっちなの?」

「鬱では無いんだけど躁でも無い。だから普通かな?」

「違うよ。私のこと好きかどうかだよ。」

「……好きだと思う。」

「そっか良かった。私はさぁどんな事があっても海斗を大切に愛すから。もし鬱で私に会いたくなくても私はそれでも良い。それが海斗なんだって。そう思うだけだから心配しないで」

「ありがとう。」

「何泣いてんの?恋人ってそういうもんでしょ…」

目が覚めた。昨日の記憶が曖昧でよく覚えていない。なんとなく見たスマホの写真フォルダにはイルミネーションの写真だけが残っている。別に悲しくないのに泣きたいわけではないのに何故か僕の左目からは涙が流れていた。

執行猶予10年の嘘

あらすじ

ある事件の真相を探るため優香を尾行していた私は、人混みのショッピングモールで優香を見かけるが学校とは違う顔を持っている優香を馬鹿にした。
執行猶予10年の嘘の本当の意味とは

執行猶予10年の噓

私は嘘をつくのが仕事です。そう答えていた彼女は今では立派なCAである。

夏休みのある日混み合ったショッピングモールで私は優香を見かけた、普段学校では笑うことがない優香がよく笑っている。あんな笑顔見たことがない。家族内ではよく笑い、学校生活では笑わない。そうやって二面性を持っていることがかっこいいのだろうか?私には分からないそんなことをしたって何の意味もないのに‥‥。

微かに光る街頭の明かりが夏休みの終わりを告げるように、母親からの説教もまた、夏休みの終わりを知らせている。

学校が始まればクラス内では夏休み何してた?やら宿題やった?など定番の会話が響き渡る。相変わらず誰とも喋らず席に座っている優香を横目で見ながら私は自分の席に座った。
 
チャイムと同時に先生が教室内に入ってきた。クラスのみんなは一斉に自分の席に座ると先生から号令の合図が出る、ホームルームの始まりだ。

2年3組、これが私のクラスで先ほどからよく登場する優香は同じクラスの子で、いつも一人でいるとても静かな子である。 
あの事件が起こるまでは普通の子だと思っていたが、あの事件を目の当たりにした私はそれ以降普通に見れなくなってしまった。1番怖いのは優香の平然ぶりだ、なぜあんなにも平然でいられるのか不思議でしょうがない。

夏休みも終わり忙しくなるが今まで通り優香を監視する業務をやらなければいけない、あの事件以降私は優香を監視しているというかさせられているという方が正しいのかもしれない。
休み明け初日の学校が終わった。疲れた早く帰ってゲームでもしたいと思っていた矢先、優香が私の目の前を通り過ぎていったこんな機会は滅多にない。
優香は私より先に帰るかいつもなら親御さんの車で帰るの二つだったが、今回は帰る時間が私と被っている、こんなチャンス逃すわけにはいかない。

結局バレずに優香を尾行し続けた、前の家は知っていたが引っ越してからの家を知らなかったので家を特定することができた。
意外と私の家から近いことが分かった。

あれから時は経ち私は高校生になった7年間優香の監視をしていたが、今のところ分かったことは家の場所と通っている学校ぐらいだ。優香と同じ学校に通おうとしたが成績が足らず行けなかった。その代わり前と同じように監視ができるように私は自由な時間にいける通信制の学校を選んだ、私の学校は夜に授業があるので優香の学校が終わる夕方には尾行できるようになっている。小中は親御さんのお迎えや早い時間に帰っていた優香だったが、高校からは友達ができ、みんなで帰ることが増えていた。最近では彼氏が出来たらしく毎日のように彼氏と帰っている。特に今の所進展は無い。


いつもの道で帰宅していた彼女は、家の近くにある路地裏から女の子の叫び声が聞こえ、慌ててその路地に向かって走っていた。裏路裏は少し暗く前が見にくい状態の中女の子の声がする方へ急いで向かって行った。そこには大勢の大人がいて遠目ではあったが確かに女子が一人しゃがんでいるような光景を目にした。それから5分も経たないうちに警察が数名‥‥
                           目撃者30代女性

