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こちと そら

『あらすじ』
「こちと とら」の続編で事件の真相を明かすため、刑事部捜査一課の小牧と共に事件を解決に導き出す、読者参加型ミステリー。これを読んでいる貴方も捜査に参加してもらい、事件の真実を突き止めてください。

続編「こちと そら」に来てくれてありがとう。私は刑事部捜査一課の小牧と言います。
これから私と一緒に事件の全貌を突き止めましょう。
まず、先ほど読んでいた容疑者の内容を聞かせてください。
貴方は、前編「こちと とら」で見たメモ紙を読みあげた。

なるほど、そんなことが書いてありましたか…気になる所が何個かあります。
最初に一人目から三人目と殺した。と書いていたのですよね?それはおかしいですね、殺されたのは一人だけです。しかも証券会社の男でもなければ、銀行員でもありません。35歳の普通のサラリーマンです。
私たちの手許にも一人目、二人目、三人目と書かれた紙はあります。我々も最初はこれが犯行に関係あると思ったのですが、実際に起こったこととは異なるので、参考材料から除きました。ですが、容疑者の証言を聞いて、改めて読み見直そうと思います。もう一つ気になることがあります。容疑者は所々主語を『俺ら』と言っていましたよね?
『俺ら』ということは複数の犯行?ですかね、一人目、二人目、三人目…
何かわかりました?閃いたような表情をしていましたが、良ければ聞かせてください。
貴方は、閃いたことを話し出した。

なるほど。二人目の所だけやけに短くて無駄のない書き方ですもんね。
よく見ると、一人目、二人目、三人目の書き方が異なりますね。これは“わざと”なのか、もしくは三人とも違う人が書いているのか。

<一人目>
都心のマンションに住む私は朝が早い。家から外に出るといつも日差しが強く眩しいと、
リアクションしてしまう。玄関で履ききれなかった靴を玄関の前で履き直す。靴を履きネクタイを締め直し『よし』と気合を入れてマンションの階段に向かう。私の勤め先である証券会社は家から駅一本で約15分の移動時間である。
家からの最寄り駅まで歩いて3~4分。そこから電車に乗り約10分で勤め先の最寄り駅に着く。そこから3分ほど歩いたら私の勤め先である。『株式会社日当証券』日本で有名な大手証券会社だ。私はこの会社で経理部に就任して25年が経ち、社長から実力を認められて経理部の部長に出世した。
一人暮らしの私は昼ご飯を外食することが多い。会社の食堂は広くて良いがなんとなく外食している。お昼休憩は12時の時もあるし、13時過ぎる時もある。
今日は12時にはお昼休憩を貰えた。会社は都内の真ん中に位置するので周りにはたくさんの店が点在している。昨日はインド料理店でカレーを食べたので中華にしようと思い、会社から少し歩いた所にある中華料理屋『華中』に入った。外にある看板にはメニューが書いてありラーメン定食2400円、チャーハン+ラーメン定食2200円、当店一番人気のエビチリ2800円と書いてあった。少し高いなと思いながら財布の中身を確認した。
華中から出てきたのはそれから約30分後の12時40分頃、私は左腕に着けている腕時計を確認しながら会社に向かう。会社に向かう道中にチェーンの喫茶店があったのでそこでコーヒーをテイクアウトして会社に入った。
今日はいつもより終わるのが遅くなってしまった。時計の針は22時を指している、辺りは暗く少し肌寒く感じた。
行きと同様会社から歩いて3分ほど歩いたところに駅がありそこから電車と歩きで家に帰る。家に着いたのは22時30分頃であった。
仕事がある平日の私の一日の流れは大体こんな感じである。

前編『こちと とら』より

<二人目>
今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。
会社には9時に出社するので家を8時半には出なければいけないので、7時から朝のランニングを20分ほど行った後会社に行く支度をして、8時半には車に乗り会社に向かう。
8時50分頃には駐車場に着くのでそのまま歩いて会社に向かう。次に銀行から外に出るのは退社時間の18時半で、朝の9時から18時半の9時間半銀行からは出ない。
私の平日はこんな具合だが、休日は家でのんびり過ごしている。