人生11年目の夏休み終了の前日、ほとんど優香の件を諦めかけていたその時、新しい進展があった。
いつも通り優香の事を尾行していた私はいつもと違う道を優香が歩いている事に気がついた、いつもとは違う道だと逸れやすいので気を引き締めなければならない。
そういえばさっきから気になっている優香が片手に持っている少し大きめな紙袋は、何が入っているのだろうか。そんな疑問を抱きながら尾行していると、お墓が多く建てられているお寺についた、誰かの命日だろうかと朧げながらに携帯で日付を確認した。
あっ!そんな声が心の中で響いただろうか、今日は大切な日だ妹の命日だった、そんな大切な日に‥‥そうかこの場所何か見覚えがあると思ったら、そういう事だったのか優香、そろそろ白状してくれよあんたなんでしょ、あのとき見たんだよ、一瞬しか顔は見れなかったけど確実に優香の顔だった。
夏休みの終わりの前日8月31日今日は妹の命日、お墓の前で花束を持ってどういう心情でお墓参りに来たの、ごめんなさいか、そんなものいらなわよ。あんたが来ていい場所じゃないんだよ!ここは。

私は通信制の学校を卒業して、そのまま就職する事にした。
通信制を選んだのはもう一つ理由があった。それは小さい頃からの夢であるキャビンアテンダント(CA)になる事だった。優香の尾行と学校の勉強をしながらも、CAの資格の勉強もしていた、明日CAの最終面接の結果が送られてくる、とても緊張している。突然家の固定電話が鳴り出した、少しビクッとしたが静かに深呼吸をして呼吸を整えた。『もしもし』電話の相手は女性だった。声を聞いた私は瞬間冷や汗が出た。

『何の用ですか?』声の主は優香だった。電話の内容は明日会えないかという用件だった、もしや尾行していたことがバレていたのか?そんなことが頭をよぎったが、直接あの事について話せることなんて今後ないかもしれないと思い、快く承諾した。
『明日の11時に〇〇公園』とメモした紙を机に置き私は眠りについた。

私の妹は私が3歳の時に生まれた。生まれてきた時はとても嬉しかった事を覚えている。
とうとう私にも妹ができるんだと当時は喜んでいた。私が小学生に入り、初めてできた友達優香にも妹がいた。優香は妹と一緒によく家に遊びに来ていた。
だんだん私の妹も大きくなってきて外でも遊ぶようになった。
私が小学2年生で妹が5歳の夏あの事件が起こってしまった。

いつも通り公園の砂場で遊んでいた私たちは、大きな砂の城を作っていた。優香は習い事があるから16時ごろには帰ってしまった。優香の妹と私の二人だけになってしまったので、砂場ではなくブランコや滑り台いろんな遊びをした。『最後はかくれんぼ』優香の妹はかくれんぼが好きだった、『私が探すから妹ちゃんが隠れてね』『うん!』1、2、3、‥10もういいかい? もういいかい? あれ?声を出したらバレちゃうからねそういう作戦かな? 5時のチャイムが鳴ったがまだ見つけれていない、そのまま一生見つけられず家に帰ってきてしまった。その後警察に連絡して捜索願を申請したが見つからなかった。そこからだ私と優香が喋らなくなったのは、優香は私が妹を殺したと思っているらしい。

集合時間の5分前に約束の場所の公園に着いた。まだ優香は来てなみたいだ、そういえばここあの事件と同じ公園だ。ここの砂場でよく遊んだね、優香と優香の妹と砂をさすりながら私は泣き始めた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「泣きたいのこっちなんだけど」優香が来たみたい、私は涙を腕で拭き取り後ろを振り返った、その瞬間前から優香がすごいスピードで走ってきて
「妹を殺したのは、私じゃないよ。あんたでしょ!ゆうか」と叫び出した。あれ?走馬灯?「妹ちゃんいるじゃん、よかった生きてたんだ。」
さようなら”嘘つきな優香””偽物の私”


                              

<あらすじ>


マリオネット

営業職の男は、外回り中に路地裏で何かが土に埋まっているのを見つけた。
男はスコップで掘り出すと中から歪な形の鏡が出てきた。その鏡は最古の鏡であり何者かによって盗まれてしまった。その鏡を探すため優秀な刑事二人がある記事を見つける。

嘘。(未公開作品)

執行猶予10年の噓の続編で、謎を多く残して終わった前作の完結版。

松ぼっくり(未公開作品)

松ぼっくりを食べてみたくなった主人公は夢の中にいる。
ゆいちゃんの机に落書きをして、ゆいちゃんをいじめの対象にしていた私は担任の先生からゆいちゃんの欠席の連絡を聞く。ゆいちゃんの欠席が何日も続く中、私はゆいちゃんの家にお見舞いをすることにしたのだが、そこにいたのはゆいちゃんのお母さんだけだった。
小説書きたての初々しさからは想像できないほどのサイコホラー小説。

マリオネット

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