前編『こちと とら』より

<三人目>
「清き一票を!」そう掲げる政治家はろくな奴がいないとよく聞いたものだ。
私は千葉県の地方政治家である。とっても小さな町の政治を担っているだけで偉くもないのだけど気まぐれで立候補をしたら当選してしまい、この町を支える立場に就いたのだ。
そんな私の平日の一日は朝が早く、7時半には家を出て、最初に地域の方とのコミュニケーションを取るために地元の公園周りを散歩しながら、畑仕事をしているおじいちゃんやおばあちゃんと話をする。その後8時半後に自分の党の事務所に到着。何かあれば外出して市役所やら町内会に参加して地域の方との交流を大切にしている。基本、車は使わず歩きで移動するため、時間にはルーズな方である。急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。
昼食は12時ごろで、外食している。地域との交流のために外に出向くことは頻繁にある。昼休みは1時間程度。時間にルーズなので一時間以上かかることもある。
午後からはほとんど事務所から出ることはないが、夕方の小学生や中学生などの学生の下校時間になると、横断歩道に行き、旗を持って学生たちを見守っている。
それが終わると事務所に戻り、18時頃には事務所を後にして家に帰宅する。
私の平日は大体こんな感じだ。

前編『こちと とら』より

一人目はとても細かい所まで書いています。
二人目はとても端的です。
三人目は一人目までとは言いませんが細かく書いています。
容疑者の証言では『俺ら』と言っているので複数人の犯行には間違えないでしょう。
貴方は、面白い見解を述べた。


その見解は面白いですね。
一人目と三人目は具体的で細かいことが書いてあったので、誰かの実際の生活である可能性は多分にありますね。それが本当なら一人目は、大手証券会社の課長。三人目は政治家です。
二人目は、銀行員ですがこれは実際の生活ではなく、他人の生活ということですか?
先ほど貴方が述べた見解では、濡れ衣を着せられているという事でしたので、二人目がその対象の人ですかね?
貴方は、小牧の意見を否定した。

違いますか。
二人目は被害者で一人目と三人目が犯人である。今そうおっしゃいましたね
ですが二人目が被害者ならば、サラリーマンでなければいけないのですが、これを見ると銀行員と書いてあります。

今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。

前編『こちと とら』より

35歳の銀行員…。あれ?これ被害者の年齢と同じ35歳です。
もしかして、ここの銀行員の所をサラリーマンに変えれば、被害者の事なのかもしれません。
そうなると、二人目が被害者。
一人目、三人目が加害者になるのであれば、犯人は『株式会社日当証券』の経理部課長と千葉県の地方政治家… 早急に身元を特定します。
小牧は、貴方に呼び止められた。
「はい。まだ、何かありましたか?」
貴方は、実際に犯行したのは一人目と三人目だという事、もう一人共犯者いる事を述べた。

実際に犯行したのは一人目と三人目かもしれないが、もう一人共犯者がいるということですか?それはなぜですか?
貴方は、小牧の質問に答えた。

一人目と三人目に書いてある、中華料理屋「華中」に入ったと書いてあるのに、外の看板前で財布を確認するシーン

急に外出することがあるので計画的に行動をするのはやめた方が良い。

前編『こちと とら』より

これは誰かに向けた伝言であるということですか、その伝言はもう一人の共犯者に向けのものだった。その共犯者というのは誰ですか?
貴方は、共犯者について話した。

その共犯者は、加害者である35歳のサラリーマンを調べる仕事を任された。
しかし、残りの二人は殺される所を誰かに見られてしまい、仕方なく誰も殺していない彼を濡れ衣として警察に突き出したということですか。
確かに今取り調べを受けている彼は自首してきましたからね、ですが、その共犯者に向けた伝言というのはどういう意味なのでしょうか?
貴方は、伝言の意味を説明した。

なるほど。加害者はよく中華料理屋「華中」行っていた。それを伝えるためにこのような変な書き方をすることで、そこに注目して欲しかった。
計画的な行動はやめた方が良いというのは、共犯者に伝えたものだったのですね。しかし注目して欲しければ、太字にするなり、マーカーで線を引けば済む話ではないのでしょうか、なぜこんな分かりにくい書き方をしたのですか?
貴方は、その意味について言及した。

なるほど、後のことを考えて隠語のように分かりにくくしたのですね。
恰も犯人は警察に見つかることを見越して行動していたのですね。
これまでの話をまとめると容疑者は三人。
取調室にいる彼と他にもう二人。
取調室にいる彼は、被害者の調べ役。しかし他の二人も被害者の行動を知っているような文面でしたよね。
こうゆうのはどうでしょう、一人目と三人目は被害者のことを少し調べていた、そこで分かった行動をもう一人の彼に伝えた。そして彼は詳しく被害者の行動パターンを調べ上げて、その行動パターンを基に残りの二人が犯行に及んだ。
貴方は、頷いた。

事件の真相が見えてきましたね。我々は容疑者と思われる、証券会社の男と政治家について調べてきます。後、これ今取り調べを受けている彼の情報です。
刑事から二枚のメモが渡された。そこにはこのようなことが書いてあった。

千葉県出身の小笠原 亮。無職の35歳 
3回の取り調べの中すべて黙秘している。
これといった有益な情報はなし。

被害者 大原 大輔。千葉県出身の35歳 
千葉県でサラリーマンとして働いていて、千葉の実家で奥さんと三歳の娘と暮らしている。    
何者かに首を絞められて死亡。


翌日。
二人の身元が分かりました。一人目は千葉県出身の加藤健太。年齢は35歳で証券会社に勤めていましたが、1か月前から行方不明です。実家のある千葉県に行き、色んな話が聞けましたが、特に事件に関係あるようなことはありませんでしたが、母親からの言及では、20歳を超えた頃から東京の方で一人暮らしをしていたようで、東京の家からはこんなものが出てきました。
 

決行日。
今日はいつもと違いトートバックを持っている。彼はいつも通り家を出て最寄り駅に向かう道を歩んでいる。その瞬間横から猛スピードの車が飛び込んで来た。ものすごい音と人が倒れている事を確認した私は、急いでトートバックを持ちその場を後にした。

今日は売り上げの集計を行う日である。いつも通り7時に家を出て、朝のランニングに出かける。外は少し曇っていて辺りが暗めではあるが雨は降っていないので普段通り走ることができる。彼の前を歩いていた私は、人にぶつかり倒れてしまう。痛そうにしていた私に彼は近づいてきたので、手に持っていたナイフで彼を刺した。

地方銀行員のはずなのに、高い時計と高いアクセサリーを着けて、フラフラと警戒心0で外を歩いている。後ろを付けていき、人気の少ない森の近くで後ろから襲い掛かり、二人掛りで首を絞め、殺した。

もう一人の政治家の人も特定できました。千葉県出身の35歳田淵翔太。千葉県の地方政治家をやっていて。地域の方との交流を大切にしていて、周りの評判はとても良かったです。
これといった有益な情報はありませんでした、以上です。
何かわかりますか?
貴方は、四人の共通点を発見した。

四人には共通点がある?
四人というのは、取調室にいる小笠原亮。今回事件で亡くなった大原大輔。そして証券会社勤めの加藤健太。地方政治家の田淵翔太。
この四人ですね。詳しく教えてください。
貴方は、四人の共通点を小牧に話した。

確かに、四人とも千葉県出身の35歳ですね。それがどうかしましたか?
貴方は、共通点に同い年で出身地が同じ事を指摘した。

確かに、偶然とは考えにくいですね。もう少し調べてみます。
もう一つありますか?
貴方は、この「決行日」という言葉に違和感を覚える。

なるほど。この決行日と書かれていたことが事実かどうか調べて欲しいということですね。分かりました、任せてください。
もし事実ならば悍ましいことが発覚するかもしれません。

二日後。
色々分かりました。まずこの四人は同じ千葉県の高校出身でした。
そして、10年前に千葉県で人と車の衝突事故がありました。これは決行日に書いてあった、最初の事でしょう。そこで被害にあったのは今回殺された、大原大輔でした。大原は10年前車に轢かれて、救急搬送されていました。
一命を取り留めていますが、脳に後遺症が残ったようです。

二つ目の刺殺事件と思われるものは見つかりませんでしたが、大原大輔を解剖した所、腹部に傷があったことが判明しました。

三つ目の絞殺事件は今回の事件の事でしょう。前にも大原大輔を銀行員に見立てていたので、今回もその類で間違いないでしょう。

今年35歳になる銀行勤めの私は毎朝のルーティンであるランニングをしている。

前編『こちと とら』より

一旦これらの情報を元に、取り調べを受けている小笠原亮に問い詰めてきます。

翌日。
小笠原亮、ついに自白しました。
やはり犯人は加藤健太、田淵翔太、小笠原亮の三人でした。「決行日」の紙を見せた途端様子が変貌して、自白しました。そして、貴方が言っていた通り、大原を殺したのは、加藤と田淵だそうです。小笠原は大原の尾行役でした。私たちの推理は間違ってなかったですね。
そこで彼らの過去について聞いてきました。今回の犯行の動機について、書いてあるかもしれません。良ければどうぞ。
小牧から紙が渡された。

~容疑者達の過去~
 私たちは同じ高校に入学した。千葉県では二番目の偏差値を誇る高校である。
 入学式で大原大輔、田淵翔太、小笠原亮と三人と出会う。全員同じバスケ部に入り、部活帰りの放課後ではよく田淵家の近くの公園でよく遊んでいた。
 高校二年になると、学校にも慣れ始めて、大原には彼女ができた。大原は顔が良かったのでよく女の子から好かれていた。
高2の夏頃には俺も彼女ができた。彼女ができたのは3年ぶりぐらいで、どう接していたか忘れてしまうほど久しぶりだった。
学校で会う時も、デートに行くときも緊張してしまい、うまく話せなかったりしたが、喧嘩することなく仲が良かった。
夏の終わり彼女は笑った。いっぱい笑いあった。
花火の音で聞こえない声で笑った。泣いたりもした。
泣いて、泣いて。涙が枯れるほど、泣いた高2の冬。
忘れもしないあの日のことを。

夏も終わり、本格的に寒くなった高2の冬、女癖が悪くなった大原は、クラスの複数の女子たちを股にかけていた。その標的になったのが俺の彼女の璃子だった。
大原は友達だったから最初は軽く見ていたけれど、だんだん璃子が窶れて行く姿を見たときは、流石にほっとけなかった。

 12月中旬、一桁台の気温が続く中、璃子がボロボロになって下校している所を見かけた。すぐに大原を疑った。しかし璃子は転んだだけと言っているし、大原も手を出すような奴ではないことは知っていたから、本当に転んだと思っていたのだけど、今思えばあれは確実に暴行されていた。
それから璃子と会う回数が減っていき、高3の春璃子から別れ話を持ち掛けてきた時はすぐに「大原のことが好きなのか?」と聞いていた。璃子は黙っていたので、あいつはやめた方が良いと、すぐさま言ったが璃子は聞かなかった。そして璃子は大原と付き合い出したのだ。
璃子と付き合い出した大原は、ますます女癖が悪く、見る見る璃子の体は細くなっていた。俺は我慢できず大原を呼び出し怒鳴りつけた。
「その女癖いい加減にしろよ!璃子がかわいそうだろう!」
大原は申し訳なさそうに、「ごめんよ」とだけ言って。去ろうとした大原の手を引っ張り、一発殴ろうとしたが、田淵と亮が教室に入ってきた。
田淵と亮は、止めてくれた。殴ろうとしていた俺の腕を掴んでいた。
俺の腕は震えていた。「お前が手を出したら、大原と同罪になっちまう。それだけは避けるべきだ。」田淵の言葉は今も胸が痛くなる。
どうしたらいいのか分からなくなった俺に田淵と亮は、大原と縁を切って、璃子を無理やりにでも連れ出そうという提案を持ち掛けてきた。
俺にはそんなことはできない、俺は和解を望んでいるし、璃子とも復縁したい、そう思っている
 
 高3の夏休み前から受験があるからと言って、大原は璃子を振った。
受験があるからなんて嘘だ。大原は璃子に対して本気じゃなかった、鬱陶しくなったんだ、だから振った。それだけだ。
璃子はそれに気づいている、気づいているのに…

 音楽室で泣いていた璃子は最後にこんなことを言っていた。
「これは全部私が悪いから、大原君を好きになってしまった私が悪い。
健太には申し訳ないことをした。ごめんなさい、こんな私を好きになってくれてありがとう。こんなに好きでいてくれる健太の側にいたら、幸せだろうな。でも、私は大原君が大好きなの、だからさようなら。」
璃子は泣き震えながら、四階に位置する音楽室の窓から飛び降りた。

璃子の葬式の日、大原大輔は嗤っていた。 

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